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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
プロローグ

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8話

その後、里香は凛達を大部屋の中心へ招き、先に待っていた瑠璃と合流。

彼女との再会を喜びつつ、親交も深めた。(特に凛が)


「それでウェル爺、試験どうだった?」


「無論、合格ですぞ。」


「流石凛ちゃんね、おめでと。」


「ありがとう、お姉ちゃん。」


ややあって、マクスウェル、それと姉から満面の笑みを向けられる凛。

お礼を述べつつ、満更でもなさそうにする。


「うんうん。これで凛ちゃんも外へ出れる様になった訳か。だったら…。」


パチン


「…心置きなくこの子達の紹介も出来るわね。」


満足げに頷いた里香が指を鳴らすのを合図に、魔法陣が出現。

次の瞬間、魔法陣の上に見知らぬ人々が立っていた。


「え…?」


現れたのは8名ではあるのだが、前の4名はフード付きのくすんだ灰色のローブを着用。

その後ろにいる残り4名は何も身に着けてはおらず、左から順に筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)な男性。

垂れ目で、青く長い三つ編みのおっとりした女性。

緑髪を2本のお下げにした、活発そうな少女。

とんがり帽子を被り、立派な白髭を(たくわ)えたお爺さん。


より詳細に語るなら、地面から浮き、上半身を(かたど)った燃え盛る赤い炎。

同じく宙に浮き、体全体が水分で出来ているのか透明な水色をした人魚。

アゲハ蝶に似た羽を背中に生やし、(凛から見て)目線の高さで(とど)まっていたかと思えば元気に飛び回る。

白○姫の小人を思わせる風貌(ふうぼう)()つ見上げる形でこちらを(うかが)っている…との(ただ)し書きが付くが。


身長も180センチ、160センチ、30センチ、50センチと見事にバラバラ。

凛と美羽が彼らを見て固まるのも仕方ないと言える。




そんな後ろ4人(?)とは異なり、前にいるローブ姿の4人はいずれもフードを下ろした少女の様だった。


1番左にいる少女は、年の頃が18歳位…だろうか。

女性とも取れる彼女の身長は173センチとやや大きく、燃える様な赤い髪色を背中まで伸ばし、揺らめく炎みたいな髪型。

赤く、ギラついた目なのが印象的だ。


その隣にいる少女は、10〜12歳程度の様に見える。或いは、もっと幼いとも。

身長146センチと小柄で、少し薄めの水色の髪を、真っ直ぐショートボブにした髪型。

瞳は透き通った空色(そらいろ)

ただ半分程しか開いておらず、眠そうに感じられるが特徴。


その隣にいる少女は、恐らく17歳頃。

身長158センチで、綺麗なエメラルドグリーンの髪を腰まで真っ直ぐ伸ばし、それを白いリボンでポニーテールにして纏めている。

瞳は濃いめの黄緑色、パッチリと開いている事から明るい性格そうなのが伝わって来る。


1番右にいる少女は、緑髪の子と同じか1つ下位。

身長161センチで、やや薄茶色の髪色をミディアムショートに真っ直ぐ伸ばした髪型。

凛同様、日本人に良くある茶色がかった黒い瞳を持ち、下がった眉尻から少し(はかな)げに見える。




「凛ちゃん、美羽ちゃん。あの子達の紹介をするわね。まずは後ろにいる4体で、左から…。」


「我はイフリート。」


炎そのものであるイフリートは腕組みをし、メラメラと体を揺らめかせ、


「私はウンディーネ♪」


体が水分で構成されたウンディーネが、左目を閉じる形でウインク。


「ボクはシルフだよーっ!」


緑髪のお下げっ子ことシルフはその場で一回転し、


「僕はノーム…。」


小人の見た目をしたノームがやあ、と右手を挙げる。


「イフリート達はウェル爺の部下で、四大精霊とも呼ばれているわ。それぞれ火・水・風・土を司る、『大精霊』とのポジションね。ウェル爺に至っては、彼らを統べる『精霊王』なんて言われたりするわね。」


「マクスウェル様が精霊王…。」


今更ながら凄い存在だと知り、凛は感動した表情でマクスウェルを見やる。

当の本人は褒められて嬉しいのか、ほっほっほっと朗らかに笑う。


「ええ。私はウェル爺なんて呼んでるけど、本当はとてもとても偉い存在なのよ?」


「ほ…?そ、創造神様。儂の事は…。」


そこから一転し、慌てた様子で里香の言葉を(さえぎ)ろうとする。

普段褒められる事がなく、また皆に見られているが故に恥ずかしくなっての行動なのだろう。


「あら、本当の話じゃない。それによく私の手伝いをしてくれるし、とても感謝しているのよ?ウェル爺、いつもありがとう。」


「む、むぅ…創造神様のそう言うところ、本当にズルいのじゃ…。」


「あら、褒め言葉として受け取っておくわね♪」


渋い顔のマクスウェルとは対照的に、里香がコロコロと笑う。

それを合図に、マクスウェルと1番背の高い赤髪の少女。

それと最も低い水色髪の少女を除く全員から笑いが起きた。




「あの…。」


一向に話が進まないと思ったのか。

或いはつまらなく感じたのかも知れない。(畏れ多くて実際には口に出せないとの注釈が付くが)


ともあれ、赤髪の少女が1歩前に進み、何か言いたそうにしている事に里香が気付いた。


「あ、ごめんなさい。残りの子達の紹介に移らせて貰うわね。」


「あ、うん。分かった。」


「前に凛ちゃんと会った後、私はイフリート達のところへ向かったの。そこで生まれたのが彼女達。それからあの子達はあの子達で1ヶ月間、イフリート達と訓練していたって訳。」


「へー…ん?生まれた?」


「私とイフリート達の魔力…つまり美羽ちゃんみたいな感じね。タイミング的に、妹との扱いになるのかしら?」


ローブ姿の少女達は、里香がイフリート達とで魔力を半分ずつ出し合い、それが形作られて出来た存在。

合点がいった凛はやっぱり…と呟き、美羽はわーーい、妹がこんなに沢山ー♪と喜びを全身で表現する。


「それで、この子達は凛ちゃんの部下って扱いにして、貴方に託そうと思うの。」


「…え?」


「そんな訳だから、名前を考えて欲しいのよ。今、ここで。」


「えっ、今!?」


凛はどこかで聞いた気もするセリフに若干の引っ掛かりを覚え、しかし時間的余裕がない事に内心焦りを覚える。


(…なんか、すごく見られてる。部下って形で仲間になるのはありがたいんだけど、前もって伝えて欲しかったかなぁ…。)


視線を里香から少女達へ移せば、4人中4人全員がこちらをじーーーっと凝視。

それに圧倒されつつ、凛は何か良さげな名前はないかと必死に模索。


「えーーー…っと、赤い髪の子が火燐。水色の子は雫。緑の子は翡翠。茶色の子は楓…で、どう、かな?」


恐る恐る告げた内容に少女達は互いを見合い、目を(つぶ)る等する。

これに名付けた側は気が気でなく、内心で「だ、ダメだったか?」とドキドキ。


「…おう。オレは良いと思うぜ!…じゃなかった、私は良いと思いますよ。」


「ん…私もそれで良い…です。」


「あたしも良いでーっす!」


「はい…私もそれでお願いします…。」


しかし赤髪の少女こと火燐がニヤリと笑い、雫は小さいながらもこくこくと首肯(しゅこう)

翡翠が元気良く右手を挙げ、会釈を交えての楓の答えに、凛は「良かった…」と安堵する。


「火燐、雫、翡翠、楓、それに美羽。大変だとは思いますが、これから宜しくお願いします。」


凛は改めて火燐達に美羽。

それと四大精霊へ向き直り、深くお辞儀。

程なくして、美羽達5人から「よろしくお願いします」と返された。


「うむ。火燐を宜しく頼むぞ。」


「雫、凛様の言う事をきちんと守るのですよ?」


「翡翠ちゃん、元気に頑張るんだよー!」


「楓、ファイト…。」


イフリート達はイフリート達で(うなず)きを交えたりして火燐達へ激励し、彼女らはそれに応えていった。




「取り敢えず、ここでやる事は…あ、そうだった…はい、凛ちゃん。」


よいしょと言って里香が無限収納から取り出したのは、50センチ四方はある大きな金の塊。

その金塊は、心做(こころな)しかほんのり赤みを帯びている様にも見える。


「ちょちょちょ、いきなり何!?って…え?全然重くない?見た目金っぽいのに?」


それをいきなり渡された凛はパニック。

受け取り時に軽くよろけこそしたものの、思っていたよりもずっと軽かった為、更に困惑度が増した。


「一応は魔法金属と呼ばれてるものだからね。普通の金よりずっと軽いわよ。」


いくら軽いとは言え、これだけの質量だ。

一般の人の場合、普通に腰をやってしまいそうな位には重い。


凛は「へー」と平気そうな顔をしていたが、楽に持てる=相応のスペックを保有。


「魔法金属?」


彼は目の前の金属に夢中で気付いていないみたいだが、1ヶ月間鍛えられた成果が(余裕)である事に繋がる。


「そ。」


「それに金って事は…オリハルコンとか?」


「オリハルコンねー。あれも金色に光ってはいるんだけど、厳密には真鍮(しんちゅう)…つまり銅が変化したものなのよ。」


「そうだったんだ…ならこれは?」


「ヒヒイロカネ。」


ヒヒイロカネ。

緋緋色金とも表記され、赤みを帯びているのもある意味納得の代物でもある。


「ヒヒイロカネ!?これもリルアースにあるの!?」


「どうかしらねぇ…探せばあるかもだけど、少なくとも私は知らないわね。」


「なら一体どこで…まさか。」


ある考えへと至ったのか、凛が目を見開いた。


「凛ちゃんの想像通り、日本よ。いつか使うと思って、コツコツ集めていたの。」


「まさか日本にあるなんて…全然知らなかった。」


「それはそうでしょう。でもね、凛ちゃん。良く考えてみて頂戴?偶然とは言え、魔法を発動させる事が出来た…つまり地球にも一応は魔素自体は存在する。なら魔法金属も、って思うのが妥当でしょう?」


「確かに、改めて考えるとそうなのかも…でもどうやって?」


「それは勿論パクっ…拝借させて貰ったに決まってるじゃない。」


(今絶対パクったって言おうとした。)


凛の疑わしげな視線を前に、里香は目を閉じ、文字通り(情報を)シャットアウト。

その攻防は数秒間続き、先に折れた里香が話を進めるとの意味合いでコホンと咳払い。


「ともあれ、その(ヒヒイロカネ)は凛ちゃんの好きに使ってくれて良いから。」


「え、でも…。」


「大丈夫よ。既に新しいのを用意する形で戻した訳だし…これで以上ね。」


「何と言うか、最後は驚きの連続だったんだけど。でもまぁ、あっという間の1ヶ月だったなぁ…。」


話は終わりとばかりに里香が締め、凛が苦笑い。


「僕達、これから世界を回らなきゃか…当然だけど、向こうとは全然違うんだよね。」


凛が地球にいた時の事を思い返す。


彼こと八月朔日一家は(里香が得た資金で)年に数回家族旅行を行い、日本だけでなく世界中を訪問。

有名どころは粗方(あらかた)押さえてあり、同じ世界を回るにしてもすんなりいかないだろうなぁとの考えに至る。


「そうね。けど、凛ちゃんが今後強くなる。そして死滅の森の問題を解決した場合、そこに凛ちゃんの国を興して貰っても構わないから。」


「え…?(死滅の森って、日本が幾つも入る様な広さなんだよね?それを解決なんて、僕達だけじゃまず不可能だと思うんだけど…。)」


「あら、不思議そうな顔ね?私は凛ちゃんならやれると思ってるわよ。その時は、瑠璃ちゃんと一緒に住まわせて貰うから。」


「凛様、宜しくお願いします。」


「えぇ…。(あれー?既に確定事項なの…?)」


里香が笑顔で告げ、それに便乗した瑠璃がお辞儀。

いきなり無理難題を突き付けられた凛は困惑するしかなかった。


「まぁ半分()冗談として…。」


(((((もう半分は本気なんだ…。)))))


「凛ちゃんは世界最強と言っても過言じゃないウェル爺から合格を貰えた訳だし、充分にやっていけると思うわ。」


里香の言葉に釣られ、視線がマクスウェルに集中。

その彼は平然を装ってはいたものの、良く見れば鼻がヒクヒクと微動。


嬉しさが隠し切れていないのが丸分かりだった。


「凛ちゃんは半人半神(デミゴッド)で、美羽ちゃんも少し位は下がるけど同じく半人半神。火燐ちゃん達4人は私とイフリート達から生まれた半人半精霊(デミスピリット)ってところかしらね。

生を受けて間もない子達ばかりとは言え、普通ならまずあり得ない、豪華なメンバーよねぇ。」


「確かに、改めて言われてみるとそうかも…。」


「あ、そうそう。その内、凛ちゃんを利用しようとする輩が出て来ると思うのよ。嫌だと思ったら、断ったり、突っぱねたりしてくれて全然良いからね。」


「うん、分かった。」


姉の毅然(きぜん)とした態度に、凛は冗談ではなく本気の助言(アドバイス)だと判断。

真っ直ぐ彼女を見()え、力強く頷いた。




「うんうん。凛ちゃん、ちょっとだけ美羽ちゃんを借りるわね?」


「? 分かった。」


かと思えば、何やら相談事の様子。


キョトンとする凛を他所(よそ)に、里香は美羽を手招き。

2人はそのまま少し離れた場所へと移動して行った。


(…美羽ちゃん。凛ちゃんって、色々な意味で凄かったでしょう?)


(あ、はい。ボクじゃ思い付かない手段だったりとか、美味しい料理が作れて凄いなぁって思いました。)


(そうなのよ。凛ちゃんの料理は美味しい…じゃなくて、違うのよ。凛ちゃんの力が強大過ぎて、お近付きになりたいって人が今後出て来ると思うの。王国や帝国、神聖国が良い例ね。)


(王国、帝国、神聖国…。)


(ええ。けど、例え王族や国の偉い立場にいる人でも、権力を振り(かざ)したり、強引に迫ろうとする事は許されない。何故なら、彼らは人。新たな神として加わる凛ちゃんとは『格』が違うのだから。

と言ってもまだ半分だし、来たばかりだから経験も浅い。それでも神には違いない訳だし、多少偉いだけの人が神を害するなんて(もっ)ての(ほか)。火燐ちゃん達へは既に伝えてるんだけど、そんなのが出て来たら最悪排除してもらって構わないから。)


(…過激なんですね。)


(いくら可愛いと言っても、他人は他人。どちらが大事かなんて比べるまでもないし、当然の処置よ…けど凛ちゃんは優しいから、人を傷付ける事を嫌がると思うのよねぇ。私が世界の管理で(ろく)に動けない以上、これからは貴方達に頼るしかないの…お願い出来るかしら?)


(分かりました!マスターの事は、ボク達が全力で守ります!)


(ふふっ、流石美羽ちゃん。話が早くて助かるわー。)


(えへへ…。)


しばらくして、小声での会話を終えた2人が戻って来た。


「…お姉ちゃん、2人で何を話してたの?」


「ふふっ、いくら凛ちゃんでも内容は話せないわ。美羽ちゃんと2人だけのひ・み・つ・なのよ。」


「それじゃ美羽━━━」


「ダメです!創造神様とのひ・み・つ・なのですよー♪」


「「ねー♪」」


「???」


凛が尋ねるも、2人して悪戯(いたずら)っぽい笑みを浮かべ、口元に人差し指を当ててはぐらかされるだけ。

益々訳が分からなくなるも、下手に踏み込んだせいで自ら地雷を踏む必要はないと考えを放棄。


一先(ひとま)ず追求を止め、分かったとだけ告げた。




「…時間ね。そろそろ皆を下へ送ろうと思うんだけど、忘れ物はない?」


「うん、大丈夫。」


「ボクもです!」


『大丈夫です。』


その答えを受け、里香が右手を動かそうとしたところで凛から待ったが掛かる。


「あっ、そうだった!お姉ちゃん、向こう(地球)より味が少し落ちちゃうけど、良く食べてたオムライスを渡しておくね。」


「やったー、ありがとーー!後でゆっくり食べさせて貰うわぁー!!」


サフランライス+デミグラスソースがふんだんに掛かったオムライスが余程嬉しかったのだろう。

里香は凛からオムライスを受け取るや否や皿ごと上に掲げ、白鳥の湖を思わせる舞いを披露。


『………。』


謎の踊りは5秒程続き、翡翠と楓は興味深そうに本人を。

火燐と雫の2人は、里香ではなくオムライスを(かぶ)り付く勢いで凝視。


マクスウェルに至っては、右手を額に当てながら「威厳もへったくれもないわい…」と天を仰ぎ、瑠璃と美羽は珍しいものでも見たような顔付きに。


「…そう言えば凛ちゃん。ポータル()を設置すれば、ここへ行き来出来る様になるわよ。」


その後、冷静さを取り戻した里香が再び咳払い。

先程の醜態はな(・・・・・・・)かった事にして(・・・・・・・)話を進められた。


「本当?あっちの世界よりもキッチンが使いやすかったし、設置してみようかな。お姉ちゃん、やり方を教えてくれる?」


「勿論よ。私達は普段、やる事があるからあまりここにはいないけど、それでも数ヶ月に1回位は集まる。その内、凛ちゃんと会うかも知れないわね。」


「そうなんだ。僕もちょくちょく顔を出すようにするよ。」


「ええ、お願い。ポータルは便利な移動手段だし、皆と一緒に行動出来るから役に立つわよ。それじゃ、使い方の説明をするわね。」


「分かった。あ、出来ればヒヒイロカネについても。」


「はいはい。そう言うと思ってメモを用意してる。」


「やたっ、流石お姉ちゃん。」


「もう、調子良いんだから。」


凛は里香と共に、少し離れた地点へと移動。

ポータルについて聞き、ヒヒイロカネの説明がされたメモを受け取る。


「無事に習得出来て良かったよ。」


「お疲れ様。ポータルは扱い的に最上級魔法よりも難しいんだけど…それをあっさりやってのけるなんて、流石凛ちゃんね。」


「ゲームとかで割とあったりするからね。それに、ナビのサポートのおかげってのもあるし。」


《恐悦至極》


「それもそうね…それじゃ皆、私の前に集まって頂戴。」


「分かった。」


『はい。』


凛達は里香からの指示に従い、彼女のすぐ前の位置に集まる。


「最後に凛ちゃん。私が招いておいて何だけど、管理者の立場を重く受け止めないで、責任を感じ過ぎないで。(しがらみ)(とら)われず、楽しく生きて欲しい…と言うのが私の願いよ。」


「うん、分かってる。マクスウェル様を見ていたら、こっちでもお姉ちゃんは優しいんだなってのがすぐに分かったし。」


「もう、ウェル爺ったら…。」


「ふふ。またね、お姉ちゃん。」


「ええ、しばらくしたらまた会いましょう…転移。」


里香は申し訳なさそうな表情から苦笑いへと変わり、最後は笑顔で凛達を送り出した。




「…行ってしまいましたな。」


マクスウェルがしみじみと呟く。


「ええ、そうね。私の都合で家族を巻き込むかも知れない。そう思って、2人の姉と凛ちゃんに私の力のほんの一部を渡していたんだけど…まさか巻き込んでしまうとはね。本当、凛ちゃんには申し訳なく思うわ。」


「フォルトゥーナ様…。」


フォルトゥーナとはリルアースになるよりも先。

厳密には地球へ転生する前の里香の名で、風貌も白神と黒神の生みの親なだけあってそちら寄り。

つまり西洋風の見た目だったりする。


「もう、またその名前で呼ぶ。昔ならいざ知らず、今はあ()子の姉なのよ?」


等と(のたま)う通り、里香は凛の姉。

クスクスと笑う彼女は、日本人特有の幼く見える目鼻立ちだ。


勿論今の彼女も悪くはないが、マクスウェル的には以前の方が好み。

至高にして孤高。

他を寄せ付けない絶対的な覇気を纏うフォルトゥーナを盲信していたとも。


「失礼した…ですがこればかりは仕方ありませぬ。2ヶ月前、死滅の森深層に現れた個体が、(かつ)ての侵略者の影響を受けているのかも知れないのですからな。しかも、成長速度も早いと来れば…。」


「誤魔化された気もするけど、まぁ良いわ。とは言え、私達だと森へは直接介入出来ないし、魔素の濃さの影響で精霊達も中層までしか行けない。シロちゃんを通じて転生者にスキルを渡したりしたけど、皆が皆程々で満足しちゃってるか、非業の死を遂げるかのどちらかしかないものねぇ。だからこうして最後の手段を用いざるを得なくなった…ままならないものね。」


「ですな。しかしどうにもなりますい。」


「全くよ。本当、どうしてこうなったんだか…。」


「では、我々も戻りましょうぞ。」


「ええ。」


複雑な表情で話を終えた里香とマクスウェル。

2人は異なる仕事を(こな)す為、それぞれ違う場所へと向かうのだった。

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