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指輪が重くて  作者: もも


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1/10

 オリビア

よろしくお願いします。お付き合いくだされば幸いです。6話で完結するつもりでしたが、その後を番外編として書きました。良ければ読んでくださると嬉しいです。

 「好きな人ができた。婚約を破棄して欲しい。オリビアは悪くない。全て僕が悪い」

そう言ったのは婚約者のリアム・スミス。私達は幼馴染で三年前に婚約をしていた。


「……好きな人…?」


小さな頃から私たちは仲がよく我儘な私の言うことを可愛がり叶えてくれていたのがリアムだった。

彼は侯爵家の次男で婿入り出来る伯爵家の一人娘である私との縁は、お互いの家にとって文句のない関係だった。

甘やかしてくれ望みは何でも叶えてくれる彼のことが大好きだった。

憧れの王子様の様な彼が自分の婚約者で良かったと思っていた。


彼も私を好ましく思っていたのではなかったのか。それは思い違いだったのだろうか。本当は鬱陶しく思っていたのか。


ドレスの端を握っている手が冷たくなり頭が真っ白になって朦朧としてきたが、倒れそうな中で漸く言葉を吐き出せた。


「私のことは好きではなかったということ?」自分で言ったのに刺すような痛みが胸に走った。


「オリビアは可愛いよ。でも妹みたいな感じかな。このまま結婚をすると僕も思っていたんだ。すまない、恋は突然落ちるものだと実感した」



もっと何か言っていたようだがオリビアには聞こえていなかった。


「帰ってお父様に話をします。後は家同士の話でお願いします」


それだけ言ったオリビアはどうやって屋敷に帰ってきたのか記憶が曖昧だった。

馬車に乗るとショックで倒れるように意識を失った。



 顔色が悪く倒れそうなオリビアを馬車に乗せ、部屋に連れて帰り休ませたのは専属侍女のサラだった。護衛を兼ねて侍女も出来るよう訓練されていた。


三歳年上でオリビアを妹のように慈しんでいるお嬢様大好き人間だ。


早速旦那様に報告した。お嬢様に関することは逐一報告するのがサラの仕事の一つだった。


ウイリアムズ伯爵が青筋を立て握り拳を作り机を叩いた。

「小倅が…目にもの見せてくれる」

辺りの空気がスッと下がった気がしてサラは固まった。


「で、オリビアの具合はどうなのだ」


「先ほどお医者様に診ていただいたところ、意識を失われたのは精神的なものだろうから暫く静養をするようにと言われました」


「そうか、身体の方はどこにも異常はないのだな。ご苦労だった。証拠は掴んでいるから追い詰めるとしようか。相応しくないものが入りこまなくて良かったが、オリビアが納得するかが問題だな」


サラはお嬢様はきっと乗り越えられますと心の中で返事をして、礼をすると執務室から退出した。








 その夜オリビアは夜中に意識を取り戻した。

リアムの言葉が胸に蘇り、指にはまった指輪を見つめた。





「…私は愛されてはいなかったのね…」


喉と目に熱いものがこみ上げてきた。

一ミリも考えていなかった現実が伸し寄せてきてオリビアを打ちのめした。

あれほどはっきり別れを告げられたのにオリビアはリアムのことがまだ諦められられていなかった。


指輪をゆっくり外した。彼の色のエメラルドの石が鈍い輝きで膜を張っていた。

ベルを鳴らしてサラを呼んだ。



「お嬢様お気づきになりましたか?良かったです。お水を飲まれますか?」


「ええ、お願い」


サラはオリビアを抱き起こし背もたれにクッションを挟んだ。


渡されたコップから水を飲んだ。冷たい水が渇いた喉に染み入るようだった。


「美味しい」


「もう少しお休みください。朝になったら起こして差し上げます」


「そうするわ。ねえこれ…」指輪を差し出しながらオリビアは言った。


「畏まりました。ではお休みなさいませ」

サラはリアムからのプレゼントを引き出しに片付けた。


「ねえサラ、指輪が重くて目が覚めたの」ため息を零すようにオリビアが呟いた。


「では温かい蜂蜜入りのミルクを持って参りましょう。きっと眠れますよ」














 あれから眠れなかったオリビアは我儘を言って振り回しすぎたのがいけなかったのだろうか、それとも色気が無いのが原因かと自責の念にかられた。


 オリビアは癖のあるピンクゴールドの髪に黒い瞳のとんでもなく整った顔の可愛い美少女で、屋敷中が甘やかした。

オリビアの我儘は人を傷つけるものではなかった。ただ「…が欲しいの。…に行きたいの」と呟くだけで目の前に全て用意された。

それはドレスや宝石、お菓子や食事、観劇や遠出も含まれていたが決して無理な範囲ではなかった。

オリビアの願いは可愛いものだという認識が両親初め屋敷中にあった。

リアムも例外ではなかった。裏切るまでは。












 オリビアは夜が明け始める頃になり漸く、父に話をしなくてはと自分に活を入れた。


結婚は暫くは考えたくなかったが貴族に後継は必要だ。時が来たらそれなりに考えるということで今を乗り切りたい。傷心の自分に直ぐに次の婿をとは言い出さないだろう。



そう考え執務室の扉をノックした。


「入りなさい」父の落ち着いた声が聞こえた。

いつもの書類だらけの部屋にオリビアは少し落ち着いた。

「お父様、婚約を破棄したいと言われました。申し訳ありません」


「何故謝る?悪いのは向こうではないか。心配しなくていい。全て押さえてある。償いはたっぷりしてもらうつもりだ」



良かった、父様は私の味方だ。ほっとしたオリビアははらはらと涙を零し、

慌ててハンカチで押さえた。


「暫く静養するといい。相性が良いと思って決めて悪かった。見込み違いだった」


「私が我儘だったからでしょうか?」


「そうではないよ。ただの浮気だ。する者は何度でもする。忘れなさい」


「浮気ですか……」


「ああ、オリビアは何も悪くない。気にするな」


「そうします」


そうか、浮気をされたのか私は。婿入り前に…。
























読んでいただきありがとうございます!

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