百九話 さらば・・・
※グロテスク成分多めです・・・
「「雷龍王」ベクトの名において上級魔法を召喚する!『雷源』!」
ベクトは片手斧を頭上で大きく振り回しながら、根源である雷を片手斧に纏い、十分な程にチャージを完了させたところで再び構えを取った。
「おや、なかなか良いパフォーマンスだね?ぜひ、ボクにも教えてくれないかな?」
「なぜお前に教えなきゃいけない?と言いたいところだが、特別に教えてやろう。まあ生きてたらの話だがな?」
ベクトはテレナシアへと急接近し、雷を纏った片手斧を素早く振り下ろした。
腕を切断とまではいかなかったものの、テレナシアの肩に片手斧が刺さり、その傷口から少量の血液が重力に逆らうことなく下へと落ちてく。
そして片手斧から発せられる雷は、放電という形でテレナシアに追加攻撃を与えた。
常人なら、その雷に耐えることが出来ずに感電して死ぬだろうが、テレナシアはやはり常人ではないようだ。
痛みを感じさせるような素振りを一切見せないテレナシアは、抵抗することなく直立していた。
「ほう?『雷源』を耐えるとはな。やはり一筋縄ではいかないというわけか」
「さて、耐えたことだし、その『雷源』とやらを教えてもらおうか?」
「良いだろう。『雷源』というのは全ての雷スキル・魔法の原点だ。どんな物体にでも雷を発生させられるんだぜ?こんな風にな!」
突き刺さる片手斧を素早く引き抜いたベクトは、その勢いのままテレナシアの首を狙い、彼女の首は大きく宙を舞った。
その切り口からジワジワと雷が発生し、彼女を雷の力で焼き殺す。
高電圧のせいで皮膚が焦げたのか、辺り一面に蒸気のようなものが漂い始める。
「ふん、これで終いだろう」
完全に首が胴体と切り離されているのを確認した。
これで生きているようなら化け物としか言いようがない。
ベクトが片手斧を仕舞おうとしたその時、
「おやおや?まだ終わっちゃいないよ?」
「!?」
後ろから耳元に声をかけられた。
その声の主を間違えるはずがない。
リアラでもメネツェアでもゼクスシードでもない。
辺りの蒸気が空気と飽和するように消えていき、ベクトの目の前に現れたのは傷一つないテレナシアだった。
斬り落としたはずの首はしっかりと胴体に繋がっており、傷跡すらも残っていない。
「『雷源』って面白いスキルだね?気に入っちゃったよ!」
「お前・・・なんで・・・・」
「んー、さっきから思ってたんだけどさ、ボクばっか教えてる気がしない?」
「そんなことない、それよりなんでお前は無傷なんだ?『雷源』は絶縁体すらも貫通する雷を発生させるスキルだ。お前は絶縁体とでも言いたいのか?」
「今の見た目はこれでも、中身はれっきとした乙女なんだよ?物体みたいに言われては流石のボクでも傷つくな?」
「お前は傷つかないだろ?現にダメージを食らったのにも関わらず無傷なんだから」
「誰もうまいことを言えなんて言ってないよ?」
雷を通さないスキルを発動させているのか?
だが、ベクトのユニークスキル『性合』で有効なスキル属性に変化しているはずだ。
テレナシアが生きているということは何かしらのからくりがある。
次の手を考えるベクトにテレナシアは溜息を一つ。
「君は見えているようで何も見えていないんだね?」
「なに?どういうことだ?」
「普通に教えるのもそろそろつまらないな、君を見習うことにするよ」
テレナシアは手に持つ氷龍槍を地面に突き刺すと、槍を中心に読めない文字で書かれた魔法陣が展開される。
そして、
「氷流氷花刃」
ベクトの周りに、氷花が流れるように渦を巻き、そのまま氷の中へと閉じ込める。
そして氷花から出る氷刃が容赦なくベクトを襲う。
「クソ!クソっ!」
必死に片手斧で氷刃を弾くも、四方八方から飛んでくる氷刃を全て弾き切ることはできなかった。
氷刃はベクトの体を躊躇することなく切り刻み、数分もしないうちに、ベクトの膝は折れてしまう。
その間にも氷刃はベクトを襲い続け、ようやく氷刃が解けた際には、彼の体は氷刃でできた傷でいっぱいだった。
傷口からは多量の血が流れ出ており、このまま死んでしまってもおかしくない状況。
テレナシアからすれば願ってもない状況なのだが、
「リザレクション」
テレナシアの手に緑色の魔法陣が張られ、その光を受けたベクトの傷が目に見える速さで治っていく。
「お前、一体何の真似だ?」
「そんなに警戒しなくても、たくさん遊んでから殺したいだけだよ?こんなにあっさり死んじゃったらボクがつまらないだろ?それにボクが言いたいこと分かったかな?」
遊んでから殺したいとかとてもじゃないけど、人種がすることだとは思えない。
テレナシアの本来の姿がわからない。
それにベクトは少し厄介な相手に絡まれてしまったようだ。
さきほどテレナシアが繰り出した『氷流氷花刃』は間違いなくバルカンのスキルだ。
それすらも使用可能にするということは、
「お前、龍王を殺したいとかいう割には、龍王のユニークスキルを使うんだな?」
ベクトは確かにテレナシアを殺していたのだが、氷龍王のユニークスキルであった『根性』が彼女を強制的に生存へと導いているらしい。
『根性』は、死にたくないと思う気持ちが強ければ強いほど、死ぬことはなくなる。
だが、『根性』には傷を回復させる効果はない。
恐らくは、テレナシアが先ほど使っていた『リザレクション』という魔法を使ったのだろう。
テレナシアがしぶとく生き続ける理由がようやく解き明かされた。
「ボクは、使えるものは使うべきだと思っているよ?君はそうじゃないのかな?」
「あいにく、俺は嫌ってるやつの力は借りたくもねーな?」
「ふふ、君は本当に面白い龍王だね?」
テレナシアに手を差し伸べられるも、ベクトはその手を用いずに自力で立ち上がった。
「さあ、続きを始めようか?」
「そうだね、そろそろ終わりにしよう」
そして、戦闘は何も合図なしにすぐさま始まった。
至近距離から槍を突き刺されるも、ベクトは紙一重のところで回避をし、片手斧を力強く振り下ろした。
それをテレナシアは素手で受け止め、何かブツブツと唱え始める。
ベクトはテレナシアに向けて足払いをすると、彼女は片手斧を離し、斬りかかろうとするベクトに手の平を向けた。
「フラッシュ」
手の平から閃光のような眩い光がベクトの視界を奪い去り、その隙を突いて槍を心臓に突き刺そうとしたが、ベクトはテレナシアと距離を取った。
先ほどまでならここで会話が弾むとこなのだが、そんな情けはもうかけない。
テレナシアはベクトに休憩を与えないように槍を巧みに操り攻撃を繰り出す。
ベクトは片手斧で槍を弾き飛ばしながら、
「「雷龍王」ベクトの名において上級魔法を召喚する!『雷源』!」
ベクトが先ほどと同じスキルを使用した。
このスキルは変幻自在に操ることのできる都合の良いスキルだ。
だからこそ、スキル選びは慎重に選ばなくてはならなかった。
片手斧に雷が纏おうとした途端、片手斧が大破してしまい、テレナシアの槍はベクトの心臓を貫いた。
ベクトの口から血が吐き出され、槍を素早く抜くと突き刺さっていた場所から血がドボドボと流れ出る。
「お前・・・っ!一体・・・っ!」
「死にゆく龍王に教える必要はないと思うけど?」
テレナシアに反論することなく、「雷龍王」ベクトはその場へと倒れ込み、完全に消失した。
「ベクト!!!」
メネツェアの声は届いていたのだろうか?
どちらにせよ、ベクトの消える運命は覆されないようだった。
「貴様!!!許さん!!!」
「そんなに怒らないでよ?君もすぐに彼と同じところへ送ってあげるから」
テレナシアはゆっくりとメネツェアの元へと歩み寄り、彼女の元へ辿り着いた時には今にも噛み殺してきそうな剣幕だった。
「君はボクに興味はないのかい?今にも殺してきそうな顔をしているけど?」
「貴様に興味などない!アタイの中にあるのは復讐心だけだ!」
「ふーむ、それは怖いな?いっそこのまま殺しちゃうのもありかな?」
「は!?クソ野郎!正々堂々勝負しやがれ!」
「ボクと正々堂々勝負したいのなら、まずはその「ステイト」から抜け出して見なよ?」
「上等だ!」
顔がトマトのように膨れ上がるメネツェアは自力で「ステイト」の解除をしようとするがビクともしない。
するとテレナシアはメネツェアに声をかけた。
「一生君はそこから抜け出せないとボクは思うな?」
「んなことねぇ!さっさとここから出てやるよ!」
だが、いくら脱出を試みようにも、全くビクともしなかった。
「君は自分の力量をこれっぽっちもわかっちゃいないな?中距離・遠距離攻撃の君がパワーで解除できるわけないでしょ?もう少し頭を使おうよ、ね?」
「だまれ!!!」
そんな必死になっているメネツェアがだんだんと面白おかしくなってきたのか、テレナシアはクスクスと笑い出した時だった。
テレナシアの腕にキレの良い剣が突き刺さり、綺麗に腕が切り離された。
切り口から血が飛び出し、『リザレクション』を使用しながら、
「簡単にボクの腕を斬り落とすとは、君は一体誰だい?どこから紛れ込んできたのかな?」
「黙れ」
逞しくも凛々しいその姿勢から、テレナシアでさえもその女性の美しさに見惚れてしまう。
そして彼女は剣に指一本触れることなく、自身の手元へと戻す。
手元に戻ってきたその剣を地に突き刺し、彼女は言った。
「さあ、ハッスンの体を返してもらおうか?」
本日も最後まで読んでいただきありがとうございます!
今後とも「六宝剣に選ばれなかった異端者」をよろしくお願いします!




