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『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
三章 ヘルバトス編
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百四話 大賢者

 「似た者同士・・・?お前は一体何を言ってるんだ・・・?」


 テレナシアとバルカンに共通項などあるはずがない。

 あったとしても、それは何かの勘違いだ。

 理解していないバルカンにテレナシアは、


 「そう、君とボクは非常に近しい間柄なのさ」

 「お前と何がそんなに似ているって言うんだ?」

 「まだ気が付かないのかい?君とボクの共通項、それはだね・・・・・・信用の無さだよ」


 信用の無さ?テレナシアは何も分かっていない。

 バルカンの隣には彼を信用してくれたドレグレアがいる。

 信用がないのはテレナシアだけだ。

 


 「バカが、俺を信用してくれてくれた友がここにいる!」

 「さて、それはどうかな?」


 テレナシアは「パチンっ!」と一回、指を鳴らした。

 その途端、ドレグレアが前触れも無くいきなり倒れたのだ。

 当然、バルカンは取り乱してしまう。


 「お、おい!!!ドレグレア!どうしたんだよ!おい!」


 バルカンがドレグレアの肩を激しく揺らすも、目覚める気配がない。

 ドレグレアがこうなってしまった原因は、疑う余地もなくテレナシアだった。

 

 「お前!ドレグレアに何をした!?」

 「何って、元の状態に戻しただけだよ?」

 「は?元の状態?」

 「そう、だって彼はすでに死んでいるのだから。ボクが魂を吹き込んだに過ぎないんだよ?」


 テレナシアは何を言っている?

 すでに死んでいる?ドレグレアが?

 魂を吹き込んだ?テレナシアが?


 彼女の言葉が嘘だと分かっていても、深く考えてしまう。

 そんなバルカンにテレナシアはニッコリとした笑顔で、


 「彼は数時間前にここにやってきてね?現場を押さえられたから殺してしまったんだよ?」

 「現場?」

 「おや、それすらも知らないのかい?特別に教えてあげよう」

 

 するとテレナシアは辺りを見渡すようにバルカンに尋ねた。


 「ここへ来る途中に気が付かなかったかい?あまりの警備の薄さに」


 そう言われてみれば、確かに警備の目が薄かった気がする。

 陛下の館となれば警備の目は一層濃くなるはずなのに、警備隊があまりにも少ない。

 バルカンが見た警備兵は三人だけだった。

 

 「なるほどな、お前の仕業というわけか。さしづめ、この館の竜人を皆殺しにし、自分の従順な下僕を作るために魂を吹き込んだのだろう」

 「ご名答。よくわかったね」

 「なぜ竜人を殺した?お前の狙いは龍王じゃないのか?」

 「あれ?君にボクの計画を話した覚えはないのだけど?」


 バルカンの中身のヘルバトスは未来から来た存在。

 龍王殺戮計画を企てたのは大賢者本人だ。

 そして、テレナシアの計画と大賢者の計画が一致したということはつまり、


 「お前が・・・・お前が・・・・っ!」


 大賢者のことを考えているというのに、「呪い」が全く発生しない。

 大賢者の発見と同時に消える仕組みになっているのだろうか。

 しかし、今はそんなことどうでも良い。


 「お前のせいで!!!お前のせいで龍王達は!!!」

 「君はなぜそんなに怒っているのだい?君とボクは似た者同士。彼らが『死』しても何の問題はないはずだと思うけど?」

 「だまれ!!!!大賢者が!!!!!!」

 

 龍王が龍王を殺して問題にならないわけがない。

 バルカンは、初めて使う『氷龍槍』を手に取る。

 槍から漂う冷気は、次第にカーペットを氷尽くしていく。

 これが<竜神効果>なのだろうか?

 自身は全くその冷気を受け付けない。

 冷気を受け付けないのはバルカンだけではないようで、


 「大賢者?って何のことかな?」

 「ほざくな!!!それよりなんでお前は竜神効果を受けないんだ!?」

 「そんなの決まっているじゃないか、ボクが神その人だからだよ?」

 「ふざけるのも大概にしろ!でなければ殺すぞ!」

 「可愛い女の子に怪我を負わせるのはどうかと思うよ?」

 「殺す!!!!!」


 バルカンは『氷龍槍』を突き出し、その先端から冷気を纏った氷結が容赦なくテレナシアに襲い掛かる。

 だが、テレナシアは無傷だった。

 『氷龍槍』の攻撃をストレートに受けたテレナシアは納得がいかない様子で、


 「んーーーーー、龍王の力もこの程度なのかな?」

 「黙れ!!!」


 冷静さを失ったバルカンは、『氷龍槍』を目に見えない速さで幾度となく突き出す。

 その猛攻をテレナシアは華麗に躱していき、そして冷気で凍ったカーペットに足を取られてしまった。


 「ありゃりゃ!」

 「もらった!!!」


 その隙を見逃さなかったバルカンは重い一撃を打ち放った。

 『氷龍槍』は見事にテレナシアの心臓を貫いた。

 

 「や、やったのか・・・?」

 「いやー、見事な一撃だったね?」

 「!?」


 バルカンの背後から女性の声が聞こえた。

 その声は先ほどから話している女性のもので。

 後ろを振り返ると、そこには無傷のテレナシアの姿が。

 テレナシアは宙へと浮いており、ゆっくりと地へと降り立った。


 「お前、なぜ無傷なんだ?」

 「無傷も何も、君が一生懸命攻撃していたのは、ボクの分身だからね」

 「お前・・・っ!殺す!!!!」


 最初から、分身に相手をさせられていたとは舐められたものだ。

 バルカンは『氷龍槍』を地面へと突き刺し、


 「『氷龍王』バルカンの名において、上級魔法を召喚する!」


 突き刺した槍を中心に、読めない文字で書かれた魔法陣が展開される。

 一度も使ったことがないスキルだ。

 使用するなら絶好の機会だった。

 バルカンは腹の底から大きな声を出す。


 「氷流氷花刃!」


 水のように流れる氷花が渦を巻いてテレナシアを囲む。

 そしてそのまま氷の中へと閉じ込め、氷花から出る氷刃がテレナシアを襲う。

 さすがの上級魔法と言ったところだろう。

 テレナシアの肉体が傷つき、そこから血が滴れるように流れていく。

 それを養分とした氷花が、テレナシアの血液を吸い取り、氷刃となって形を現す。

 まさに悪循環の上級魔法だった。

 この監獄からの脱する条件は血液を全て吸い取られるか、それとも・・・

 次の瞬間、


 バリン・・・っ!!!!


 大きな音を立てながら、バルカンの張った氷の監獄が破られてしまった。

 

 クソ、テレナシアを殺す方はないのか・・・っ!


 だが、テレナシアの身体は氷刃でできた傷から湧き出てきた血で染まっていた。

 それほどの血を流しているということは、今まさにテレナシアは激痛に耐えていることだろう。

 

 殺すなら今しかない!

 

 バルカンはテレナシアを仕留めようと『氷龍槍』を突き出した。


 グサ・・・・っ


 『氷龍槍』は目で確認できるように、テレナシアを貫いていた。

 貫いていたのだが、体のど真ん中を貫いていたわけではない。

 もちろん、バルカンはテレナシアの心臓を潰そうと攻撃を繰り出したのだが、彼女は右手に突き刺さったままその攻撃を受け止めたのだ。

 心臓はすぐそこにある。

 だが、それ以上進むことは許されなかった。


 「・・・ククク、クククク・・・」


 テレナシアはいきなり不気味に笑い出し、バルカンの瞳を見つめながら、


 「可愛い女の子をここまで傷つけるなんて、君の深層心理が凄く気になるところだよ?」

 「どうせお前はここで死ぬんだ。だから最後は一思いに殺してやるよ」

 「ククク、それも悪くはないね?」


 テレナシアは血まみれの左手を大きく天にかざし、発動させた。


 「コネクト!」


 その言葉を放ったと同時に、目の前にいたテレナシアは闇の粒子となってバルカンの中へと入っていく。

 そして、バルカンの意識が乱れ始めた。


 ガアアアアアアっ!!!!!!ガアアアアアアア!!!!!!


 『氷龍槍』を地面に突き刺し、バルカンは意識を保とうと地面に頭を打ち続けた。


 このままではまずい・・・っ!!!!


 バルカンの中で何かが精神ともに蝕んでいくのが分かる。

 テレナシアのものであろう、ドス黒い感情がバルカンの体を支配していき、


 クソ・・っ!!!意識を保て!意識を保て!!!!!


 必死に心に訴えかける。

 だが、気が付いた時にはバルカンは頭を地面に激しく打ち付けることを止めていた。


 おい・・!?まさか!!!!


 自分の言葉が、口からでていないことがはっきりとわかる。

 

 間違いない!!!!これは!!!!


 そして言葉を発していないはずなのに、自分の声が鼓膜を通して伝わってくる。


 「ほう、これが君の体か。なんだか重いな?」

 おい!俺の体を返せ!


 バルカンは必死に表に出ようと試みたが、テレナシアと意識が逆転することはなかった。


 「いくら足掻いても無駄だよ?ボクの所有権になるように細工して置いたから。君は黙ってそこから見ているといいよ」

 おい!待て!!!!待てよ!!!!!


 意識があったとしても自分の体に何かしらの働きをすることはできない。

 テレナシアは地面に突き刺さった『氷龍槍』を手に取るなり、それを片手で振り回した。


 「ほう?結構軽いんだな?ダメージを受けてた時は結構重たい気がしたけど・・・」


 テレナシアはそう言いながら、「まあいっか!」と一言残し、槍先を自身の胸の方へと向けた。


 おい!嘘だろっ!!!!!!


 そしてテレナシアは躊躇することなく『氷龍槍』を自身の胸に貫いた。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございます!

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