第四十九話 逆転
様々な事情があって遅くなってしまいました。すみません。
なんだか謝ってばかりな気がします……。
かなり今更ですが、前書きの使い方って合っているのでしょうか……?
どす黒い感情が渦巻く。
殺せ。カナンに刃を向ける者をすべて。
目の前にいるのは誰だっけ?
おかしいな、忘れてしまった。それに視界がぼやけてよく見えない。だが、殺す必要があることは確かだ。
「どうした、やる気になったのか? 王女様がやられて機嫌が悪くな――――があっっ!?」
何かが何かを言っていたが、俺には聞こえない。
何かの何かを掴んで下に叩きつける。奇妙な音を発して何かは動かなくなった。なぜ? もう一度叩きつければ動く?
そこに転がっている何かの何かを掴んで持ち上げる。何かから何かが流れている。下に叩きつける。
……何かは動かない。
「た……いちょ……」
カナンの苦しそうな声。助けないと……。
コロセ。カナンニヤイバヲムケルモノヲスベテ。
コイツヲ――――ヤキツクセ。
……硬大は足元で倒れているファンに手のひらを向けた。立場が完全に逆転している。手からは炎が生成されていた。
超能力は使えないはずなのに。
しかし硬大はそのことに気付いていない。当たり前のように炎を生成し、扱う。
「……な……に…………も……の……」
口を開くことすら出来ないはずのファンが声を絞り出して問う。硬大が一回戦のときから言われてきた言葉。それを第二王国の王子が怯えを隠すことなく口にし、問うているのだ。
だがその問いは今の硬大には届かない。
「コロセ。カナンニヤイバヲムケルモノヲスベテ……」
轟々と勢いを増す炎。ファンの意識はもうなかった。死んではいないようだが、時間の問題だろう。
「コイツヲ――――ヤキツクセ!」
手のひら程の大きさだった炎が数倍に膨れ上がった。そしてそれを放とうとした刹那、炎は消えて無くなった。
「……ダメだよたいちょー」
唯果が再度硬大とファンの間に入ってきていた。さっきと違い、硬大の方を向いていて両手を横に上げている。
「た……だか?」
唯果は寂しそうな眼差しで硬大を見つめていた。それを見た硬大は徐々に自我を取り戻していく。
「よかったー、いつものたいちょーだー」
そう言って唯果は振り返り、倒れているファンを見下ろす。
「な……にするつもりだ……?」
「……」
唯果は懐から折り畳みナイフを取り出す。そしてそれを躊躇なくファンに突き立てた。
グサッ!!
死なないはずがない。唯果はそこで初めて……人を殺した。
硬大は突然の出来事に声が出なかった。
唯果は振り返って、言った。
「これで同じだね」
優しく微笑んでいた。でもなぜだかその顔は、悲しんでいるようにも見えた。




