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『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
三章 ヘルバトス編
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七十二話 身分をわきまえるということ

 ヘカベルに戻ったヘルバトス達は、さっそくジェールナ達を合流する。

 ゼランとエルフミーラにとってはついさっきの出来事だったみたいに感じるが、体感では何時間もの時が経っていた。

 まずゼランが確認を取らなければいけないのは・・・


 「俺達がいない間に変わったことはなかったか?」


 その質問に対してジェールナ達が何やら口籠っている。

 どうやら留守の間に何かあったらしい。

 そう睨んだゼランは、ジェールナに何があったのかと口に出すように強要した。

 すると、ジェールナの口からは思ってもみなかったことが告げられた。


 「それが・・・何かの納品作業があるみたいなの・・・」

 「・・・・・・・・・・は?」


 困惑するゼランにジェールナは一枚の納品書を差し出した。

 その納品書に目を通すと、ゼランは大体の内容を把握した。

 納品書に書かれていたことを大まかに説明すると、


 「武器屋に「ミラボレアの尻尾」一つを納品しろっていう内容だな」

 「どうしましょう?」

 「僕は断るべきだと思うけど」

 「でも、国民の信頼度下げちゃうよ?」

 「いや、そもそも信頼度上げるためにこの国を奪ったわけじゃないでしょ」


 暗黒騎士達の意見が飛び交う中、ゼランは冷静に考えていた。

 

 この納品を断ったらどうなる?俺達のプランに支障が出るか?

 仮に武器屋の連中が悪評を広めたらどうする?

 そうなってしまえば確実にシハルの情報は得られない。

 かといって、このミラボレアというのはどんなモンスターなんだ?

 わからないモンスターに立ち向かうのはあまりにリスクが高すぎる。

 武器屋の連中に聞くのが一番いいが、奴らが簡単に口を割るとは思えない。

 ある程度この国から信用がある奴がいいんだが・・・


 その結論に至るまでそう長くはかからなかった。

 そして、ゼランの脳内にある人物像が思い浮かんだ。

 さっそくその人物を召喚するようにと、未だ言い争っている暗黒騎士達に命令を下す。


 「元国王だ。元国王を連れてこい」

 「わ、わかった」


 ゼランの指示にいち早く反応したグウィルドが元国王をこの場に連れてくるために王の間を出て行った。

 そういえば、元国王はどこに連れて行ったんだ?

 疑問に思ったゼランは、サキュラバーニとジェールナに尋ねた。


 「元国王をどこに連れて行ったんだ?」

 「どこって牢屋だよ、牢屋」

 「何だろう牢屋か・・・・・牢屋?」

 「そうそう、逃げようとするから閉じ込めておいたの」


 ゼランとエルフミーラがいない間にそんな壮絶な出来事があったとは。

 やはりジェールナ達をこの場に残しておいて正解だった。

 もし、暗黒騎士全員で魔界に戻っていれば、恐らく逃げられていただろう。

 ゼランは心の中でジェールナ達に感謝の敬礼をする。

 そんな中、ゼランの服が優しく引っ張られた。

 そう、ヘルバトスである。

 ジェールナ達とは初対面であるため、ヘルバトスは恐らく緊張しているのだろう。

 ゼランはヘルバトスに優しく声をかけた。


 「あとで紹介するから、少し待っててくれ」

 「あ、はい・・・」


 ヘルバトスの、その何とも言えない反応に何か引っかかった。

 そう単純な問題ではなさそうな雰囲気にゼランは、


 「ヘルバトス、お前まさか」


 ゼランがそう言いかけたと同時にグウィルドが元国王を連れて帰ってきた。

 元国王は手に手錠が欠けられ、首には犬が散歩に用いる首輪がされていた。

 そして、リードはグウィルドがしっかり持っている。


 なんでこうなったんだ・・・?


 頭が切れるゼランとは言え、なぜこのようなことになったのかわからなかった。

 すると、元国王はヘルバトスを見るなり、ヘルバトスに、


 「貴様は・・・ギルシュインの奴隷じゃないか」

 「ヘルバトス、やっぱり奴にあったことあったんだな?」


 その問いかけに対して、ヘルバトスはコクンと一回頷いた。

 ヘルバトスが変な反応を見せていたのは元国王が原因に違いなかった。

 ゼランの心の中にヘルバトスへの申し訳なささがいっぱいになるが、その謝罪心も全て快晴のように晴れていった。

 ゼランは良いことを思いついたのだ。

 そんなゼランの前で元国王が何やらピーピー喚いている。

 どうやらこの立場関係が気に食わないらしい。


 「おい!なんであの奴隷がお前達の中に平然といるんだ!普通わしと立場が逆だろう!」

 「はあー、じいさん。もう少し立場をわきまえようよ」

 「わしはそこまで年老いてないわ!」


 興奮したまま怒りをコントロールできていない元国王。

 グウィルドの言うように立場を全くわきまえていない。

 ゼラン達と元国王の立場関係ではない。

 ヘルバトスとの立場関係だ。

 この元国王は、自分が下の身分だと気が付いていないらしい。

 まだヘルバトスのことを話していないグウィルドでも理解できたというのに。

 いや、本当は元国王も気が付いているに違いない。

 そうでなければ、奴隷の前でこんな無様な姿をさらけ出すはずがないのだから。

 元国王は恐らく認めたくないのだ。

 奴隷より下にいる自分の存在を。

 そんな元国王に、ゼランはチャンスだと思い、こんな話をし始めた。


 「どうしたんですか?元国王様?」

 「貴様、一体どういうことだ!」

 「おや、目上の人に口がなってませんね」

 「そんなことはどうでも良い!なぜあの奴隷がお前らと一緒にいるんだ!」

 「誰も俺に口の利き方がなってないなんて言ってませんよ?」


 するとゼランは、背後に隠れるヘルバトスを前に出して、


 「ヘルバトスに対して口の利き方がなってないと言ってるんですよ?そんなこともわからないんですか?あなたの脳みそはミジンコ程度の大きさしか入っていないんですか?」


 ゼランの元国王の嘲笑に、暗黒騎士達がクスクスと笑い始める。

 その光景が不快に感じたのか元国王は、


 「いいからそこのクソガキをこっちによこせ!」

 「いいですよ?」

 「え・・・」


 ヘルバトスはゼランの前で硬直した。

 無理もないだろう。

 今までろくに扱ってなかったギルシュインの親玉だ。

 ろくなやつではないことくらい、会っていても会っていなくてもわかりえることだった。

 そんなヘルバトスにゼランは耳元で囁いた。


 「あの元国王に近づかなくていいよ」

 「え・・・どういうことですか?」


 ゼランはヘルバトスに作戦の内容を事細かく説明した。

 ヘルバトスは乗る気ではなかったが、多少なりの復讐心がある。

 ゼランの作戦に乗っかったのだった。


 「よし、行ってこい。知らしめてやるんだ。立場ってやつを」


 ゼランのその言葉と同時に、ヘルバトスはゆっくりと元国王に近づいた。

 そして、元国王の伸ばした手が届きそうで届かないところでヘルバトスは止まった。

 もちろん元国王は国王らしからぬその剣幕でヘルバトスを襲うとするが、一向にヘルバトスに届く気配がない。

 元国王の力はグウィルドの力には遥かに劣るため、元国王の行動範囲内はリードの範囲の中ということになる。

 それを巧みに利用した煽り作戦がゼランが考え出した作戦の全容だったが、予想外の出来事が起こった。

 リードが切れた?

 そんな生易しいものではなかった。

 端的に言えば、ヘルバトスの中身の様子が変わったのだ。

 まるで別人のような気配。

 その気配は懐かしさと恐怖を暗黒騎士達に刻んだ。

 暗黒騎士が恐怖に怯えるぐらいだ。

 そんな耐性を持ち合わせていない元国王はその倍の恐怖を感じているだろう。

 ただの憶測でしかないが、元国王の先ほどまでの威勢は消え失せ、大粒の涙をぽろぽろ零していた。


 「た、助けて」


 元国王は助けを求めるが、暗黒騎士も恐怖を感じているため動くことができない。

 そんな元国王の情けない姿を目にしたヘルバトスは、


 「やはり人間は所詮、感情だけで動く人形に過ぎないと言うことか」


 ヘルバトスは一人でブツブツと呟いた後に、いきなり命を下した。


 「わが前にひれ伏せ!」


 すると、その場にいる全員が断つことを許されなかった。

 ただ、メイシアを除いて。

 メイシアは何が起こっているのかとキョロキョロ辺りを見渡した後に、ヘルバトスへと近づていく。

 エルフミーラがメイシアを止めようとするも、体は動かないし声も発せなかった。


 「お兄ちゃん?どうしたの?」

 「ん?なぜ貴様は動いている?」


 ヘルバトスのその問いかけに首をかしげるメイシア。

 そんなメイシアを見たヘルバトスは一人で納得したように謎めいたことを口にした。


 「そうか、貴様。普通ではないな」

 「???」


 メイシアが頭の上に?マークが見えそうなぐらい困惑しているのが分かった。

 そんなメイシアの前で、ヘルバトスはいきなり意識を失ったのだ。


 「お兄ちゃん!」

 

 メイシアの声だけが王の間に響き渡った。

 

ご愛読ありがとうございます。

次の更新は24時になります。

改稿作業も少しずつやっていきますのでそちらの方もよろしくお願いします。

ブックマークを付けてくださった読者様、ありがとうございます!

今後とも執筆に気合を入れて頑張っていきたいと思います。

応援の方、よろしくお願いします。

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