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『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
二章 暗黒騎士編
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六十二話 「天元」の完成形

 金崎が怖い顔をする理由が分からなかった。

 何を考えている?

 サタルドスはただ、シハルの記憶を取り返したいだけなのに。

 サタルドスは金崎に聞きたいことを全て打ち明けた。


 「俺は、鬼人族の子の記憶を取り戻したいだけなんだ」


 必死に懇願するサタルドス。

 シハルのいない世界なんてもう懲り懲りだ。

 早くシハルと話がしたい。

 シハルの記憶がままならない間にどんなことがあったのか。

 全て話したかった。

 だが、そんな思いは金崎には届かなかった。


 「お前の言う鬼人族の子というのは、ヘカベルで作られた改良鬼人のことだろう」

 

 やはり、エルフミーラの推測は正しかった。

 そうだとしたら、シハルの記憶を奪い取り、裏で操る人間がいるはずだ。


 「記憶を奪った人間はどこにいる?」


 その問いかけに対して、金崎は人を馬鹿にするように、


 「ふふ、記憶を奪った?貴様は何を言っている」 


 金崎はその神々しく輝くロングソードをサタルドスの方に向けて構えた。


 「やつは・・・いや、破壊兵器は自分で自身の記憶を消したんだろう?仮に記憶を持っていたとしても貴様ら魔人族に教えるはずがないだろ」

 「おい、聞いといて何も教えてくれねーのか?」

 「それとこれとでは話が別だ」


 つまり、聞くだけ聞いて最初から教える気がなかったというわけだ。

 だったら、こいつを生かして置く価値はない。

 サタルドスもまた、刀を金崎に向けて構える。

 二人の間に緊張感が走る。

 その緊張感に水を差す様に横槍が。

 サタルドスの方に向かって弓の矢が飛んできたのだ。 

 サタルドスは難なく回避したものの・・・・


 「あの雑魚ども!!!」


 対して力がないくせにこんな小汚い戦法を使ってくるとは。

 殺してやる。

 だが、金崎が邪魔で奴らを殺すことは困難を極めた。

 かといって横槍自体に大した戦力はないものの、金崎との戦いにおいて横槍は普通に怠い。

 金崎と雑魚どもを同時に攻撃する手段はないものか。

 すると、サタルドスはある案を思いついた。

 そうか、そのためのスキルだったのか。

 サタルドスはそのスキルをさっそく使用した。

 「憤怒の化身」

 スキルを使用すると、瞬く間に俺の分身となる化身が現れた。

 先ほどの戦いと同じかと思われた化身だったが、今回はどうやら違うみたいだ。

 勇者の怒りエネルギーを吸い取ったせいだろうか。

 現れた化身は一言で言うと、でかかった。

 体長四メートルと言ったところだろうか。

 大きければいいという問題ではなさそうだが、まあ雑魚相手なら何とかなるだろう。

 すると金崎はその化身の存在意義に気が付いたのか、化身に向かって襲い掛かった。

 だが、そんなことをサタルドスが許すはずもなく、金崎の攻撃をサタルドスが受け止めた。

 そして、化身は雑魚兵士達の元へと向かって行った。

 兵士達は必死にその弓なり剣を振るうも、化身はその攻撃を全て透かして交わした。

 一人、二人と次々に人間の生首が宙を舞っていく。

 横槍を入れなければこんなことにはならなかったのに。

 哀れな愚民共だったな。

 意識を化身の方に向けるも、俺の今の相手は金崎だ。

 金崎の攻撃を受け止め続けているサタルドスは一度その攻撃を薙ぎ払った。

 

 「なんで関係のない人間に攻撃をする?この戦は私とお前のものだろ?」


 関係のない?

 先に横槍を入れてきたのはそっちなのにか?

 あくまで悪役は魔人族である俺というわけだ。


 本当にこの世界はサタルドスに理不尽なようにしかできていない。

 この苦労も今まで優雅に暮らしてきた勇者様には理解できないだろう。

 だから、そんな正義染みたことを平気で口にすることができるんだ。


 本当の正義はお前らなんかじゃない。

 俺達が本当の正義なんだ。


 今度は、サタルドスのほうから金崎に攻撃を仕掛けた。

 スキル、憤怒の蒼炎刀を使用して。

 炎々と滾るその炎は金崎のロングソードを燃やし尽くすことはできず、虚しくもその剣で弾かれてしまった。

 金崎相手では六十パーセントの力では倒せない。

 そんなことを考えていたことが顔に出してしまっていたのか、金崎はサタルドスを目視して何の前ぶりもなく笑いだしたのだ。


 「まさか、魔人族がこの程度の相手とはね」

 「は、それはこちらも同じことだ」


 金崎の発言から予測するに、何か隠し玉を持っていそうだった。

 だが、それはサタルドスも同様。

 サタルドスはまだ百パーセントの力を使っていなかったのだ。

 そして、余裕がある金崎もそれに気が付いていたのか、ある提案を持ち掛けた。


 「この勝負をさっさと終わらせないか?」

 

 勝負を早く終わらせるのは賛成だが、化身のほうがまだ苦戦しているようだった。

 兵士の数も先ほどの十倍の量となっている。

 ここまで人員を割いといて、屍のほうは大丈夫なのか?と思うぐらいに。

 まあ、彼らの戦況はどうでもいいのだが、化身のほうが兵士達をかたずけないと本気を出そうにも出せない。

 兵士が邪魔するから本気を出せないわけじゃない。

 化身がいるから本気を出せないのだ。

 今になって気が付いたことだが、憤怒の化身を使うと、どうやらサタルドスの魔人化に必要な魔力?みたいなものが吸い取られていることが分かった。

 現時点でサタルドスが出せる最大火力は八十パーセントといったところだろう。

 八十パーセントの魔人化で金崎を倒せるか?

 いや、その力で倒すしかなかった。


 「ああ、さっさと終わらせるか」


 サタルドスは自身の出せる最大火力、八十パーセントを引き出す。

 体に疲労感がたまり、あまり長くはもちそうにない。

 いや、持たせなければならない。

 魔界へ帰還するまでは。

 その悍ましい姿を見た金崎はサタルドスに敬意を表し、拍手を送った。


 「いや、口だけではなかったようだな」

 「ふん、さっさとお前の本気を見せてもらおうじゃねーか」

 「ああ、そうだな」


 すると金崎はいきなり愛剣をしまったのだ。

 金崎が何を考えているのか見当もつかない。

 だが、見る見る金崎の身に変化が生じた。

 黄金の光に包まれ、金崎は自身の能力を向上し始める。

 金崎の背中からは天使のような白い翼が。

 宝石のような碧眼は金色を帯びていく。

 その姿はまるで天使。いや、大天使だった。

 金崎から発せられるオーラでしか読み取ることができないが、恐らくはサタルドスと同等かそれ以上の実力だった。

 確実に打ち取るには百パーセントの力ではないと困難を極める。

 サタルドスが化身に意識を向けるも、化身はまだ兵士達と交戦中だった。

 このままやるしかないのか。

 下手したら負けるというのを覚悟した上で。

 変身を無事に遂げた金崎は、ロングソードを引き抜きサタルドスに、


 「それじゃあ、始めようか。魔人族狩りを」


 すると金崎は先ほどと同じようにサタルドスの懐に入り込んでくる。

 違う点を挙げるとするならば、金崎のスピードが急上昇したことだろうか。

 サタルドスはその攻撃を回避したのちに金崎に尋ねた。

 

 「お前のその能力、なんだ?」

 「死にゆくものが知りたいですか?」


 一度はこんなことを言った金崎だったが、「まあいいでしょう」とまるで、今から死ぬんだから教えても大丈夫かと言ったような雰囲気でその能力について語り始めた。


 「これが「天元」の最終形態、「天元加護」というものです。それ以上の情報は恐らく必要ないでしょう?」


 勝ちを確信したその目付き。

 上等だ。返り討ちにしてやる。

 サタルドスは今までとは違うスタイル、両手持ちで刀を構えた。

 そして幾度となく使った蒼炎刀のスキル。

 サタルドスは炎をまとった刀とともに彼女に立ち向かった。

 だが・・・

 

 「・・・!なんでだ!?」

 「やっとお気づきですか?」


 蒼炎が切りかかる途中で消えたのだ。

 そうか、そういえば先ほど出ていた蒼炎もいつの間にか消されていた。

 間違いなく金崎の仕業だった。

 すると、親切ながら金崎はその謎を解き明かしてくれるのだった。


 「これが「天元加護」の能力、相殺。私に向けられた攻撃スキルを全て無効にする能力」


 それは流石にチート過ぎるだろう。

 そんなことを聞けば動揺したくなくても動揺してしまう。

 今はその動揺を金崎に悟られぬようにするしかなかった。


 「は、それがどうした?要するに攻撃スキルを使わなければいいんだろ?」

 「そんなお前に私を倒せるかな?無謀な戦いになりそうだがな」


 無謀かどうかなんてやってみないことにはわからない。

 俺はそこらの兵士とは違って強いのだから。

 だが、俺が使えるスキルは恐らく、憤怒の吸収と憤怒の絶壁だけだ。

 この二つのスキルを駆使して、どうにか戦わなければならなかった。

 そしてサタルドスは金崎に向かって走り出した。

 

 

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