第二十五話 梓
土曜日になった。
昨日女王様から電話がかかってきて、あのlockerを消滅させる方法を聞いた。
テレビをつけてみる。やっぱりまだニュースでlockerについて報道されていた。
「唯果、行くぞ」
「イエッサー!」
今日で終わらせてやる。
私は出かける準備をしていた。
話をするだけとはいえ、休日に光翼と二人で会うのは何年ぶりだろうか。
数年前、私はこっちに引っ越してきてしばらく経ったあと、小学校の4年生と言われているところのクラスに入れられた。
最初は何が何だか分からなかった。
一つの部屋に、自分と同じくらいの歳の子が何十人もいた。
先生と呼ばれている大人の人に自己紹介をさせられ、私は決められた席に着く。
周りはざわざわしていた。
なんだろうと思い、耳を傾ける。
「あの子の髪の毛変じゃない?」
「あんな色の髪の毛見たことないよー」
「あれって、調子乗ってるってやつじゃないの?」
「なんか気持ちわるーい」
悪口だった。
ここでは緑色の髪がとても珍しく、変らしい。
周りの子達はみんな黒色だったから、私は余計に目立っていた。
もちろん誰も話しかけてはくれなかった。
家に帰り、お母さんに泣きつく。
「おかあさぁああん! 学校行きたくないよぉおおおっ!!」
「ど、どうしたの梓!? 学校で何かあったの? もしかして髪の色のことで何か言われたの?」
私は泣きながら、うんうんと頷いた。
お母さんは申し訳なさそうに言う。
「ごめんね。お母さん忘れてた……。ここではその色は変だってこと。お母さんも今日、梓の担任の先生にいろいろと言われたわ。髪の毛は黒色にしてあげるから、明日も頑張って学校に行こう?」
私はまた、うんうんと頷く。
ここに引っ越してくる前は、火星の第五王国で暮らしていた。
父が火星人で、母は地球人。
そう、私は火星人のハーフだった。
待ち合わせ場所に着く。
30分ほど早く来たはずなのに、すでに光翼がそこにいた。
今日は快晴で、とても暑い。
「光翼早いね。なんで?」
「梓ちゃんに会えることが楽しみで楽しみで、ね」
ほんと気持ち悪い。
「とりあえずどこか行かない?」
「行きたいとことかある?」
光翼がキョロキョロと辺りを見ている。近くに店がないか探しているのだろう。
私は光翼の手を握った。そして歩き出す。
光翼は驚いた表情を見せたけど、抵抗しないでそのまま歩き出した。
でも、握り返してはくれなかった。
「夜までどうするか」
明るい時間に屋外プールへ行くのはやめておいた方がいい。
深夜に行くのが妥当だが、それまで何をすればいいのやら。
「デートする?」
「……」
正直そういう気分ではなかった。
早くlockerを消滅させなければと、そんなことばかりがさっきから頭の中でグルグルと回っている。
「確かにたいちょーの気持ちは分かるけど、焦ってもしょうがないよー。夜まで暇なんだし、今日死ぬかもしれないしー。だから夜までデートしよう!!」
「縁起が悪いこと言うのはやめなさい。わかったよ、その辺を適当にぶらぶらするか」
唯果は、わーい! と言って俺の手を握り、走り出した。
「おい! 急に走るなよ!」
俺はこけそうになりながらも、唯果のペースに合わせて走る。
地球人と仲良くしてはいけない。
第五王国ではそういう決まりがあった。
私のお父さんは五部の隊長だった。
髪が綺麗な緑色だった。
お父さんは地球の様子を見に、日本に行かされたらしい。そしてお母さんと出会い、二人は互いを好きになり、一緒に暮らすことを決め、二人で火星へ行った。
もちろん許されるはずがない。
だからお父さんは隠れ家を用意し、そこでお母さんと住んでいた。
しばらくしてお兄ちゃんが産まれ、数年後に私が産まれた。
それから数年後、お父さんとお母さんが一緒に暮らしていることがバレて、お父さんは王族に殺され、お兄ちゃんは行方不明になった。お母さんは、お父さんから預かっていた乗り物に乗って、私と一緒に地球へ逃げた。
この話は、私が中学卒業したあとに聞いた。
もちろん当時はまだ幼かったからあまり覚えていない。
暗くなってきた。あれから光翼と二人で遊んだ。
いろいろ見て回ったり、ご飯食べたり、カラオケで歌った。
楽しかった。もっと光翼と遊んでいたいと思った。
でも、今日はそのために光翼と会ったわけではない。
私と光翼は公園にいた。
私は、一番聞きたかったことを今、光翼に言った。
「ねえ光翼、両親はいまどうしてる?」
暗くなってきた。
深夜ではないけど、そろそろ大丈夫かな。
俺達は今屋外プールに来ていた。
誰もいなかったため、侵入することは簡単だった。
lockerがある間は誰も来ないと思ったのか、夜でも警報は鳴らなかった。
lockerが出現するすぐ近くまで来た。
誰かいる。
暗くてよくわからなかった。
そいつは言った。
「やあ、四部の隊長さん。それと、王女様かな?」
私は髪を黒に染めて次の日も学校に行った。無駄だった。
クラスのみんなは、緑色の髪だった私を知っている。
男子にいじめられた。女子はあまり話しかけてこなかった。
そんな毎日。
ある日、休み時間のときに廊下へ出て、一人で体育座りして泣いていた。
そのとき、誰かが私の隣にきて座った。
光翼だった。
光翼は私に言った。
「君も僕と同じ?」
光翼もクラスでいじめられてたらしい。
仲間だった。
それがきっかけで私は光翼と仲良くなった。
土日は光翼の家へよく遊びに行った。だからか、光翼の両親とも仲良くなり、一緒に出掛けたりしたことは何回もある。
怪我をしたときでも、慌てて消毒をしてくれた。
自分のお母さんとお父さんみたいだった。
家に帰るといつもお母さんに、その日あったことを色々話した。
それをいつもお母さんはニコニコしながら聞いてくれていた。
「俺の両親? げ、元気だよ」
嘘だ、と思った。
「正直に言って。もし体調があまりよくないならお見舞いに行きたいし」
自分の親のような存在なのだから、心配する。
「え、い、いや……だから」
「何を隠してるの?」
なんだか分からないけど、嫌な予感がする。
光翼の表情が一気に暗くなった。
「分かった、正直に言うよ。……俺の両親は」
私のお父さんは、火星の中でも特別な存在だった。
普通の火星人よりも力が強く、能力も高い。
火星の中でも他とは違う種族の内の一人だった。
その証拠が、綺麗な緑色の髪。
その種族はとても大きな力を持っていて、隊長であるお父さんの目の前で訓練してきた五部なら、どれだけ離れていてもその強大な力を感じ取ることができる。
つまり、逃げても無駄だという事。
第五王国は、お父さんだけではなく家族である私達まで殺そうとしている。
五部は面倒くさいことが嫌いだったらしい。第五王国の王族の指示以外は基本的に、メリットがなければ動かない部隊。
第四王国に協力して地球にきた理由はもちろん私とお母さんを殺すため。
「俺の両親は、
――――五部に殺されたんだ。」
それを聞いた瞬間すべてを悟った。
そして、
私の中で何かが壊れる音がした。
「え? あ……う、ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?」
俺は、何が何だかわからず固まっていた。
梓が急に狂ったように叫びだし、髪の色が変わっていく。
髪が解けてゴムが吹っ飛び、ポニーテールがなくなる。
ものすごい風圧が俺を襲う。目を瞑る。
次に目を開けた時には梓とは思えない何かが立っていた。
恐ろしい目つきをしていて、髪の色は、
綺麗な緑色だった。
次から面白くしようと思って書いていたら約3000字になってしまいました。
いやぁ、二つに分ければよかった。
面白くなってきましたか? すみません、自分ではあまり分からないもので……。




