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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
プロローグ
7/250

5話

この話から複数人が同時に喋る場面が出て来ます。


その為、

1人→「

2人→「「

3人→「「「

4人以上→『


で表記させて頂きますね。

「…眷属召還。」


5分が経ち、凛がポツリと呟く。


すると、彼から見て少し前方の位置に、白い光の玉が顕現(けんげん)

直径2メートル位あるそれは形を変え、やがて1人の女の子のシルエットになったところで終息(しゅうそく)する。




その女の子は白い光が消えても尚、(ほの)かな輝きを放つ。

そんな彼女の背中には、光消滅と同時に姿を見せた、半透明の白い翼の様なものが。

目を閉じ、両手を胸の前で交差させるとの仕草は、言葉では言い表せない程に美しく、神秘的でもある。


そんな彼女は地面から僅かに浮いた所でしばらく(たたず)み、やがてふわりと着地。

同じタイミングで羽みたいなものを撒き散らし、背中にあった翼が綺麗に消失。

それまで(なび)いていた長い白金(ホワイトゴールド)のツインテールがゆっくりと下り、場を静寂が包み込んだ。


凛は改めて女の子を見てみる。


彼女は年の頃が16歳位。

身長は160近くあり、凛より少し高め。


髪色は先述にもあった通り、ホワイトゴールド。

(まばゆ)いばかりに輝くそれを膝下まで伸ばし、赤と白で構成されたリボンで纏めている。


衣服は白のノースリーブシャツに、浅葱(あさぎ)色の短いプリーツスカート。

それと黒のニーソックスに黒の短いブーツを着用。


ノースリーブの襟の部分には、髪に留めてるのと同じデザインで少し大きめのリボンがあしらわれている。


「やっぱりミ○ちゃんだったわね。」


里香の言葉の通り、少女はまるで○音ミクを思わせる風貌をしていた。




凛は昔から初音◯クが好きだ。

それも、あれだけ嫌がるコスプレを自ら進んで行う位には。


彼は通販(アマ○ンや楽○等)で衣装を取り寄せたり、グッズを扱うショップへ直接買いに行く…なんて事もしばしば。

その様子を、彼の追っ掛け兼ストーカーでもある里香に。

それもほぼ100%の確率で見られている。(本人は気付いてないみたいだが)


やがて、隠れてこっそりと楽しんでいたのが2番目の姉にもバレ、どこからともなく現れた(例によってストーキングした)里香監修の元、その場で着せ替えパーティーをやらされたとかなんとか。


閑話休題(かんわきゅうだい)


(もう消えちゃったみたいだけど、今見えたのは翼…だったのかな?これからはこの子…『美羽(みう)』が、僕の眷属(パートナー)になるんだ。)


等と考えている内に、目の前の女の子がゆっくりと目を開け、


「…初めまして、マスター♪」


ツインテール少女…美羽が、何者をも魅了する優しい笑顔を凛に向ける。


(うわー、すっごく可愛い。自分で創っておいてなんだけど、まさかここまで可愛くなるとは思わなかった。)


凛はキャラメイクが出来るゲームをプレイする際、可能な限り見た目を初音ミ○に似せ、美羽と名付けるまでがセット。

そして最もやり込んだのは、(彼女らの衣装がイベント報酬等で出る)セ○のオンラインゲームなのは言うまでもない。


話は戻り、凛が女の子…美羽に見惚(みと)れて固まっていると、不思議に思った美羽がトトト…と移動を開始。

凛のすぐ目の前の位置へとやって来る。


「? マスター?どうかしましたーーー?」


「…はっ!?ごめんごめん、美羽があまりにも可愛くてさ。つい見惚(みと)れちゃったよ。」


「わぁ、ありがとうございます♪ 美羽…それがボクの名前なんですね!けど…マスターの方が絶対に可愛いと思いますよーー?」


美羽は凛に褒められて喜ぶも、すぐに若干険しい顔へと変化。

くりくりっとした大きい瞳で凛を見やり、むむむ…と(いぶか)しんだ様子で彼の周囲をグルグルと回る。


「そう…?自分では…って美羽。あまり(からか)わないでよ。」


彼女程の美少女に見詰められ、気恥ずかしくなったのだろう。

気持ち顔を赤くし、頬を掻いた凛が自身の正面で止まった美羽を押し退()ける。


「えー!?本当の事なのにーーー!!」


「美羽ちゃん、仕方ないわよ。だって凛ちゃんだもの。」


「そうですよね!ボク、間違ってないですよね!?」


両肩に手を置かれ、強制的に回れ右させられた美羽がご立腹。

納得いかないと姉へ詰め寄り、里香は里香でやれやれと肩を(すく)める始末。


(ちょっと、2人共何で納得してるのさ。いくらなんでも身内贔屓(みうちびいき)が過ぎると思うんだけど。)


里香と美羽。

出会ってからまだ1分経っていないにも関わらず、早速意気投合。


本人を目の前に騒ぐ2人をジト目で眺めつつ、凛はそんな事を思う。




「さて、凛ちゃんは相変わらず自己評価が低過ぎるのはひとまず置いといて。」


「ひとまずではないし、置いてもおかないで?」


「…凛ちゃん、謙遜(けんそん)は美徳なんて言うけれど、度が過ぎればただの嫌味よ?貴方の美しさは最早そんなレベルなの。少しは自覚なさい?」


「えぇ…。」


「まぁ、そこが凛ちゃんの良いところでもあるんだけど、と…話を戻すわね。それで、凛ちゃんと美羽ちゃんには『管理者(アドミニストレーター)』になって欲しいの。世界を導いたり、生活する人々の手助けをする役割、ポジションとしてね。」


「「『管理者』?」」


2人が小首を傾げながら尋ねれば、「そ、SA◯とかにいる存在よ。凛ちゃん、そう言うの好きでしょ?」と同じく首を傾けての質問返し。

そう断言されてしまえば、アニメ好きの凛としては「アリシ◯ーション編か、確かに好きだけどさ…」と答えるしかない訳で。


(今回のは過去1だな…でも仕方ない部分はあるか。切羽詰まってるみたいだし。)


彼の目の前にいる姉は時折無茶振りをする事があり、自分だけならまだしも家族にまでとばっちりが。

ただ、当人は出来て当然とばかりに主張。

加えて見本がてら実際に(こな)してしまうのだから誰も文句が言えない。


そして今回の場合、自らの趣味を利用されたみたいで少し腑に落ちない部分はあるものの、突っ込んだところでどうにもならないんだろうなぁ…と諦めるしかないのもまた事実。


「…そう言えば、さっきシロも管理者がどうとか話してたね。管理者ってそんなにいるものなの?」


「今は5ってところかしら。」


「5人か…多いのか少ないのか分からない数字だね。」


「その取り纏め役であるシロ…じゃなかった。白神と黒神の2人も管理者と言えば管理者ではあるのだけど、あの子達は裏方役でね。

凛ちゃんと違って、ナビも眷族もいない。だからフォローするのに限界があるし、表立って動けないとの制限がどうしても…ね。」


「(さっきシロが言ってた、すぐには会えないってのはこの事か。)…そうなんだ。管理者って役目が、限られた者でないといけないのは何となく分かった。因みにだけど、お姉ちゃんも残りの管理者の内に入るの?」


「私?私は違うわね。」


「え?違うんだ、意外。」


「んー…自分の世界だし、やりたくない訳ではないのよ。ただ、異世界大戦の影響…と言うか、世界のあちこちに(ゆが)みみたいなのが出来てしまったみたいでね。私はその対応と処理をしないといけないの。だからあまり手が離せなくてね、困ったわー…。」


里香はたははーと困り顔で後頭部をぽりぽり掻く。


大戦後、世界の至る箇所に空間の(ひず)みが生じる様になった。

その歪みは何もない地点、空中、海の中と言った場合がほとんど。


人、動物、魔物問わず歪みに巻き込まれる事例が発生し、遠く離れた位置にて無事が確認されたとの報告もあったが、どちらかと言えば(まれ)

空間内で何らかの事故、若しくは出口側での問題(高所や水中)により多くが亡骸(なきがら)で発見され、食い荒らされたり追い()ぎに()う等して凄惨(せいさん)な最期を()げている。


ついでに、これもまた稀な例として、魔素点内へ繋がるとのケースが。

必然的に、元々そこにいた者と新参者での争いが勃発(ぼっぱつ)


大抵は新参者の方が敗れるのだが、低確率で既存のリーダー側が倒される。

良くて新リーダーの餌。

次に代替わりが起きて新リーダーへ下り、折り合いが付かないを理由に魔素点から出るなんてパターンも。


特に1番後に述べた魔素点から出るのが最悪で、近くにある村や街、時には都市へ牙を()くとの傾向が。

負けたとは言え、元リーダー。

被害は甚大なものとなり、酷い時は都市ですら丸ごと壊滅なんて事態もあったのだとか。


それらを防ぐべく、里香は常に世界中を監視。

兆候が見られ次第何らかの対策を講じるも、やがて手一杯に。


「結論から言うと、完全に後手へ回っちゃってるのが現状なのよ。今は魔素点…特に死滅の森へ対抗出来るような人材がいないの。勿論冒険者も含めてね。

人々は安全な生活を送るに意識が向いてるし、魔物達も追いやられでもしない限り、出来るだけ魔素点にいようとする。これが当たり前になり過ぎてて、人は弱くなる一方…まぁ、私達の方で魔素点から(あぶ)れる魔物をこっそり間引いてるのも関係してるんだろうけど。」


里香達神が世界中に目を光らせ、指令を受けたマクスウェル達精霊が溢れた魔物を適宜(てきぎ)駆逐。

これらは秘密裏に行われ、影で人々の生活を支えて来た。


「今のところ人的被害は少ない…けど、最近はどうも死滅の森に怪しい動きがあるみたいでね。私達は何故か森へ入れないし、頼れるのは凛ちゃんしかいないと思ってこちらに招いたの。」


「僕を当てにしてくれてありがとう…で良いのかな?それに死滅の森で怪しい動き、か。被害が少ないのは良い事なんだろうけど…お姉ちゃん達、それが気掛かりでちゃんと休めてないんじゃない?」


「え?ええ…そうね。あまり休めてはない…かも。」


「やっぱり。死滅の森の影響って、色んな意味で大きいんだね。」


「その通り。昔は一攫千金目当てに、森へ挑む高位の冒険者が多かったの。けど森は物凄く広いし、全方向から魔物が現れる。常に周りへ意識を向けなければならないから休む間がないを根底に、犠牲が後を絶たなくてね。

それが噂を呼んで(死滅の森へ)挑む人は減る一方。気付けば、弱い魔物だけしか出ない、他の魔素点で満足するとの流れが出来ちゃったみたい。

昔は冒険者ランクで言うところの神金級もそこそこいたんだけど、今は安全を重視し過ぎるあまり黒鉄級が数名…銀級がベテランで金級が一流ってなってる時点で詰んでるわよね。」


「安全重視なのは分からなくもないけど、そのしわ寄せがお姉ちゃん達に来るのはちょっと…。」


「本当よ…まぁそれが原因で、多少強めの魔素点ですら人手不足な状況に(おちい)っちゃってね。ウェル爺達は人々に気付かれないようこっそり動いて貰ってるし、私は世界を見張らないとだからあまり動けない。

本当は凛ちゃんを巻き込みたくなかったんだけど、私に近い存在で管理者の役職に向いてそうなのが凛ちゃんしかいなくて…。」


「あー…確かに。上のお姉ちゃん達って、自分が前に立って何かをするってタイプじゃないもんねぇ…。」


「そうなのよ。理彩(りさ)姉さんは私達家族には優しいんだけど、それ以外へ対しては物凄く厳しいキャリアウーマンだし。莉緒(りお)姉さんに至っては自由過ぎると言うか、かなりマイペースなのよねぇ…。」


「だよねぇ…。」


「「ははは…。」」


里香と凛が、姉弟揃って乾いた笑いを浮かべる。


長女理彩は20代にして、大手会社の部長にまで上り詰めた才女。

ただ、自分と同レベルの仕事の内容や量を他人にも求めるとのきらいがあるのが難点。

入社する前からいたベテランですら彼女の半分以下しか(さば)けず、何故その程度の事も出来ないのかとイライラ。

部下だけでなく、上司までもが叱咤される光景が当たり前となっており、会社全体で恐れられているのだそう。


次女莉緒は2番目に生まれたのもあり、典型的なマイペース。

幼い頃から自由奔放で、優秀な(理彩)(里香)に挟まれて育つ。

本来であれば彼女もかなりのハイスペックの持ち主なのだが…勘と要領の良さに振り切ってしまった。

ある程度の事は卒なく(こな)せ、その影響により全く努力しなくなった人物でもある。


それでいて野生…と言うか天性に近い勘が()え渡り、今までトラブルらしいトラブルに全く遭遇せずに生きてきたとの経歴を持つ彼女。

働いたら負けをモットーにしており、最期まで家族に面倒を見て貰うつもりでいるとの事。




「そんな訳で、今日から1ヶ月間。体の動かし方とか、魔力操作とか色々、ウェル爺から教えて貰って頂戴。それまでの間、私は一旦仕事に戻るわ。また会いましょう…と、その前に。」


里香は凛へ歩み寄り、再びぎゅっと抱き締める。


「わぷっ…!」


「はぁーっ!これよこれー!久しぶりだわぁ…今の内に凛ちゃん成分をしっかり補給しておかないと…。」


いきなり抱き締められた事に凛が思いっ切り戸惑うも、全くお構いなし。

彼の頭の上に顎を乗せたり、髪に顔を(うず)めて呼吸する等やりたい放題。

今この瞬間を思いっきり堪能(たんのう)している風に感じられた。


さて、ご覧の通り、里香はどうやらブラコン…それもかなり重度のものの様だ。

それも、凛成分と言う、謎の補給行動をする位には。


この奇行は凛が物心つく前から幾度となく。

数百、数千、下手すると万を超す程に繰り返された行動でもある。


彼女の痴態とも取れる光景に、初見の(知らなかった)マクスウェルはポカンと口を開け、瑠璃は定番のお澄まし。

美羽だけが良いなーと羨ましそうにしていた。




3分後


「良し!これでまたしばらく頑張れるわ。ありがと、凛ちゃん。また1ヶ月後に会いましょう!」


どうやら充電とやらが完了したらしい。

やる気に満ちた表情で凛から離れた里香が、彼の頭を撫でる。


「…ウェル爺、美羽ちゃん、ナビ。後の事は任せるわね。」


「うむ、承知しましたぞ!」


「はいっ!」


《畏まりました。》


続けてマクスウェル、美羽、少し斜め上方向に視線をやり、それぞれの返事を受けて満足そうに頷く。


「それじゃあね。」


里香は足元に転移魔法陣を展開。

皆に向けて手を振り、頭を下げる瑠璃と共にその場から去るのだった。

美羽の登場シーンですが、初○ミクの○唱の最後の高速サビの部分っぽいものだと思って頂ければ。(作者の大好きなボカロ曲でもあります)

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