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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
王国の街サルーンとの交流

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24話

今回は少し短めです。(いずれはこの位の文量になりますが)

「そうか…ならば問おう。力が欲しいか?」


凛の声は普段高めだが、今までに聞いた事がない程に低く、しかも内容が少々アレ(・・)なものだった。


「ぶふっ!」


予想だにしなかった進行ぶりに、被弾した者が1名。


「美羽様!?どうされたのですか!?」


美羽だった。


咄嗟(とっさ)の事に耐え切れなくなった彼女は顔を勢い良く右に向けた挙げ句、盛大に吹き出してしまう。

精神的余裕がほとんどなく、心配する紅葉へ「だ、大丈夫…」と返すのが精一杯。


「力、っすか。さっきは付いて行く…なんて言ったっすが、実は自分が強くなる道のり(ビジョン)が見えなかったりするんすよね…。」


しかしそんな美羽の状態に女性は気付いておらず、ふと軽くなった手で反対の肘をギュッと握り、困った表情を浮かべるのみ。


「あの…美羽様。お体が優れないのでしたら少し休憩でも…。」


「ごめ…!はー、うん。大丈━━━」


紅葉の気遣いにより、幾らか気分を落ち着かせるのに成功した美羽。

空を見上げ、気合いを入れるのも兼ねて頷き、笑顔で応えようとする。


「…もう1度だけ問おう。力が…欲しいか?」


「ゔゔゔん"!」


「…!」


だが、まさかの。

しかも主の不意打ち(裏切り)により、それどころではなくなった模様。


…もう1度だけ問おう、じゃないよ!

何言っちゃってるのマスター!

雰囲気出してる場合じゃないでしょ!ホントに!

そう声を大にして主張したいものの、突如押し寄せた特大の笑いの波のせいでそれは(かな)わない。


突然の(エンジン音を思わせる)(うな)る様なダミ声で紅葉を驚かせたのは申し訳なく思うも、一切の余裕がなくなったのも事実。

違うの、とか許して、との弁明すら困難を極め、下を向いてぷるぷる体を震わせるしか出来ないでいる。


「み、美羽様…?」


も、もう無理…と歩き始め、恐る恐るながら美羽の後ろを付いて行く紅葉。

やはり問題があるのでは?と声を掛ける位には心配で(たま)らないのだろう。




「…欲しいっす。」


女性がポツリと呟く。


「自分は…自分は!もう誰かに馬鹿にされたり、怯えるのはもう嫌なんす!力を得る為なら、何だろうがやってやるっすよ!!」


顔を上げ、強い意志を瞳に宿す彼女。

右手で握り拳を作り、反対の手で前方を振り払う仕草はやる気に満ち満ちている。


「よくぞ言った!ならばくれてやろ━━━」


両手を掲げ、尊大な口調の凛が仕上げに入…


「あーーーっはっはっはっはっ!!」


れなかった。

美羽の盛大な笑い声により、雰囲気も何もかも()き消されてしまったからだ。


少々(?)ロールプレイ(なりきり)が過ぎたかと(今更ながら)「う"っ」と(ども)り、複雑な情態に。


「…美羽ーっ!ちょっと笑い過ぎー!!これでも僕は本気でやってるんだよ!!」


半ば叱責する様にして━━━又は八つ当たりとも━━━美羽がいるであろう方向を向く。


すると、笑いながら木をバッシバッシ叩く美羽。

並びに、不安そうな顔で彼女の隣に立ち、右手を背中に添える紅葉がとの光景が見て取れた。




それから少し経ち、一頻(ひとしき)り笑った事で満足したのだろう。

左手で両目の端に溜まった涙を拭いつつ、美羽が紅葉と共に戻って来た。


「はー…ゴメンゴメン。マスターがあまりにも可笑(おか)しくて、我慢どころじゃなかったんだよ。」


「だからってさぁ…。」


見事に話の腰を折られ、不満に感じはしたものの、凛も自身に問題がとの自覚はあるらしい。


「はぁ…もう良いよ。調子に乗った僕も悪かったし…。」


嘆息し、諦めた様子で女性の方を見やる。


すると、鳩が豆鉄砲を食ったとでも表現すれば良いのか。

事態に付いていけず、きょとんとした顔の彼女と視線が交錯(こうさく)


「あ、ごめん。驚かせちゃったね。」


「いえ、自分は大丈夫っす。さっきのは…。」


「うん。君を強くするのは本当だから安心して。ただよく考えたら、皆に紹介してからの方が良いんじゃないかって思えて来たんだよね。話をする前に寝ちゃったらあまり意味ないだろうし…。」


「? 寝ちゃったら…?美羽様と紅葉様以外にもお仲間がいるんすね。なんか色々と申し訳ないっす…。」


「いや、僕の方こそ。さっきの(魔王プレイ)は自分でも思った以上に入り込んでしまったと言うか。あのままだと、多分勢いで名付けまでして━━━」


「名付け!?自分、名前が貰えるんっすか!?名前持ち(ネームドモンスター)になれるんっすかぁ!?」


やや申し訳なさげな態度から一転。(凛は尚も続いているが)

名付けと聞いた女性が一気に興奮し、凛のすぐすぐ目の前の位置にまで身を乗り出した。


彼女の目は爛々(らんらん)と見開かれ、鼻息も荒い。

控えめに言って怖く、凛は慌てて肩に両手をやり、彼女を押し退ける。


「ちょっ、近い!近いよ!」


「あ、ごめんなさいっす。嬉しくてつい…。」


(あ、恥ずかしがるポイントってそこなんだ。)


凛の心裡を他所に、女性は恥じらう仕草と共に距離を置いた。


因みに、美羽と紅葉。

一時はくっつきそうな位に近かった凛達に両手を口元にやる等して驚き、今は落ち着いたのか双方苦笑いを浮かべている。




「と言う訳で、名付けは家に帰ってからだね。」


「そう…っすか…。」


凛の説明を受け、女性はあからさまにがっかりした表情に。

これまでの境遇から名付けに対する想いが芽生え、上げて落とされた気分なのかも知れない。


「…?やっぱり今から…。」


そんな女性の(こいねが)う様子を感じ取ったらしく、『この場で名付けを行うか』との提案を凛は持ち掛けようとする。


「あ、いえ。大丈夫っす!」


これを彼女は拒否。


「いやー、主様から名前が貰えるなんて楽しみ…あっ!」


「「「…あ。」」」


自分のワガママで主を困らせたくない、との想いを誤魔化しながら歩み始め…思いっ切りズッコケた。

しかも顔面から。


人間の姿になって浅く、まだ1人で上手く歩く事(二足歩行)が出来ない女性。

自転車の補助輪的な役割で誰かしらが手を繋ぐ必要がある+初めての早歩きの為にすぐバランスを崩してしまった。


しかし、彼女は曲がりなりにもドラゴン。

顔や体のあちこちに汚れが付いているものの、体自体は全くの無傷だった。


「えへへ、失敗しちゃったっす。」


正座の状態で起き上がり、微苦笑で右手を後頭部にやる姿はとても印象的だった。(色んな意味で)




ややあって、美羽と紅葉がそれぞれ女性の手を取り、彼女を立たせた。


凛は無限収納から取り出したハンカチの様な物で女性の顔を(ぬぐ)い、2人は女性の体を手で払う等して付いた汚れ等を落とす。

作業を終え、凛が気を付けて歩く様にと告げ、美羽と紅葉が同意する形で首肯。

女性は相槌を打つ(かたわ)ら、上手く誤魔化せて良かったと安堵したりする。((もっと)も、しっかり3人全員にバレているが)


そして再び移動を開始。

ついでに女性が歩く練習も兼ねて進む事にし、彼女の腕に凛と美羽がそれぞれ手を添え、紅葉が後ろに立つとの配置に。


女性はよたよた歩きの為か、何度も危ない場面に遭遇。

その度に凛達がフォローに回り、転ぶなり難を逃れるなりしては再び歩き出すを繰り返した。




サルーンを出てから30分後。

1行はようやく屋敷へと辿り着いた。


「ただいまー。」


凛が先頭で玄関に入るや、リビングから火燐がやって来た。


「おう凛お帰り…って誰だそいつ?」


「新しい仲間だよ。因みに少し前まではワイバーンで、故あって人間の姿になって貰ったんだ。」


「宜しくお願いするっす。」


見知らぬ女性の登場に(いぶか)しむ彼女。

凛の左手で隣を指し示しながらの紹介に(あわ)せ、女性が頭を下げる。


「ふーん、宜しく。つか凛、人間の姿に…ってお前。また何かやらかしたのか?」


「僕じゃなくてナビなんだよね…まぁ良いか。さっき(・・・)戦ったから分かると思うけど、ワイバーンって炎属性でしょ?だからこの子は火燐の下に付いて貰おうと思ってね。」


「んだよ、バレてやがんのか。折角驚かせようと思ったのに…つまんねぇ。」


「え?ここにも同胞(どうほう)達来たんすか?」


「あぁ、4〜50位?数だけはやたら多くて面倒ではあったな。」


「数だけはって…自分達はそこまで多くなかったっすし、別な集落っすかねぇ。」


「さてな。ワイバーンの集落なんてのは興味ねぇし…それに、向かって来るんであれば叩き潰すまでだ。」


「お、おぅ…なんと言うか、凄そうなお方っすね…。」


「自分には関係ないみたいな話し方してるけど、これから大体の事は彼女に教えて貰うんだよ?」


「えぇ…?」


「あ?なんだ?オレじゃ不服ってか?」


納得いかなさそうな女性を不満だと捉えたのか、ズイッと迫る火燐。


「と、とんでもないっす…。(ちょ、ちょっと。めちゃくちゃ怖いんすけど…)」


彼女の顔が間近にまで来るとの圧に耐え兼ね、女性がぴえ…と涙。

助けを求めるようにして凛の方向を向く。


視線の先、凛と(いつの間に動いたのか)火燐が楽しげに会話。

話題は先程のワイバーンについてで、弾ませる部分があった模様。


(あ、あれぇー?この火燐って方、主様と話してる時は楽しそうっす。どっちが本当なんすか?)


そんな2人を見た女性が混乱。

意識も思考もそちらへ持っていかれ、美羽と紅葉から笑われている事に全く気付けなかった。




数分後、はっと我に返った凛が口火を切る。


「…おっと。ここで立ち話ばかりも困るよね。雫も覗いているみたいだし、ひとまず皆でリビングに向かおっか。」


説明しながら、凛はドアの隙間からこちらの様子を窺う雫に視線を向ける。

いつも以上にジト目の彼女は、凛と目線が合うやササッと中に戻ったみたいだが。


「そうだな。」


「はーい。」

「はい。」

「はいっす。」


「あ、でも君はお風呂が先かな。美羽、悪いけどお願いしても良い?」


「はーい、分かったー♪」


「?」


凛に促されるまま、美羽は女性の背中を押す形で浴室へ直行。


「…んじゃ、さっきからずっとしがみ付いてるソイツ(・・・)の事も、リビングで紹介してくれるんだな?」


2人を見送るや、火燐は凛の腰部分に焦点をズラす。


「………。」


そこには、凛に抱き着く1体のゴブリンがいたのだった。

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