4話
説明会がメインなので長めになります。
その後、凛は里香とマクスウェルに宥められ、3分程で復活。
それとマクスウェルだが、口にこそしなかったものの、彼もたまにではあるが里香(ついでに白神も)の突拍子もない行動に振り回される1人。
凛を慰める内に同族意識が芽生え、密かに彼との心の距離が少しばかり短縮。
立ち直ってからもそちらへ温かい視線を向けていた。
「それじゃあ凛ちゃん、説明を始めさせて貰うわね。」
そんなマクスウェルの心境を知ってか知らずか、再び居住まいを正した里香が改めて口を開く。
この世界について
リルアースは、オーストラリアを少し縦に伸ばしたような形の大陸が中心。
それ以外は、基本的に海と小さな島で構成されているとの事。
大陸は面積に換算するとロシアよりも大きく、全て含めると地球の4分の1以上はあるのだそう。
そして今から1500年位前…地球で言う所の里香がいなくなる3年程前。
地球で過ごしていた里香の元に、他の世界から無差別に攻撃を受けているとの報告が届けられた。
里香は急いで自らが治める世界へと戻り、報告主である黒神達から事情を伺い、そのまま戦線へ。
尚、当時の里香を出迎えた白神&黒神。
それは凛がいなくなった後の少女ではなく、凛と話していた時の妙齢の姿だったりする。
そして後に、『異世界大戦』と呼ばれる大規模な戦いへと発展。
こちら側は里香や白神、黒神の様な『神』。
マクスウェルやイフリート達『精霊』を主力に、そのまま人間と言う意味の『人族』。
痩身美人で耳が長いが特徴のエルフ族や、人間よりも少し背が低く頑強なドワーフ族。
身長が1メートルを下回る者がほとんどの小人族。
額に1本の鬼の角を生やした鬼人族。
高い所に住んでいるとされる天使族や悪魔族。
下半身が魚の人魚族等を含む、人でありながらどこか異なる箇所を併せ持つ『亜人族』。
それと地球で言うところの犬、猫、熊、兎の様に、耳や尻尾等。
体の一部に哺乳類の特徴が現れた『獣人族』と協力。
以上のメンバーで持てる力を結集し、戦いに臨んだ。
戦いは泥沼化。
里香達はかなりの被害を出しながらもどうにか首魁を倒し、彼らを退ける事が出来た。
しかしその影響により見るも無惨な姿へと変わり果てた、世界中の建築物や自然。そして人々。
嘆き悲しむ者は多く、絶望に明け暮れる例も決して少なくなかったのだとか。
それでもこれから生きていく以上、新たにやり直すしかない。
生き残った者達は決意を新たに世界各地へと散り、集落を形成。
集落は村となり、街へ、都市へ、国へと成長。
そこから幾重にも拡大、分裂、統合を繰り返し、少しずつ国の形を変えていった。
そして1500年程が経った現在。
大陸の中央部分は4割を占める広大な森が鎮座。
その森を囲む様に、5つの国が存在している。
5つの国と言うのは、大陸の北西の位置に『アウドニア王国』(通称 王国)。
北から東にかけてが『ダライド帝国』(通称 帝国)。
南東が『シリウ神聖国』(通称 神聖国或いは聖国)。
南から南西にかけてが『獣国マーレシス』(通称 獣国)。
西からやや北西にある小さな部分が『商業国家ミョルソド』(通称 商国)。
最後に、(国ではないものの)大陸の中央にある広々とした森は『死滅の森』と呼ばれている。
王国は『王』を中心とし、王族による世襲制。
帝国は頂点である『皇帝』を倒した者(ただし人族に限る)。
神聖国は『教皇』を代表とし、枢機卿以下主要な者達による選挙。
獣国も帝国同様、頂点である『獣王』を倒した者(ただし獣人に限る)。
商国は主要となる5つの商家が交代で務め、そのまま『代表』。
以上が、それぞれの国を代表とする者の決め方となる。
魔素、魔素点について
『魔素』はあらゆるものを構成する素。
この世界を取り巻く重要な要素で、魔素がある事で水が流れ、作物が育ち、命が育まれていく。
魔素は空気や海の中、生き物に果ては鉱石等の無機物にも存在。
呼吸や食事との形で人間、亜人、獣人。
上記以外の種族だろうが関係なく、日々を過ごす上で必要不可欠なものが魔素。
魔素は世界中にあり、濃度が一定に保たれていた。
しかし大戦の末期、大陸の丁度中心部に当たる場所が一大決戦地となった。
かつて平原だったそこは、言葉では言い表わせない位、夥しい数の魔法が。
他にも魔力や属性を帯びた攻撃も多数飛び交い、最終的に大きく陥没する場所が幾つも発生。
かなりの広範囲に渡り、地面が真っ黒に染まる。
大戦終了当時、そこは黒いと言うだけで、特別何かある訳ではなかった。
里香達もそれで意見が一致。
残党処理の為、落ち着いたらまた調査を行おうとの名目でひとまずその場を離れる事に。
1年後。
残党処理も終わり、人々が新たな生活に慣れ始めた頃。
突如、世界の中心である黒くなった箇所に木々が生え、瞬く間に大陸の4割を占める程の広大な森が形成。
原因は不明だが、後に激しい攻防で異常に高まった魔力や魔素が何らかの影響を及ぼしたのでは…と考察。
実際のところ、発動した魔法毎に効果を発揮。
終了に併せて無に還るとされているが、魔力。
延いては魔素に戻るが正解であり、真実。
要は、本来であればバランス良く散るべき魔素や魔力が、膨れ上がった数を前に大渋滞に次ぐ大渋滞を引き起こし、解消されないまま澱んでしまった結果が上記に該当。
少し前、魔力の残滓と称して白神が凛を転移魔方陣で送ったのを里香が察知したのがコレに含まれる。
当時の教訓が生かされ、お尻ペンペンへと繋がった白神もさぞかし喜んでいる事だろう。(ちっとも嬉しくないのじゃー!と聞こえた気がするがやはり気のせいに違いない)
話は戻り、範囲内にあった、廃墟や燃え尽きた木々は勿論。
山や川に至るまで全てが吸収され、平坦な地面へと変化。
そこにいた生物達も漏れなく喰い破られ、糧となってしまった。
それを機に、世界中で変化が。
大小様々な形で生まれた黒い球が、魔素を放出。
更に大戦時、里香達と戦い、同時に人々を脅かした『魔物』と呼ばれる存在もが排出され、周辺に被害を齎すまでに。
その黒い球は『魔素点』と称され、いつしか魔物を発生させるエリア内全てを差す言葉へと移行。
排出された魔物は魔素が餌になるらしく、ほとんどが魔素点内に留まり、あまり外に出ようとはしない。
しかし先述した通り、魔素点内に於いて魔物は次々に生まれる。
時間が経てば経つ程スペースは埋まっていき、やがて自分の場所を確保しようと、魔物同士による争いが勃発。
そこで敗れた者は少しずつ端へ端へと追いやられ、最終的に魔素点から出ざるを得ない状況に。
こうして魔素点から出た魔物は『ハグレ』と呼ばれ、集落や街道等。
近くにいる者達を標的と定め、魔素を得る代替手段として彼らに牙を向ける。
だがそのほとんどがそう大した個体ではなかった為、襲われた側である人々や別な魔物達により瞬く間に駆逐されていった。
ただ、大陸の半分近くを占める広大な森だけは別格。
強力な魔物ばかりで構成され、中心部に近付けば近付く程脅威度が増していく。
流石、世界に変化を与えただけの事はある。
そう言わしめる位には魔物が精強で、大勢の者が腕試しや一攫千金を求めて森に挑むも、戻って来た者は極僅か。
先へ進もうがその場に留まろうが関係なく、絶えず魔物が。
しかもほとんどが複数による構成で襲撃を受け、心身共に休まる間がないと専らの噂。
結果1人、また1人とやられていき、碌に戦果も上げられないまま引き返すはザラ。
全滅したパターンも全然珍しくなく、辛うじて生き残った帰還者から如何にその森が恐ろしいかが広められ、1度入ったら確実に死に絶える。
━━━つまり死滅するが浸透。
以上が、『死滅の森』と呼称される所以となった。
その現状を知る里香やマクスウェル達も、ただ見ているだけでなく、どうにかしたいとは常々思っていた。
ただ、彼女達は神や精霊。
本来は世界に生きる者達を支える裏方役で、大戦が始まる前までそれは同じ。
むしろ、それまで全く世界に干渉しなかったからか、大戦時に初めて知ったと言う者がほとんどだった。
そんな彼らが、人々が里香達の凄さを知った。
彼女達なら魔素点の問題もどうにかしてくれるだろうと楽観視し、積極的に動こうとする者は少なかった。
里香達は里香達で、直接干渉するには色々と無理をする必要がある。
また、大戦時に力を使い過ぎた弊害で行動に制限が掛かり、中々思う様に動けない。
そうこうしている内に年月だけが過ぎ、強い者は段々減る一方。
今では本格的に死滅の森に挑もうとする者はほぼ皆無となり、全く笑えない状況に陥ったのだそう。
冒険者ギルドについて
この世界には、冒険者。
そして冒険者達を纏める冒険者ギルドと呼ばれる存在がある。
冒険者になる為には、世界各地にある冒険者ギルドで登録する必要が。
無事に登録を終え、見習いとなった状態を紙級。
そこから鉄級、銅級と上がっていき、最終的に神輝金級(通称神金級)となる。
紙級でお使いや掃除等の簡単な仕事や薬草採集で経験を積み、鉄級へ昇格でゴブリンやウルフ等の討伐任務が許可される。
簡単な目安ではあるが、登録したばかりの紙級を0。
実戦が解禁される鉄級を1とした場合、下から
0 紙級 見習い
1~ 鉄級 駆け出し
20~ 銅級 一人前
40~ 銀級 ベテラン
70~ 金級 一流
100~ 魔銀級 超一流
150~ 黒鉄級 人外
200~1000 神輝金級 化物
になる。
世界中に存在する魔素点…そのほとんどは、魔銀級までの強さの魔物しか出現しない。
しかし死滅の森は例外らしく、中に入ってしばらく進んだ箇所は『表層』と呼ばれ、銀級や金級の魔物がメイン。
そこから数千キロ進んだ辺りから『中層』へと変わり、魔銀級以上の魔物は当然。
黒鉄級や神金級、その先の強さの者も跋扈するのだとか。
先程も軽く話に出たが、死滅の森は鬱蒼とした森がひたすら続く。
出現する魔物も多い事から、全く気の休まる間がない。
その為、本気で死滅の森に挑むのであればソロは論外。
どうしても複数人で組む必要がなり、2桁から3桁の人員で入るケースも。
それだけの用意をしても、中層の先である『深層』、その中の中心部となる『深部』へ辿り着いたと言う者はいない。
仮令万を超える軍を用意しようがそれは変わらず、魔物達の洗礼により殲滅。
良くて数人だけが戻る結果となり、それが死滅の森へ挑む者が減る要因にも。
そう言った経緯が重なり、今では神輝金級の冒険者がいなくなった。
怪我や命を失うとのリスクを恐れ、冒険者が冒険をしなくなったからだ。
『この位で十分だろう』と見切りを付け、一定の地位で満足。
その流れが浸透し、大抵の者が銀級や金級を占め、今では黒鉄級冒険者が最高位。
挙げ句、全世界を含めて数名程度しかいない。
ここ300年程、神輝金級冒険者に至る者は生まれていない…が、それに見合う実力者自体は少なからずいる。
その冒険者に関連してと言うか。
リルアースでは相手に止めを刺した者に倒された側の魔素の一部が流れ、倒した側が強化される仕組みが存在。
それは強い魔物程顕著に表れ、基本的にそう言った者程美味とされる。
王族や貴族を始めとする裕福な所では、その仕組みを利用。
金に物を言わせ、強い魔物の肉等を食べる傾向にある。
更に、高価な香辛料を沢山使用して食べるが美徳とされ、味付けは二の次。
やたら辛かったり、濃い味付けのものが普通に出て来る。
なので血中の塩分濃度が上がり、高血圧等が原因で早死にする例も少なくないとか。
反対に、一般的な食事だと簡単な焼く・煮る・炒めるが主。
下手に調理しなくても素材だけで十分味を楽しめる分、却ってそれが調理技術向上を阻害する要因になっているのかも知れない。
そこへパン、サラダ、スープが追加。
ただ、パンはパンでも、貴族等の場合だと小麦を使った、少し硬くて白いパン。
一般の場合、質の悪い小麦。
ライ麦や大麦を使った、やたら硬く黒い(または茶色)丸型のパンが主流。
リルアースでの通貨
この世界では、共通通貨として銅貨、銀貨、金貨、白金貨、金を特殊加工した黒金貨が。
それらの間に入る形で銅板、銀板、金板、白金板を使用。
銅貨1枚で市販されているパンが買え(日本で言う所の100円位)、銅貨、銀貨、金貨、白金貨が10枚で銅板、銀板、金板、白金板1枚とそれぞれ交換出来る。
つまり、銅貨100枚=銅板10枚=銀貨1枚、
銀貨100枚=銀板10枚=金貨1枚、
金貨100枚=金板10枚=白金貨1枚、
白金貨100枚=白金板10枚=黒金貨1枚となる。
銅板、銀板、金板、白金板は、里香が江戸時代の小判を参考を理由に、縦長で楕円状の形をしているとの事。
通貨以外の単位
時間は秒、分、時間、日、月、年。
曜日は闇・火・水・風・土・光の6日を1週間とし、24時間で1日、30日で1ヶ月。
360日=12ヶ月=1年としている。
重さはグラム、キロ、トン。
長さはミリ、センチメートル、メートル、キロメートル。
文字はひらがなとカタカナをベースに、少しの漢字だったり(英語等の)外国語で構成されている。
これらは、里香が地球から持ち込んだ情報を元にし、新たに制定し直したもの。
また、地球とリルアースでは時間の進み方が異なっており、地球での1年がリルアースだと500年が経過した事になる。
ここまでの話を受け、まるで精神と◯の部屋みたいだね…と凛が漏らし、里香を苦笑いにさせた。
魔素、魔力、魔法の関係について
この世界には『魔法』と呼ばれるものが存在する。
魔法を扱うには、体内にある『魔素』を操作し、属性や方向性を『魔力』として具現化。
それらを束ね、若しくは集めて形にしたものが魔法とされる。
魔法は初級、中級、上級、超級、最上級の5段階があり、上へ上がるに連れ、必要な魔力量も増えていく。
『魔力』は『魔法』として放つだけではなく、自身の周りを覆う魔力障壁。
それと身体能力を補助・強化してくれる『身体強化』も行う事が可能。
身体強化は込める魔力量に応じて強化の比率が上がる反面、比例する形で消費量も増大。
またコントロールも難しいとの観点から、いざと言う時以外はあまり使われていないらしい。
リルアースの文明は、魔法と呼ばれる便利な物があるおかげ(またはそのせい)か、地球で言う所の中世ヨーロッパと同じか、少し下回る位。
長年そうしてきたからとの理由から、例え文明が低かろうが特に困った様子は見られないらしい。
魔法は基本とする炎・水・風・土に、上位の光と闇。
いずれにも属さない無があり、それらは単属性とも単体魔法とも。
炎は水に、水は土に、土は風に、風は炎に弱く、光と闇は互いが弱点。
無だけは特に得意不得意がなく、安定してダメージを与えられるとか。
またそれ以外に、2つ属性が合わさり、複属性や複合魔法と呼ばれるものも存在。
例えば炎と水。
普通なら炎が水によって消されるか、圧倒的熱量で水を蒸発させるで終わる。
しかし不思議と混ざり合い、泡魔法や水熱魔法、氷炎魔法とも呼ばれるまでに。
他にも、炎と土による『溶岩』、
炎と風の『雷』、
水と風の『氷』、
風と土の『砂』、
炎と光の『白炎・聖炎』、
炎と闇の『黒炎・闇炎』、
水と闇の『幻影』、
風と光の『聖風・聖光』がある。
因みに、水や風で出来た玉より、炎や土の玉の方が一見すると痛かったり、被害を受ける様に感じられる。
しかし同じ魔力量で発生させた場合、(弱点を突く等の条件でなければ)受けるダメージ量自体は何故か一緒だったりする。
話の最後、里香は転生に近い形で地球へ向かったのだと告げる。
凛達と生活しながら様々な事を学び、かつ自分が異世界の神だと説明してもそれ程驚かれないよう、敢えて小さな頃からゲームをプレイする姿を家族へ披露。
また、(理由は伏せたが)凛は何としても興味を持って欲しく、殊更熱心に教えたらしい。
「取り敢えずはこんな感じかしら。」
里香が話を締めくくると、最初の不安はどこへやら。
凛はワクワクとした様子を隠そうとしないどころか、むしろソワソワソワソワ。
如何にも好奇心が抑えられません…的な態度を取る彼に、里香は上手くいったと内心ほくそ笑む。
「それで、凛ちゃんには半神半人になって貰ったわ。お姉ちゃんなりのボーナスって事で♪(シロが邪魔したせいで)予定した強さには届かなかったけど、今の凛ちゃんなら死滅の森でもある程度は戦えると思う。」
(デミゴッド…?え…それって確か、神の一種とか、眷属みたいな感じの意味じゃなかったっけ…?)
それまでのウキウキ気分から一転。
予想外の展開を受け、凛は軽くパニック気味に。
それでも何とか冷静になろうと、敢えてデミゴッドの件は聞かなかった事にした。
「え、えっと…死滅の森…だったよね。そこって、世界で一番危ない所になると思うんだけど、正直僕1人だけだと厳しいんじゃないかなぁ…なんて。」
「いやねぇ、いきなり(死滅の森の)中心部に放り込むなんて事はしないわよ。だから安心して頂戴。それと…ナビ。」
《はい。マザー。》
「?」
微苦笑の里香がやや上の方向へ視線を移してみれば、どこからか聞こえて来るは機械じみた声。
不思議に思った凛がキョロキョロと辺りを見回してみるも、当然ながら自分達以外に誰もいない。
キョトン顔を浮かべる凛に、里香がクスリと笑みを零す。
「ナビには姿がないのよ。聞こえているのは私と凛ちゃんだけ。凛ちゃんはまだ来たばかりだし、この世界の事は全然分からないでしょ?だからナビを凛ちゃんのサポートに…と思ってね。」
「へー、そうなんだ。」
《マスター。宜しくお願い致します。》
「え?あ、うん。宜しくね?ナビ。」
《はい、こちらこそ。》
「ナビが凛ちゃんと向こうの世界の情報を検索・共有出来るよう、リンクさせて貰ったわ。私の持ってる情報もあるし、少しはスムーズに進められると思う。」
「ホント!?(右も左も分からない状況に陥るだろうから)凄く助かるぅ!ありがとうお姉ちゃん!」
「(うっ…可愛い!)…こほん。私の可愛い凛ちゃんだもの、これ位はさせて頂戴。」
「それにしても、魔力って凄いんだね。うちの生活が豊かなのは、お姉ちゃんが頑張ったからなんでしょ?」
「そうなるわね。」
里香は幼い頃にして、魔力と言うか神の力を如何なく発揮。
父親名義で買った株だったり、(見た目を大人の女性に変化させての)競馬で荒稼ぎ。
おかげでそれなりに裕福な家庭へと変貌し、夢の国を始めとする娯楽施設へ何度も遊びに行ったり、国内外を旅行。
ホテルや旅館も、毎回上質なものを利用している。
「僕ももっと早く魔力の存在に気付いていればなぁ。こんな見た目じゃなく、もっと成長させられたかもなのに…。」
そう言って悲しむ凛を見た、里香の笑顔がピシッと固まる。
何故なら、先程のお金稼ぎ云々だけでなく、彼の成長に関しても神の力を用いたからだ。
前者が(八月朔日家にとって)良い場合だとしたら、これから述べるのは悪いケース。
凛は今でこそこんな見た目だが、本来であれば180センチオーバーと中々の高身長。
顔立ちも、宝塚にいそうな感じの綺麗とか、格好良いと言われる中性的寄りのものになる予定だった。
しかし彼が13歳の時、転機(又は悲運)が訪れる。
凛は昨年1年間で身長が10センチ伸び、この調子でいけば少女と呼ばれず済むと喜ぶ一方。
このままだと彼の可愛らしさが失われると危惧した里香が、あろう事か神の力を行使し、成長を阻害。
その効果により、凛の成長は驚く程ピタリと止まった。
誰よりも里香と触れる機会が多く、得た神気による高い身体能力が元でスポーツ万能と化した彼がどれだけ動き、鍛えても。
または牛乳だったり食事を沢山摂ろうが、今と全く同じ体型。
その状態で歳を重ね、少女と見紛う程に可愛らしい容姿のまま大人を迎えるとの災難に巻き込まれてしまう。
理由と原因。
そのどちらも里香にあるからか、ちょっとだけ。
ほんのちょーーーっとだけ、申し訳ないと思う気持ちが生まれたのだろう。(ただし後悔は微塵も感じていない模様)
「? お姉ちゃん、どうかした?」
「な、何でもないわ…それじゃ次の話に移りましょうか。さっき凛ちゃんを調整した時に渡した(私の)加護についてだけど…これは実践した方が早いわね。凛ちゃんの好きな武器って、刀で変わりはなかったかしら?」
首を傾げる凛に、里香はボロを出しそうになるのをどうにか堪え、軽く捲し立てる。
そしてモ○ハンを始めとする、数々のゲームで凛がよく刀を使ってプレイしている事。
部屋に模造刀が飾ってあるのを何度も見ているとの点から、刀好きの彼ならば実際に使用するとしたら刀になるだろうと考察。
因みに、モン◯ンのとある作品に於いて。
敵モンスターの攻撃に対し、バシバシとカウンターを決める彼。
ダウン、或いはトドメに繋がるケースも多く、都度周りから歓声が上がった…なんて場面も。
「うん?うん、そうだね。僕が好きなのは日本刀のままで変わりないよ。」
「(凛の)部屋にア○ゾンで買った模造刀がある位だものね。たまに手入れしてるのを見掛けるし。」
「うん。僕のお気に入りなんだー!」
若干面食らわれこそしたものの、どうにか話を逸らす事に成功。
尚も里香は平静さを装いつつ、誘導を続ける。
「成程ね。それじゃ凛ちゃん、リラックスした状態で構わないから、作りたい刀の形をイメージしながら『創造』と唱えてみて頂戴。」
「イメージ?うーん、分かった。やってみるよ。」
凛は促されるまま赤いカーペットの上に座り、胡座をかく。
それぞれの足に両手を乗せ、掌を上にした状態で集中し始める。
1分後
「…創造。」
凛がそう唱えてから1拍後、1メートル程の大きさの黒い球体が出現。
その球体は彼の頭上より少し上の位置に姿を見せ、ゆっくりと降下。
少しずつ小さくなっていき、やがて綺麗に消失。
凛の両掌の上に、鞘に収まった状態の打刀だけが残された。
その打刀は全長80センチ程の長さ。
鍔の部分は白、柄と鞘の部分は黒色で出来ていた。
「…! 里香お姉ちゃん、これって…?」
凛は突然手元に刀が現れた事にビックリ。
「それが私の加護で使えるようになったスキル、『万物創造』よ。武器でも魔法でも…それこそ『何でも創造出来る』と言うものなの。」
「万物創造…。」
「使用者の力量とイメージ力次第で希望通りになるのだけど、弱かったり、適性がなかったりすると創造出来ず失敗扱いになるわ。まぁ、補完能力もそれなりにあるし、凛ちゃんなら失敗の可能性は低いと思う。」
「いやいや、僕だって失敗位は━━━」
「後、地球にある物や食べ物は万物創造で創れるんだけど、何故か(スーパー等で)市販されてる品質が限界っぽいのよねぇ。出来上がった料理は見映えが悪いし、とても食べれたものじゃなかったわ。折角あっちの世界で食べ歩きとかしたのに…イメージが足りなかったのかしら?」
「それって多分、料理が苦━━━」
「違うわ!ちょぉぉーーーっっと得意じゃないってだけ!決して苦手ではないの!良い、凛ちゃん?あくまでも私は料理が得意ではない…分かった?」
だがそれ以上…と言うか、真顔の里香に詰め寄られた事により圧倒。
あまりのプレッシャーに「う、うん…分かった…」とたじろぐしか選択肢を与えては貰えなかった。
(料理の度に爆発が起きたり、出来上がったものが毎回謎の呻き声を上げているのに…それを得意じゃないって言い張れるのが凄い。)
里香の料理はよく爆発する。
今更ながら、調理中無意識に魔力を垂れ流したのが原因として挙げられるのだが…ともあれ当時は爆発のオンパレードだった。
それでも低確率で。
しかも無事に出来上がったかと思いきや、「ア"ア"ア"ア"ア"ア"」とか「イ"ヤ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"」みたいな感じで悲鳴を上げる。
見た目は一応ハンバーグだったり、オムライス等の料理が…だ。
なのに味は普通。
美味くも不味くもなく普通だ。
最早意味の分からない仕様に、凛達は困惑1色に染まったのは言うまでもない。(フフンと胸を張る里香を放置して)
話は戻り、引いた様子の凛を見た里香が我に返り、半ば誤魔化す様に咳払いをする。
「…こほん。凛ちゃんはこれから強くなる為に頑張って貰う予定よ。」
「あ、うん。そうだね。」
「…けど、凛ちゃんが強くなり、経験を積めば、今創ったのより良い武器だったり創れる幅も広がる。」
「あ、やっぱり?ならやる気が出るかも。」
「なので、今後の私の為にも宜しくね♪」
「お姉ちゃん…ちゃっかりしてるのはこっちでも相変わらずなんだね…。」
「ふふん、当たり前じゃない!なんたって私が神…あ、そうそう。刀を持ったままだと話しにくいわよね。頭の中で『収納』って思ってみて頂戴。」
「(収納…?)あっ!刀が消えた!!」
凛は漫画やアニメ、ゲームの影響で異空間の知識はあったが、まさか実在するとは想像の埒外だったらしい。
目をこれでもかと見開き、里香に視線をやる。
「それは私の加護で得た能力の1つ、無限収納って言うスキルよ。ここと違う空間の入口を開き、出し入れする事が可能になるの。
無限収納内では時間が止まっているから、入れた状態のまま保持出来るし、容量に限界がないからいくらでも収納出来る。あ、ナビに頼めばリストも用意してくれるわよ。」
「いくらでも収納…凄いな…。」
「それじゃ最後に眷族召喚ね。召喚って言っても2通りあって、過去に倒した者を喚び出す『召喚』。それと特別な眷属として喚び出す『眷属召喚』があるの。
召喚は条件さえ整えれば何回でも使えるのだけど、眷属召喚は1回のみ。文字通り、特別って意味でね。
だから私にとって瑠璃ちゃんは大事な眷族だし、自慢の家族でもあるの。」
「…♪」
里香は瑠璃を抱き寄せ、彼女の頭を撫でる。
「重ねて言うけど、眷族召喚は1回しか使えないから慎重にね。」
「成程…。」
「それじゃ凛ちゃん、パートナーをイメージし、創って頂戴…と言ってもまぁ、凛ちゃんがどんな感じの子を召喚するか、大体想像付くけどね。」
「あー、やっぱりお姉ちゃんには分かっちゃうか。実は瑠璃を見た時に、もしかしたらって思った子がいるんだよね。」
「ふふっ、当然じゃない。オタク関連についての、貴方の師匠は私よ?それに、何年凛ちゃんの姉をやっていると思うの!」
「ははは…。(そのやる気を、僕のコスプレ衣装収集や製作とかじゃなく、家事や料理に回して欲しかったなぁ…。)」
「…そんな訳で、凛ちゃんもパートナーを呼んじゃいましょうか。明確なイメージをした後、『眷族召喚』と唱えれば大丈夫よ。何度も言う様だけど、慎重にお願いね?」
「うん…分かった。」
凛は苦笑いの後に再度胡座を組み、目をスッと閉じるのだった。
ランクについてですが、
神輝金級→S〜SSS(中位がSS、上位がSSS)
黒鉄級→A
魔銀級→B
金級→C
銀→D
銅→E
鉄→F
みたいな感じで考えて頂ければ。
それと今後、神輝金級以外で◯◯級上位と記載されるものが度々出て来ます。
その場合◯+と言う扱いに。(例 黒鉄級上位→A+)
(令和7年3月13日追記)
私事になりますが、少し前から妹がスイッ◯版モ◯ハンXXをやり始めまして…触発されてしまいました←オイ
凛の刀の部分にもあります、カウンターが楽しくて楽しくて…w
それもこれもブ◯イブ太刀が悪い←




