第三十四話 恐怖
小説を書くって難しいですね。
セリフばっかり出てきて、セリフ以外のアレがなかなか思いつきません。
縄を掴み、自分の首に掛ける。
俺は今、椅子の上に立っていた。
あとは椅子をはずすだけ。
そうすれば、この世界とさよならをすることができる。
梓は黙って俺を見ていた。
てか、梓に見られながら死ぬのか。
自殺を止めなかったのは予想外だったなぁ。別に止めて欲しかったわけじゃないけど。
そういえば最近、色々あったなぁ。
lockerでクラスの代表をしたこと。
めちゃくちゃ可愛い叶未ちゃんと友達になったこと。
唯果ちゃんも含めてみんなでプールに行ったこと。
今まで起きたlockerでの出来事を除いたら、少しは楽しかった……かな。
なんだろうな。何かスッキリしない。
いや、どちらにしろ死んだらスッキリするはず……たぶん。
俺は深呼吸をした。
うん、いける。
今自分が乗っている椅子から足を離せば後は勝手に死んでくれる。
俺は、思った通りに両足を椅子から離そうとした……が。
「……ハハハ。あ、あれ……?」
動かなかった。
不思議に思い、自分の足を見てみると……震えていた。
それに合わせてガタガタと椅子が音を立てていた。
なんで?
足が動いてくれない。
……いや、違う。動かないんじゃなくて、動かそうとしないんだ。
なんで?
「怖いんでしょ?」
ぽつりと、梓はそう言った。
怖い? 死ぬのが?
そんなことない。この世界から離れることが怖いわけがない。
それとも。
「苦しみながら死ぬのが怖い……のか」
それしか考えられない。なのに、
「違うでしょ?」
梓は即答した。違うと。
じゃあなんだ? 他に理由なんてあるのか?
足の震えがまだ止まっていなかった。
「光翼は友達いないの?」
「いるに決まってるだろ」
「何も思わなかったの?」
そんなことはない。
「思い出を振り返ってた」
それだけだ。それがどうしたって言うんだ?
そんなことより俺は……。
「楽しかったんじゃないの?」
っっ……!?
「友達ともう会えなくなるのが怖いんじゃないの?」
そ、そんなことは……。
会えなくなると思うと確かに寂しいとは思う。けど、怖くて死ねないなんてことは。
「なんで私が光翼の自殺を止めなかったか分かる?」
「わかんねーよ」
そう答えると、梓は溜め息を吐いた。
女の考えてることなんか分かるわけがない。
「光翼、元々死ぬ気なんてなかったんでしょ?」
俺は、梓が何を言っているのか分からなかった。




