第四十三話 一回戦
漢字を間違えていたりするかもしれませんが、気にしないであげてください……。
一回戦目の相手はイル。いやもちろん誰か知らんけど。とにかくそいつと戦うらしい。
硬大とイルが戦場に入った刹那、lockerが二人を囲む。戦いはそのときから始まっていた。
「おいおいガキかよ。まあいいや、かかってこい。兄ちゃんが遊んでやるよ」
また馬鹿にされたな。別にいいけど。
「こっちからいってもいいのか?」
イルは面倒くさそうに何度も頷いた。
「生意気なガキだな。副隊長舐めんなよ」
ではお言葉に甘えていきますか。それにしてもすごいな。360度どこを見ても周りは観客で埋め尽くされていて、ほとんどの人間が叫んでいた。
「たいちょー! 頑張ってー!!」
その中に唯果も混じっていた。しかもテンション高い。
唯果の周りにいた人達は驚いた表情で唯果と俺を交互に見ていたが、今はそんなこと気にしている暇はない。
俺は全力で駆けてイルとの間合いを詰める。そしてあと1メートルのところで拳をイルの顔面めがけて突き出した。
しかしイルは硬大の拳が当たる直前、横へずれていた。
「……ふっ!」
イルは空振りして隙だらけの硬大の脇腹に加減のない蹴りを叩き込む。それをもろに受けた硬大は50メートル程吹っ飛び、背中から壁に激突した。
イルは勝利を確信していた。副隊長の全力の蹴りをもろに受けて立てるガキなんているはずがない。運が良くて体のあちこちが骨折、悪ければ死んでいる。
lockerが消えていないということは、まだ生きているはず。ここは優しく言ってお家に帰してやろうと、塵煙が立ち上る壁に向かって歩き出したそのとき、観客が驚きの声を上げた。
「副隊長ってこんなに強いのか……いてて」
……立ち上がっていた。それだけではない、まるでダメージを受けていない。見ただけで分かる。
「……こわっ」
イルはついそんな言葉を口にしていた。構えはしているものの震えが止まらない。
こんなガキ相手に何ビビってんだ俺は!
「おらあああああ!!!」
硬大に向かって全力で駆け、顔面めがけて拳を突き出す。しかしそこでイルは気付いた。
ああ、同じことをしてしまった。
しかしもう遅い。硬大の体はイルの拳が当たる直前に横へずれ、その直後、イルの体が吹っ飛んだ。
イルは咄嗟に両腕でガードをしていたが、まるで意味がない。それくらい強烈な一撃だった。
だが、まだ動ける。腕の骨はおそらく砕けているだろうが、足はまだ動く。それだけで十分だ。
あのガキはタフで力は強いが、経験が浅い。戦い方というものを知らない。それと比べてこっちは副隊長だ。負けるわけにはいかない。
そう思って勢いよく立ち上がったイルのすぐ目の前に硬大がいた。
「悪いが、ここで負けるわけにはいかないんだ」
目の前の少年が、呟くように言った。
違う。こいつはただのガキじゃない。何かがおかしい。
戦わなければならないのにイルの口が勝手に動いていた。
「分かった…………降参だ」
こうして硬大の一回戦目が終わった。




