第六十九話 緑髪
最終章に入ったからといって気を抜きすぎました、すみません。
ラストスパート頑張ります。
俺と唯果は第一王国に向かっていた。
しばらく走っているがほとんど人影がなく、辺りは静まり返っている。
第一王国が見えてくると、自然とスピードが上がっていた。
「怖いくらい静かだねー」
さすが王族というべきか、俺と唯果は30分程全力で走っているのに少しも息が上がっていない。
学校でマラソンはあったのだが、面倒だと言って今までサボっていて体力があることに気が付かなかった。
ドッッ……ドゴォオオオ!!
第一王国に着いた途端、轟音が鳴り響いた。
「唯果」
俺達は互いに頷き、音の鳴った方へ向かって走る。
原因はすぐに分かった。髪が緑色に染まっている副が立っていて、そこから少し離れたところに少年が崩れた家屋から出てきた。
……数秒後には二人とも消えていた。いや、正確には違う。見えないほどの速さでぶつかり合っている。
ドン! ドォン! ダンッ!
色んな所でぶつかり合う音が鳴っていた。
おそらく相手は王子。それなのに副は互角に戦えていた。
「呼んだか?」
「ん? ……おぉ! 久しぶり、生きてたんだな。怪我は治ったのか?」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえ、振り返るとそこにはダンと女性がいた。
この女性どこかで見たことあるような……。
「トマト」
「い、いや別に忘れていたわけではないぞ?」
「顔を見れば分かる」
そう言ってトマトさんは表情を変えずに俺から視線を外す。その視線の先には、速すぎてほとんど姿が見えない副と少年。
ふと横の方を見てみると梓と叶未が座った状態で空を見つめていた。
駆け寄ると二人がこちらに気付き、叶未は立ち上がった。
「硬大くん、無事でよかったです。……あの、すみません。火星に来るなと言われていたのに」
「梓が行こうって言いだしたんだろ? なんとなく分かる」
梓は座ったまま俯いていた。よく見ると怪我をしていて、服もかなり汚れている。
「大丈夫か?」
梓は頷く。
「さっき殺されかけたの。立ち上がることができないくらいのダメージも受けた。……馬鹿だよね、そうなると分かってて硬大くんは私達に注意してくれたのに」
でもね、と梓は顔を上げて俺の目を見る。
「お兄ちゃんに会えたの! それに助けてくれた。もしここに来なかったらもう二度と会えなかったかもしれない」
だから決して無駄ではなかったのだと、ここに来たことが正しかったのだと言っているようだった。
辺りを見渡してみるが、梓のお兄さんらしき人物が見当たらない。もう行ってしまったのだろうか。
そのとき轟音と共に一人の男が姿を見せた。
「お兄ちゃんっ!」
梓が心配そうに声を掛けたそこには地面に背中から激突した副がいた。
うん………………………………ん? いや、どういうこと?
「ごめん、副は丈夫だから敢えて心配はしない。それより教えてくれ。その緑色の髪はどうしたんだ?」
「す……すみません。ゴホッ、実は緑髪……種族な……んです。事情ガハッ……ありまして」
「お兄ちゃん、無理しないで」
梓がすごい勢いでこちらを睨んできた。
「本当にごめん。思ってたより辛そうだね……」
俺は梓の鋭い視線から逃げるように目を逸らす。そんな俺の視界に入ってきたのは、先ほどまで副と戦っていた少年だった。




