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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
死滅の森開拓&サルーン都市化計画

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95話

「はぁ…全くあいつは。」


「何の騒ぎだ!!」


従者(六花)(たち)が悪い悪戯を元に、カリナが溜め息混じりで呟いた直後。

少し遠くから男性と思しき声が届けられた。


本人を含めた全員が声のした方を向き、プレートメイルを着用した男性が走る姿。

及び、同じ鎧を身に纏った男性2人がすぐ後ろの位置にいるのが見て取れた。


彼らはスクルドを守る警備の役割を持つ者達で、ランドルフの私兵でもある彼ら。

辺り一帯が緊張に包まれ、このままだと捕まると思ったエイジャ達の表情も強張る。


「すまない。少しばかり悪戯が過ぎたみたいでな、騒ぐつもりはなかったんだ。」


「何を…!…貴方でしたか。」


やや申し訳なさげなカリナの物言いに、先頭にいる男性の語気が強くなる。

しかし相手がカリナだと分かるやハッとなり、色々と飲み込んだ様な若干苦い顔付きに。


「貴方の事ですので大丈夫だとは思いますが、出来ればこの様な真似は控えて頂けると…。」


「分かった、気を付けるよ。忠告感謝する。」


「ありがとうございます。では、私達はこれで失礼します。」


「ああ。お勤めご苦労様。」


しかも、警備である男性の方から何故かペコペコ頭を下げられる始末。


この場を離れた後もそれは続き、やり取りを見たエイジャ達は目が点。

周りにいる者達も呆気に取られるばかりだった。


一般的に、冒険者よりも街を取り締まる警備の方が立場が上。

ランドルフ(ジラルド伯爵)直属なので、当然と言えば当然。

それがこの場にいる者達の総意であり、何度も彼らの仕事ぶりを見たカリナも同じ思いだ。


しかし実際はあちらの方が低姿勢…それも軽く引いてしまう位には何度も頭を下げてみせた。

それに驚くなと言われても無理、と返すのがほとんどに違いない。




「さて…私も失礼させて貰うとするか。」


『いやちょっと待て!』


「ん?」


満足そうに頷いたカリナがでは…と去ろうとし、周りにいる全員から突っ込まれた事で目をパチパチ。

本人は至って真面目のつもり。

しかしその冗談にしか見えない様相は、まるで某男の娘と某ツインテールさんみたいだった。


「ん?じゃねぇよ!何で警備隊側が何度も頭を下げるんだよ!しかも申し訳なさそうに!」


「有り得ない…。」


「ふ、ふん。どうせ、その体を使って(たぶら)かしたんでしょ!そうに決まってる!」


「失礼な、私は処女のままだ。」


あまりにも斜め上な返答に、エイジャ達は揃って赤面。

続けて、余計な1言を口にしたトレイシーに突き刺さる、2人のジト目。

それ以外だと、男性の何割かが同じく顔を赤らめ、顔を逸らしたり前屈みの体勢へ。


かなりの爆弾発言とも取れる内容だが、カリナ本人は全く気にしていない。

むしろんー?と(のたま)い、懐をゴソゴソと探る程だった。


「恐らく…彼らが私に恐縮していた原因はこれだろうな。」


そう言って取り出したのは、丸まった状態の1枚の紙。

カリナは持ち手である左手のみで器用に開き、露となった文章に皆の注目が集まる。


「これにはジラルド伯爵家が私の身分を保証し、後ろ盾となる旨が記載されている。要するに保証書だな。」


広げられた保証書は、彼女がランドルフと会った際に得たものだ。

対象の人物が異なるだけで、中身自体は凛が所持しているのと全く同じ。


インフェルノドラゴンの剥製を渡した後にカリナを紹介した事も重なってか、むしろ上機嫌で用意してくれたとも。


畢竟(ひっきょう)、先程の警備の男性達がカリナに対して下手に出た理由。

それはこの保証書の所為で、客人へ対して無礼を働こうものなら主人(ランドルフ)の顔に泥を塗るを根拠に身を引いたからだったり。


『!?』


「今の私は何故か(・・・)身分を証明出来るものが手元になくてな。主人の(つて)で手に入ったのだ…が、こうも畏まられては別な手段を用意した方が良いのかも知れない。」


カリナは一部分だけを強調しつつ保証書を丸め、再び懐(と見せ掛けて無限収納)へ。


「普通じゃまず用意出来ない様な剣を与え、伯爵である領主と仲が良いとか…。」


「その主人って一体何者…?」


「神だ。」


若干気不味げなのはエイジャだけ。

別な方向に意識が向いた━━━耳に残らなかったとも━━━トレイシーとカサンドラの呟きにカリナが答え、しん…とした空気が辺りを包む。

彼女の表情は至って真剣、ふざけている雰囲気は微塵も感じられなかった。


厳かな雰囲気に当てられたのだろう。

ある者は冷や汗を流し、ある者は後退り、又ある者は生唾を飲む等する。


「あ、いや。女神様の方がしっくり来るな。纏うオーラ(神々しさ)は神以上と言っても過言ではない故。あの愛らしさに愛くるしさ…(たま)らん。」


しかし難しい顔をしたかと思えば頬を緩ませ、(しま)いにはでゅふふ…とだらしのない笑みまで浮かべる始末。

そのあまりのギャップにエイジャ達はその場で崩れ落ち、他にも盛大にずっこける者が多数発生。


場が一気にカオスと化した。


「こ、こいつってこんなんだったか?」


「分からない…。」


「でも真面目なあの子をそこまで言わせる主人って…。」


「「「一体何者?」」」


ずっこけから立ち直った後、エイジャは引き攣り、カサンドラは困惑し、トレイシーは考え込む。

この場にいない、カリナの主人とやらに戦慄を覚えた事だけは共通点…かも知れない。


ただ、いやんいやんと体をくねらせながらも、時折見せる顔は間違いなく恋する女性を思わせるもの。

エイジャ達も見惚れる程の可憐さやいじらしさで、同性の彼女達ですらそうなのだから、男性は言わずもがな。


今の件が尾を引き、この日ジラルドにある娼館の売上が伸びたとか何とか。

特に似た髪色と髪型のターニャなる女性に集中、本人はかなり疲れながらも不思議がったそう。




その頃、話題に上がった凛はと言うと。


「…!……?」


いきなり得体の知れない寒気に襲われ、辺りを確認しているところだった。


「マスター、どうかした?」


「ううん、何でもない。」


「???」


首を振る凛に美羽は益々疑問が深まった顔をするも、残念ながらこれ以上の回答は得られなかった。


この手の悪寒に何回か襲われ、その度に様々なトラブル(主に里香が原因)に見舞われると言う経験を持つ凛。

それを正直に伝えても…との思いから、説明を躊躇(ためら)ったとの運びだ。


(ここは日本と違う、いくら何でも考え過ぎ…だよね。)


異世界だし大丈夫、大丈夫だよね?

なんて、経験を元に危険を回避しようと働いた防衛反応…とも取れる感覚を、首を左右に振る形で無理矢理停止させた。


現在、凛達は訓練部屋にいる。

それも、ただの訓練部屋ではなく魔物と戦う事を想定した模擬訓練…所謂シミュレーション訓練が行える場所だ。


ここでナビが解析済みの魔物を仮想敵として出現させ、シンシア達に実戦形式で戦って貰う。

魔物は本物よりも本物らしいと言うか、やる気マシマシの状態。

攻撃を食らえば、勿論相応のダメージを受ける。


そして訓練中、力量(レベル)が足りない、連戦で蓄積した疲労等が原因で負けそうだと分かった場合。

訓練者の意思で中断、或いは攻撃が当たる直前に(ナビ判断で)死亡扱いとなって魔物が消える仕組みとなる。


いまはそれらのテスト中。

シンシア達がどの位戦えるのかを見る事も兼ねているのを思い出した凛が、視線を彼女達へと戻す。


「やあっ!」


「ブヒィィィ!」


ダン達が用意したドレスから、動きやすいペチコート付ミニスカート姿にチェンジしたシンシア。

対戦相手であるオークの攻撃を避け、時々反撃するとの戦い方で追い詰めていく。


やがて、風を切る様な素早い動きの後、黒いブーツを履いた右足でオークを蹴り飛ばす。

ドォォォォンと壁へ叩き付けた今の一撃で倒したと見なされ、オークは壁に張り付いたまま消滅。


「ふぅ…。」


シンシアはスラッとした長い足を下ろし、安堵の表情で短く溜め息をつく。


「…ライトニングブラスト!」


「ガ、ガ…ァ……。」


リーリアとお揃いの服に身を包んだリリアナが使用したのは、雷系上級魔法。

前に突き出した両手から直径1メートル程の雷で出来たレーザーを撃ち出し、腹に大きな風穴を空けたハイトロールが呻き声を上げ、後方へゆっくり倒れていく。


「はっ!えい!はいっ!そこです!」


ミラは衣装こそ変わっていないものの、両手には身の丈と同じ位の大きさ且つ銀色のハンマーが。

自身の数倍どころか20倍以上、人間から見てもかなり大きめなカラスの魔物と空中戦を繰り広げていた。


そのカラスはデビルクロウ、ディバウアークロウが魔銀級に進化した魔物だ。

片や翼を広げた広さが8メートル、片や身長30センチ弱と大きさにかなりの差があり、しかしながら機動力はミラの方が圧倒的に上。


ミラにとってデビルクロウは単に   目立つ的でしかなく、デビルクロウも勢いが良かったのは最初だけ。

程なくしてミラから一方的に攻撃を受け、最後は悲しげな声と共に空中にて消える。


「グラビティなの~ん。」


ミラと同様、服装の変わっていないエラがのへーっとした表情で土系上級魔法を発動。

前に向けた銀色の杖が指定した一帯に、重力場が発生。

やがて目標であるダイアウルフは重力の重みに耐え切れず、圧死。


満足な顔を浮かべ、むふーと鼻息荒くしながら彼女は杖を下ろすのだった。

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