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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
死滅の森開拓&サルーン都市化計画
54/256

50話

その頃、凛達は再び応接室にいた。

しばらくしてダンがマルコとアップルを連れて姿を現し、満面の笑みで凛に握手を求める。


「いやー、ホズミ様。非常に有意義な時間をありがとうございました。」


「こちらこそ。色々と勉強になりました。」


そして挨拶もそこそこに部屋を後にし、受付で奴隷達と(落札額からオークション主催側の取り分である2割を引いた)お金を受け取る。

そのまま正面から出ようとしたが、ドラゴン2体の剥製の影響で無理だと判断し、裏口から外に出た。




「はー、やっと帰って来れたー。」


帰宅してすぐ、火燐はリビングに設置されたソファーへダイブ。

それを見た凛は苦笑いを浮かべつつ奴隷達を椅子に座らせ、互いに自己紹介を行う。


「凛様、お呼びでしょうか。」


一通り終わった頃、念話越しに呼んだ丞と灯が到着。

凛は彼らに事情を説明し、奴隷達を案内するよう頼んだ。


「それじゃ、ボク達は着替えてくるねー。」


「あ、はーい。」


丞達がいなくなったのを合図に、美羽は雫達を連れ、自室に向かっていった。

凛は美羽達を見送りつつ、視線を未だにうつ伏せのままの火燐へと移す。


「…火燐、いくらドレスに疲れたからってだらけ過ぎ。」


「えー。たまには良いじゃねーかー。」


凛からの苦言に火燐は横向きに体勢を変え、やや面倒そうに呟く。


「それとも何だ。オレのドレス姿に興奮でもしたか?ん?」


「興奮した興奮した。だから早く着替えて来てね。」


そしてにまにまと笑い、スカート部分を摘まんでぴらぴらと動かしてみせるも、凛から普通に返されてしまう。


「へーいへいっと。んだよ、ノリわりーなー…。」


火燐は凛の対応の悪さに唇を尖らせ、不満を隠そうともせずに階段を上がっていく。

だがもしも本当に凛が迫って来た場合、テンパる形で逃げて終わると言う結末に、本人は全く気付いてはいない。


(だが、全く興味ないって訳ではなさそうだ。…ったく、オレでなきゃ見逃しちゃうね。あれは。)


むしろ、そんな勘違いからくくく…と笑い声を漏らす程だった。




「あ、あの…。」


「?」


凛は声が聞こえた右方向に顔を向けると、先程ヴォレスで購入した兎人族のシンシア、エルフのリリアナが立ち、妖精姉妹のミラとエラは背中に生えた蝶の見た目の羽でパタパタと飛んでいるのが分かった。

彼女達は丞達と共に一旦離れたのだが、凛に何か用事でもあるのか再び戻って来たらしい。


「ん?シンシア、リリアナ、それにミラとエラも。どうかした?」


「あ、あの…!私、す、少しでも凛様のお役に立ちたいと思いまして…!」


シンシアは兎人族の少女で、薄紫色の髪を背中まで伸ばし、同じ色の兎の耳を生やしている。

身長170センチ弱とモデルの様な長身なのに対し、幼く可愛い顔立ちで藍火以上のバストと中々に不釣り合いな体型。


そんな彼女が目に涙を溜め、耳はぺたんと垂れ下がり、体を震わせながら必死に怖いのを我慢して告げる。


「私は同族と精霊がいるのを感じたの。だから挨拶にと思って。」


リリアナはシンシアよりも少しだけ背が低い、金髪ボブカットのエルフだ。

ただ、リーリアがおかしいのか、それとも種族特有なのかは分からないが、リリアナはスレンダーな体型をしていた。


しかしそんな事は気にならない程、整った綺麗な顔で穏やかに笑ってみせる。


「私達も精霊がいるのを感じたのが理由です!精霊とは仲良しだけど、同時にライバルでもあるので!」


「負けられないの~ん。」


ミラとエラは身長が30センチに満たない程に小さな妖精(フェアリー)だ。

どちらも見た目は10歳位で、ミラは背中までの水色の髪を2本結びに、エラは腰までの薄緑色の髪を1本の三つ編みにした髪型で可愛らしい見た目をしている。


それと種族特有なのか、少し変わったドレスの様な服を着用しており、精霊とはどうやらライバル関係にあるらしい。

ミラは凛の周りを元気良く飛び回り、エラはじと目でのんびりした口調とは裏腹に、空中でキレの良いシャドーボクシングを行い、この場にいる者達の注目を集める。




「エルフと妖精ってそういうのが分かるんだ。リーリアは…訓練中か。他の皆もそこにいるみたいだし、彼女達の紹介も一緒にしようかな。」


凛は関心した表情を浮かべながらリンク越しに気配を探り、念話で呼び出した。

すぐにリーリア、エルマ達、暁達、篝、キールがリビングに現れ、更に着替え終わった美羽達も合流。


そこへいつの間にか凛の傍に控えていた紅葉が、クッキーや紅茶を用意(凛達も手伝おうとしたがやんわり断られた)し、それらを摘まみながら話をする事に。


「お菓子ー!」


「お菓子なのんー!」


ただ、ミラとエラはクッキーの乗った皿がテーブルの上に乗ったのが分かった瞬間、物凄い勢いでクッキーに飛び付き、そのまま貪り始めた。


「藍火ー。」


凛はミラ達からリビングの端に置かれたソファーに視線を移し、猫みたいに丸くなって寝る藍火に水を向ける。


「…ん、何っすか…?」


「君の事も紹介するからこっちにおいで。」


「分かったっす…。」


藍火はふらふらと起き上がり、寝ぼけ(まなこ)のまま凛の所へ向かった。


そして彼の太ももに頭を乗せる形で床に座り、そこで満足したのか再び寝てしまう。


「zzz…。」


「あらら、また寝ちゃった。この子は藍火。こんな感じではあるけど、一応はドラゴンなんだ。」


『ド、ドラゴン!?』


「…!!」


凛の紹介にシンシア達は大声で叫び、その声にビックリした藍火が顔を上げる。

しかしすぐにうつらうつらとなり、再び凛の太ももに頭を預けて眠り始めた。




「僕の太ももは枕とかじゃないんだけどなぁ…。」


凛は苦笑いながらも優しい手つきで藍火の頭を撫で、彼女は気持ち良さそうな表情で「ふへへ…」と漏らす。


「藍火ちゃんにはそこが居心地の良い場所なんだよきっと。こうして見るとお母さんみたいだね、マスター♪」


『…!』


美羽がにこにことしながら告げ、凛とシンシア達を除く全員が雷にでも打たれた様に目を大きく開いた。


「いや、僕は男だよ?せめてお父さんとかでしょ。」


「え………?」


「「?」」


今度はシンシアとリリアナは凛が男と知って驚愕の表情となる一方、ミラとエラはそれぞれ両手でクッキーを持ちながらきょとんとする。

彼女達の頬はクッキーでいっぱいとなっており、可愛らしくもっきゅもっきゅと口を動かしている。


「…凛ママ。私も甘えて良い?」


「雫。だから僕はお母さんじゃないって。」


「なぁかーちゃん、小遣いくれよー。」


「かーちゃん!?人を肝っ玉母さんとかみたいに言わないでくれる!?」


「良いなそれ。つか大体合ってるじゃねぇか。」


「どこが!?いくらなんでもこの見た目じゃ無理があり過ぎだよ!それに昨日、火燐には個別で(小遣いを)あげたばかりでしょ!!」


「あー…あれね。全部使っちまった。」


「嘘でしょ!?白金貨5枚もどこに使ったの!!…と言うかイルマに紅葉!そこで変な相談をしない!」


凛は軽く物欲しそうにしながら近付いて来る雫に、にやついてからの良い笑顔で答える火燐。

それとリビングの隅で隠れる様に寄り添い、何やら小声で「ここは…で」「成程。でしたら…とかはどうでしょう」と言った感じで話し合うイルマ達に指摘する。


(あたしの場合、凛くんはお母さんじゃなくお兄ちゃんって感じなんだけどなー。)


(凛君、可哀想です…。)


だがその苦労も虚しく、翡翠と楓にそんな視線を向けられ、火燐や雫を中心とした皆からはからかわれ続ける羽目に。


それと火燐の件だが、昨日凛がサルーンで買い物をする機会があり、その時に小遣いをねだった。

白金貨5枚を貰った彼女はスキップ交じりでその場から離れ、(サーチで調査した)周辺の貧しい街や村に向かってはあちこちに配って回っていた。




「…ちょっと良いかしら。」


しばらくして、皆から弄られ過ぎて凹んだ凛を美羽が慰めていた頃。

リリアナが斜め向かい側に座るリーリアへと話し掛けた。


「ん~、何かしらぁ~?」


「違っていたら申し訳ないのだけど、貴方…もしかしてスコイラの出身じゃない?」


「その通りよぉ~!良く分かったわねぇ~!」


「やっぱり…。」


リリアナは納得の表情を浮かべ、2人のやり取りが気になった(立ち直ったとも言う)凛も会話に混ざる。


「リリアナ、リーリアの事で何か知ってるの?」


「知ってるも何も、この子はスコイラの(エルフの)集落を治める長の孫…つまり貴方達人間で言う一国のお姫様みたいなものよ。」


獣国には南東、南西、北の3ヶ所にエルフの集落がある。

それぞれスコイラ、ヤッコム、ダバーニャと言い、リーリアは南東のスコイラ、リリアナは北のダバーニャで生まれ育った。


リリアナは一般的なエルフ、リーリアは集落の代表である長の孫らしい。

まさかリーリアがそんな高い身分にあるとは知らず、一同は驚いた。


「…リーリア、お姫様だったんだ。」


「たまたま生まれた先が長の孫だったってだけよぉ~。」


「いや、たまたまって…それ絶対他のエルフに言っちゃダメよ?」


「?」


「あ、これ分かってないやつだ。スコイラのお姫様が変わってると言う噂は本当だったのね…。」


エルフは少しでも優秀な遺伝子を次代の長に残す習慣があり、集落内で最も優れた相手を長の伴侶として選ぶ傾向にある。

こうしてリーリアも長の子供として生まれた訳なのだが、本人からすればお姫様と言う肩書きは邪魔以外の何物でもなかったりする。


リリアナはリーリアがその事を良く分かっていないとして頬を引き攣らせ、非常に勿体ないとして頭を抱えた。


しばらくして、購入した奴隷達の緊張が解けたと判断した凛は、4人を代表してシンシアに声を掛ける。


「…シンシア。」


「は、はいっ!何でしょう…?」


「良ければなんだけど、僕に買われるまでの経緯を教えて貰っても良いかな?」


「…そう、ですね。こんな事を言っても信じられないかも知れませんが…普通に歩いていた所をいきなり襲われました。」


シンシアはいきなり話を振られた事で一瞬体を強張らせ、しかし一拍置いてから神妙な面持ちでそう告げるのだった。

お気付きの方もいらっしゃると思いますが、火燐がドレスから着替える前に出た言葉は某ハンター漫画に出るモブさんのセリフですw


次は金曜日に更新します。

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