七十五話 初めての武器屋
元国王が王の間に戻ってくると、獲物を見つけた野獣のように元国王の元へとその場にいた全員が向かって行った。
「おい、武器屋の連中から聞いた話をさっさと話せ」
ゼランが急かす様に元国王に圧をかけると、元国王はなぜか申し訳なさそうな顔をしている。
その先の内容は誰でも容易に予想ができた。
「そ・・・それが・・・話ができませんでした・・・」
「はあ?お前は一体何しに行ったんだ!」
深々と頭を下げる元国王に、罵倒風に問い詰めるゼラン。
そのやり取りを目にしていたエルフミーラがゼランをなだめるように、
「まあまあ、とりあえずは話を聞いてみよう?ね?」
エルフミーラの通常スマイルのせいで、元国王を罵倒できなってしまったゼラン。
ゼランは一度冷静になって、元国王になぜそんな話になってしまったのか問いただした。
すると、元国王はゆっくりとその重い口を開いた。
「さ、最初はうまくいってたんです。国王の来店には多少なり驚いていましたが・・・」
そりゃそうだろう。
いきなり下町に国王が降臨されれば、誰だって驚く。
寧ろ、驚かない人間の方が珍しい。
まあ、もう国王ではないんだが。
「それで?なんでそんな無様な結果になったんだ?」
ゼランにとって元国王がどう思われようと関係ない。
なぜ情報を聞き出せなかったのかだけに興味を示していた。
その問いかけに対して、元国王はだんまりしている。
その態度に痺れを切らしたゼランは、元国王の襟を掴んで、
「おい!早く話せよ!こっちだって貴様に構ってる時間はねーんだ!」
「ゼラン!!!」
怒り狂うゼランにジェールナが、すかさず二人の間に割り込む。
そして解放された元国王は、涙目になりながらゼランに向かって告げた。
「国王ではないわしでは相手にされなかったんだ。ただそれだけなんだ」
元国王の声が部屋全体に響き渡る。
まるで、演劇で使われるホールのように。
その真実を突きつけられたゼランは溜息しか出なかった。
そしてゼランはグウィルドに指示を出す。
「グウィルド、こいつを牢屋にぶち込んでおけ」
「了解」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!せめてもう一度、もう一度だけチャンスを!」
「こんな簡単なお遣いもできないようじゃ話にならん。さっさと消え失せろ」
「待ってください!」
「ほら、行きますよ」
元国王の願いはゼランに届くことなく、グウィルドによって強制的に退出させられる。
正直、ここまでポンコツだとはゼランは思っていなかった。
国王という地位がありながら今まで一体何をしてきたのか。
元国王の無能さに悪口しか出てこない。
だが、いつまでも元国王の悪口を付いていても何も始まらない。
とりあえずは、自身の足で武器屋に行く他なかった。
「仕方がないか・・・ヘルバトス、俺と一緒に武器屋に行くぞ」
「あ、はい!」
ゼランがヘルバトスを同伴させる理由。
それは、戦う術を持っていなかったからだ。
この機会にヘルバトスに武器を持たせられれば戦闘訓練ができるということになる。
ゼランの思考を汲み取ったかのようにヘルバトスは迷うことなくゼランについて行く。
「悪い、留守の間頼むわ」
「「「了解でーす」」」
「ヘルにい、いってらっしゃい!」
女性陣の言葉とメイシアの言葉を背に、ゼランとヘルバトスは武器屋へと向かうべく王の間を後にした。
「えっと、ここらへんか?」
ゼランは記憶していた武器屋の場所を頼りに、武器屋を探し回っていった。
「あ、あそこじゃないですか?」
あちこちに視線を移すゼランに、ヘルバトスはある場所を指さした。
ゼランはヘルバトスが指さす方向に視線を移すと、そこには工場らしきものが建立していた。
その工場から煙突のようなものから黒煙が、天高くまで舞い上がっている。
暗黒騎士であるゼランと奴隷であったヘルバトスは武器屋というものがどんなものかを知らない。
武器を売っている所としか認知していなかったのだ。
だから、その建物に迷わず入っていった。
すると中に広がっていた光景は、とても武器を売っている場所とは到底思えなかった。
だが、知識不足の二人はその光景に違和感を多少なり感じるも、あっさり切り捨てて真ん中に正座で居座る老婆の元へと向かって行った。
「あの、ちょっといいですか?」
「ええ?何かね?」
ゼランの問いかけに、とても気持ちがよい笑顔で出迎える老婆。
そんな老婆にゼランはさっそく納品書の確認を取った。
「ミラボレアの尻尾の受注内容の件なんですけど・・・」
「ん?ナポリタン?」
ミラボレアがなぜナポリタンに変換されたのかがわからない。
すると、老婆はゼランに納品書を拝見させてくれないかと尋ねてきた。
もちろん断る理由もなく、ゼランは老婆に納品書を差し出した。
老婆は自前の老眼鏡を装着してその納品書を拝見したところ、次に視線をゼラン達に向けた時には笑って答えた。
「ははは、これはうちじゃないね」
「え、違うんですか?」
驚愕するゼランに老婆は、
「うちは銭湯を営んでいるんだよ」
「せんとう・・・?」
聞いたことのないヘルバトスの様子を見た老婆は、店についての説明をし始めた。
「ここはね、お風呂に入るところなんだよ?」
「あ、お風呂ですか」
ゼランもその単語には聞き覚えがあったらしい。
お風呂に入ると事だと聞いたゼランは老婆に深々と頭を下げた。
「どうもすみませんでした。そんなことも知らずに」
「いいのよ。黒煙が出ていたら誰だって勘違いするものだから」
「おばあさん・・・」
人の心の温かさを久しぶりに感じ取ったような顔をするヘルバトス。
お詫びを兼ねてさっそく利用したいところだが、今はそのような時間はない。
老婆から納品書を受け取ったゼランは、
「すみません。このお詫びに近いうちに仲間を連れてこの銭湯利用させてもらいますね?」
「無理に来なくてもいいんだよ?」
「そういうわけにもいきません!また来ますのでその時はよろしくお願いします!」
再び頭を下げるゼランに対して老婆は、
「それじゃあ、またいらしてくださいな」
「ぜひ!それじゃあ失礼します」
そしてその場を立ち去ろうとするゼラン達に老婆は何かを思い出したようにゼラン達の退出を妨害した。
妨害と言っても、良い意味での妨害で・・・
「あ、そうそう。その武器屋なんだけど、うちの裏側にあるからね」
「最後の最後までありがとうございます、おばあさんには感謝をしても仕切れません・・・」
ペコペコするゼランに、ニコニコする老婆。
老婆は二人が退出するまでその顔を維持し続けたのだった。
そして二人は老婆の言う通りに、銭湯の裏側へと回っていった。
「良い人でしたね」
「ああ、この世界にはああいう人しかいなければいいのにな」
「そうですね」
二人でそんな話をして、笑いながら武器屋へと向かい、銭湯からはそんなに時間はかからなかった。
武器屋を前にしたゼランとヘルバトスは、さっそく武器屋へと入店する。
すると、二人を出迎えたのはマッスルボディの男だった。
しかもなぜか、上半身が生まれたままになっている。
・・・・・・・店間違えた?
一度退店して銭湯の煙突を確認するも、ちょうどと言っていいほど真後ろにきていた。
どうやら、ここが武器屋で間違いなかった。
もう一度入店し、ゼランがマッスルな男に声をかける。
「あ、あの。ここが武器屋で間違いないですか?」
するとマッスルな男は、腕を組み大きな口を開けて笑いながら、
「どう見たって武器屋だろうが、周りにある武器が目に入らないってか?」
男に言われるがままに二人は、辺りを見渡すとそこには沢山の武器が取り揃えられていた。
初めてみる武器を目の前に、二人は完全に見とれてしまっている。
そんな二人を目にしたマッスル男は、
「なんだ?武器を買いに来たのか?」
その問いかけに我を取り返したゼランは、納品書をマッスル男に提示した。
「これは、国に出した納品書だ。なぜあんちゃんが?」
「この度私が・・・いえ、私達がこの地の統領となりましたので以後、お見知りおきを」
ゼランがマッスル男にそう言うと、男は全て納得したような顔で、
「なるほどな。あんちゃん達か。この地を乗っ取った魔人族ってのは」
「おや、噂が広まるのが早いですね?」
「さっき国王から聞いたんだ。この地が魔人族に乗っ取られたってな」
元国王が国民に情報を漏らしていたのはゼランにとって正直わかりきっていたことだった。
対して驚く要素もなかったが、ヘルバトスにとっては予想外の出来事だったらしい。
凄い剣幕をして弁論を始めた。
「違う・・・!ゼランさん達は悪い人じゃ・・・」
ヘルバトスがそう言いかけた途端、マッスル男がヘルバトスの頭に手を置いた。
そして、無邪気な笑顔で、
「ばーろ。注文を受けてくれるのなら人間だろうと魔人だろうと大歓迎だ!それで?どういった案件でここに来たんだ?」
正直、マッスル男のその反応はゼランもヘルバトスも予想外だった。
魔人と聞けば、誰もが嫌悪を示すと思うだろう。
だが、このマッスル男はそう言った類の感情を一切見せつけない。
無頓着なのか、ただの馬鹿なのかゼラン達にはわからなかったが、これはチャンスであった。
そしてゼランは机の上に置かれている納品書を指さし、
「この「ミラボレア」というモンスターを教えていただけませんかね?」
「おうよ!受注内容ならしっかり説明させてもらうぜ」
ミラボレアとは一体どういうモンスターなのか。
マッスル男からミラボレアについて長々と語られるのだった。
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