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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
世界周遊~ダライド帝国編~

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320/325

298話

「うぅ…見ないで。そんな目で私を見ないでぇ…。」


自らの姿が気に入らないのだろう。

内股&へっぴり腰になった全身鎧こと、土属性が主体の精霊が両手で顔を隠そうとし、弾みで()部分が取れる。


物質に近い存在であると同時、風に弱い性質を持つ彼女が翡翠の魔法を受けたくないが為に行動した結果がコレ。

地に落ちた兜を「あ、取れちゃった」と拾い上げる姿を見たルルがギャーー!?と絶叫し、梓はまん丸お目々。

残るほとんどが呆れ、壁が解除されたを機に魔法を霧散させた翡翠もそれは然りだった。


因みに、ゴッドブレスは指定した座標を起点に全方位から尋常ならざる風圧が押し寄せ、押し潰したり()り潰す魔法。

基本は半径1キロだが、極狭い範囲内での展開も可能。(翡翠がやろうとしたのもそれ)




「ルル、大丈夫?」


「ああ。アタイとした事が、鎧に引っ張られ過ぎちまったよ。不甲斐ないったらないねぇ…。」


「釈然としないのは私の方なんだけど…。」


「鏡で自分の姿を見てから言っとくれ。」


「もう何百回と見てる…その度に絶望の繰り返し…。」


「なんてこったい…なぁ、凛。ホントに精霊?にしてはちとばかり俗すぎやしないかい?」


「あー、うん。まぁ、精霊で合ってるよ、一応。」


「ふふーん。しかも私は『高位』精霊なの。分かったら私を(あが)め…って、ちょっと舐めないで!今は説明中…だから止めろっつってんでしょ!?」


鎧=人との先入観から、失態を犯したルル。

複雑な顔付きの彼女を凛が慰め(?)、鎧型精霊はテンションを急激に上げて得意げな様子に。


ただ言い終えるより早くティラノサウルスが顔を近付け、彼女の臭いをふんふん嗅いだと思ったらペロペロ舐め始める。

困惑した鎧型精霊がそちらの方を向き、堪らず叫んでいた。しかも時間差で2回。


「…ねぇお兄ちゃん。」


「ん?」


「あの精霊は土に関するからって名目で、ここへ来た訳でしょ。」


「そうだね。」


「(ジュエルフルーツの育成が忙しく、代わりに連れ帰れば)楓ちゃん喜ぶかなぁって最初は思ったんだけど…やっぱ帰らない?成果は十分だし、後は元凶を片付ければ良い様な気も…。」


「あの精霊さんは?」


「置いてく。ティラノサウルスと黒いワンちゃん(ブラッディベルゼルガ)がいれば事足りるでしょ。」


「あー…。」


等と、凛&翡翠が微妙な表情で会話。


その間、ティラノサウルスにペロペロペロペロ舐められ続ける鎧型精霊。

「もう、いい加減に。貴方達からも、止めるよう伝…え?」と(すが)る様にして2人を見るも、向けられる何とも言えない様相に面食らう。




「梓、ティラノサウルスさんをお願い。」


「クルルックー(分かったのです)!」


「…さて、話が出来る状況になりましたね。」


「ええ、そうね。では改めて━━━」


「その前に2点、宜しいでしょうか。」


仕切り直しを図ろうとする鎧型精霊の言葉を遮り、主導権を握る凛に彼女が「な、何かしら…」とたじろぐ。


「地盤の崩落、大量の魔物、スキル越しとは言え強者同士での争い…これら全てに関わってますね?」


「…どうしてそう思ったの?」


「痕跡ですね。正確には魔力の残滓、残り香みたいなのが何箇所かあったんですよ。貴方のね。」


3つ目は直接手を下したとかではないだろうが、彼女が何かしらで関わったのは明らか。

その関わったと言うのが━━━


「…くしゃみよ。」


「え?くしゃみ?くしゃみってあの?」


「ええそうよ!精霊なのにくしゃみ?何で?どうやって?とか思ったでしょ!?私だって分かんないわよ、急にムズムズって来たんだもの!」


まさかの(くしゃみ)だった模様。


鼻も顔も呼吸器官もないのに不思議と。

しかも不意打ち+意地でも止めるが為に我慢したのも相まって「へっ…が…ばひょぉぉ!!」と(はなひ)った彼女。


「その反動で封印解けちゃったりして、色々台なしよ…。」


ティラノサウルスもウォーヴォルフも、岩の壁に押し込む形で眠らせたのは彼女。

ただ腐っても高位精霊。

更に、無理をしてでも止めようとした弾みで力が入り、(あまつさ)え軽く飛び上がるとのオマケ付き。

その余波で地響き、及び封印に綻びが生じ、今に至る。


要は、一連の事象を引き起こした張本人に該当。

尚、嚔については未だ不明との事。




「で、2点目ですが。」


「唐突に始まるのね。」


「話が進みませんから…転生、或いは転移者ですね?」


「根拠を聞いても?」


「勘です。後は特有の空気…雰囲気とでも言いましょうか、を纏っていたので。何より、先程ルルも述べましたが精霊にしては俗っぽいなと。」


「ちょっと待って、さっきも思ったけど俗っぽいって何!?」


「…今回の場合、人に近い感性との意味合いですね。」


罪人にブラッドロード公爵家の者達。

前者は文字通り罪を犯した者を指す言葉なのでまだしも、後者は完全にとばっちり。


他所様に多大な迷惑を掛けたにも関わらず、精霊に詫びる気は一切感じられない。

こう言うところなんだよなぁ…と皆から思われているのに気付かないまま、平然とした態度を取る彼女の皮肉も実は込められている。


そうとは知らない精霊はしれっと付かれた嘘に「そうなのね」と騙され、「ん?」と何かに気付いた仕草をする。


「貴方達って、他にも精霊の知り合いがいたりする?」


凛が漏らした、精霊にしてはとの言葉。

余程印象に残ったのか、精霊からの質問返し。


「うん。貴方みたく、高位だった炎と氷の精霊がね。」


「だった…?」


「大精霊に進化したんだよ。お兄ちゃんが名前を付けた影響でねー。」


「だっ、だだだだ大精霊!?…あ、あのー、それじゃ私にも名前を付けて貰えたり…?」


「「あー、ごめんだけどパスで。」」


「なんでよーーーー!?」


精霊の若干オーバーとも取れるリアクションに翡翠、それと凛が声を揃えて拒否。


彼女にとって、大精霊は世界中でも数える程しかいないエリート中のエリート。

超エリートだ。

そんな頂になれるかも知れないとの淡い期待は抱いた瞬間木っ端微塵に砕け、体全体でのツッコミと相成った。


先程までの弱かったり、ふんぞり返った態度(虚勢とも言う)から一転。

いきなり媚び始めた彼女に凛が苦笑い、若しくは若干怒りの表情で翡翠が否を突き付け続け、やがてションボリ。


「この部屋に来てから改めて思ったんだけど…貴方、自分に甘い性格でしょ?」


「(ギクッ)…ど、どうしてそう思うのかな?」


追い打ちを掛けるが如く齎された翡翠の指摘に、鎧型精霊が目に見えて狼狽える。


「(オーバ山の)入口から少し進んだ辺りまでは、人の手で掘り続けて今の状態になったんだと分かった…けど、途中から違っている風に見えたんだよね━━━ここみたいに。」


「かなり昔に封鎖されたであろう場所も、魔力の波長が貴方のものだと物語ってるんですよ。つまり、一連の事象に関係してるとしか考えられない。」


「魔物の中に、昔の人が使ってたのかな?ってつるはしやスコップみたいな物を持つ個体がいたのは軽くビックリだったけど…そこから、多分貴方は物凄く面倒臭がりな性格で、周りがどうなろうと構わない。反対に、自分へ対してはかなり甘いんだろうなって考えに行き着いたの。」


「だからこの部屋に来た時、僕達は声を掛けられるまで動かなかった…いえ、動こうとはしなかったと言えば良いですかね。貴方を見極める為に。」


「そんな…。」


2人のダメ出しに崩れ落ちる上位精霊。

その様な状況下でもティラノサウルスが彼女の元を訪れ、やはり舐めるものだから失笑が零れたりしたのはさて置き。


凛と翡翠の言う通り、ここへ至るまで錆びてボロボロになったつるはし等を所持する魔物と何回か遭遇。

凛達はその風化された道具を見、オーバ山が利用されているのは極浅い部分。

至る箇所に鉱床や鉱脈があるのに、久しく手が入っていないと思う要因にもなったり。




「じゃあ、この辺で…。」


「待って、人と話すのは久し振りなんだから終わらせないで。お願いだからぁ…。」


寂しかっただけなのぉ…的な始まりから(誰も頼んでないのに)語り出す鎧型精霊。

彼女によると、元日本人で前世の名前は鎧月(よろいづき) 撓子(とうこ)

不屈不撓、何者にも負けない様にと願いを込めて付けられたのだそう。


実際は名前負けしまくりで、根暗・干物を地でいくまでに成長。

お世辞にも成績が良好とは言えず、ブラック企業に勤めてしまった挙げ句、過労死。


今から700年程前にオーバ山の東の位置で生まれたのだが、(サラマンダー以上に)面倒臭がり&ビビりな性格。

転生した?ヒャッホー!気分なのは最初だけ。

本人にとって強力だと思える個体がそこかしこにおり、誕生時の低位()精霊から魔銀級の高位()精霊へと進化するまでに1年近く掛かった。(生来のヘタレが加味された結果とも)


どうにかこうにか生き繋ぎ、拠点をオーバ山内部へ移動後100年以上が経過したある夜更け。

入口付近の次にあるエリアを、独断で封鎖。

魔素の流出を抑え、徐々に満ちていくのを実感しつつ岩の壁の内側に引き込もってのんびり過ごすと言う。

かなり自堕落(引きニート)な日々を送って来たとの事。


そして思惑通り、魔素濃度上昇に伴って強くはなれた。

ただそれに比例し、高いレベルの魔物が出現するとの点は念頭になかったらしい。


それまで、出現する魔物は金級がせいぜいだったオーバが様変わり。

ちょっと強くて魔銀級、たまに黒鉄級が生まれる様になり、それらが成長してバロメッツやクリフォト等の強個体へ。(直接神金級が現れる事も年に数回)


そしてある時、アルバートサウルスの1体がティラノサウルスへ進化。

土属性同士だからか、将又別な理由でかは不明だが精霊の匂いを嗅ぎ取り、彼女の隠れ蓑である壁を前足でカリカリ。

それを機に昼夜問わず壁の破壊と再生を繰り返し、ブチ切れた彼女がティラノサウルスを埋める形で封印。

余波で迷い込んだウォーヴォルフの前身、ウェアウルフも壁の中へ収められたとの流れに。




「…まぁでも、高位精霊。それも力ある存在は貴重と言えば貴重。これからは心を改め、真面目に頑張るって言うのであれば━━━」


「頑張る!私超ーーー頑張るから大精霊にして!」


社畜舐めんな、と鎧型精霊。

もとい撓子の(かぶ)り付かんばかりの主張に、全員が「早っ、と言うか必死」と内心ツッコミ。


「分かった。良かったら君も一緒に来るかい?」


「グルゥ!」


『(付いて行くそうなのです。後、この子は女の子みたいなのです。)』


『(あ、そうなんだ…それじゃ、君はどうする?)』


ティラノサウルス、梓の順で見た凛が黒い巨狼…ブラッディベルゼルガに焦点を定める。

返事こそないものの、「お前が決めろ」と言わんばかりに彼をじっと見据え、「否定しないって事は、一先ず了承と取るよ?」と告げるや尻尾を1振り。


素直じゃないとして軽く笑いが起きる場面もあったものの、ブラッディベルゼルガの処遇も決まったとして残る問題━━━ウォーヴォルフに視線が集中した直後。

隣の部屋、且つ魔素点のある場所から伸びる黒い魔の手。


見覚えのあるそれら十数がウォーヴォルフを目指し、次々と纏わり付くのだった。

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