30日(最終日)
「一週間お疲れー」
朝食を食べた後荷物をまとめ、一週間世話になった拠点を掃除。
T中さんとヨッシーは六時のバスに乗ってすでに駅に向かったらしい。
「結構人数減ったなあ」
掃除が大変だった。
元の廃幼稚園、現役避難所の体を取り戻したところで僕らは外に出る。
その頃にはとっくに日も高くなっており、昼食の時間となっていた。
「よし、飯食いに行くか」
H浦さんの一声でみんなが車に乗り込む。
そして近くのフェリー乗り場の食堂で、久々に自分が作ったものではない料理を口にする。
ラーメン美味え。
「私とH大組は次のフェリーで帰ります」
「みんなお疲れ様」
「また来年も来ますね!」
「もう少し歩けるようになってればいいなあ……」
昼食後、ヨネとK富さん、そしてO塚とシンがフェリーにとって帰るのを見送る。
次に大鈴木さんとN村さんが別のフェリーで弘前に向かった。
「何でまた弘前に?」
「ちょっと知り合いにあってから帰るわ」
「それじゃあ、またな」
何だかんだでN村さん、今年はT中さんが暴れなかったもんだから妙にスッキリしない感じだったなあ……。
平和でいいんだけど。
「G大組は?」
「ウチらはJIN君の車で帰りまーす」
「Y川とオチは?」
「O川さんに乗せってもらいます」
「そうか」
「また来年も来ますね!」
「よいお年を!」
H浦さんに見送られながら、僕らはそれぞれの車に乗り込んだ。
* * *
途中、去年は行きに寄った七戸のとある牧場でジェラードを食べ、十和田の大型ショッピングモールに止まってもらった。
というのも、僕の母上が買い物がてら迎えに来てくれているそうなのだ。
「ここでいいの?」
「はい」
「荷物忘れんなよ」
トランクからリュックやら寝袋やらを取り出す。
助手席に座っていたU坂さんに、帰りのガソリン代として五百円を手渡した。
「はーい、確かにー」
「少なかったらまた後で渡します」
「いーっていーって。四人で割り勘だとこんなもんだし、足りなかったとしてもいいよそれくらい」
「そうですか?」
「それよか、お母さんとこまで荷物運んであげよっか?」
「大丈夫ですよ。その辺にいると思いますし」
「そか」
「それじゃあ、よいお年を」
「おう!」
「またねー」
「山大さんお疲れ様でしたー」
JINさん、U坂さん、M生に手を振り、僕は荷物を背負い直した。
「さて……」
ケータイを出して電話をかけてみる。
「……………………」
が、出ない。
まあいつものことだ。
ケータイを不携帯してるか、気付いてないだけか……。
しかし、寒空の下で待つのも何なので中に入って本屋コーナーで立ち読みを――
「……しようとしたら電話かけてくるし」
さすが母上。
タイミングがおかしい。
手に取った雑誌を戻し、電話で伝えてきた正面入り口に向かう。
「よ」
「うい」
久々に会った母上は、何か食ってた。
「何食ってんの」
「移動屋台の焼き鳥。年末セールで一本二十五円だった。四本百円」
「やっす」
「いる?」
「いらう」
焼き鳥を一本受け取り、一口食べる。
「うめ?」
「うめ」
「そか」
「ああ、そうだ」
「何?」
「ただいま」
「おう。お帰り」
ここ一週間青森にいたわけだけど、ようやく帰って来たって感じがした。