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復讐の果ての終焉と始動  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 創り出される人 ――クロント支部――
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第21話 デミ・フィルド

「わ、私の事知っている……?」

「う、うん。結構、知ってるよ……」


 私は困惑しながらも彼女に答えた。フィルドさんだけど、どこか違う。中身に至っては全く別な感じもした。


「ふむ、お前はまだ分かっていないようだな」

「…………? 分かっていない?」

「えっ、なに? なんの話!? 私のこと!?」


 言葉に強さがあまり感じられない。もしフィルドさんなら、黙って状況を観察している、と思う。彼女は私の後ろに体を隠しながら、早口で疑問を発していた。


「デミ・フィルド=ネストはハンター=ベータにも使われ、戦闘データ収集や“フィルド・クローン・アーミー”計画にも使われている」


 ……デミ? 確か「半分」って意味じゃなかったっけ?


「……デミ・フィルド=ネストは、我々の開発した“クローン人間”だ!」


 クローン!? という事は今、私の後ろにいる子や、水槽に入っているハンター=ベータもクローンってことに! そうなら本当のフィルドさんはやっぱりちゃんと存在しているんだ!

 半分嬉しかったケド、クローン製造を行っているという事実に私は恐怖を感じた。クローンは法的にも、人道的にも禁止されている事だ。

 私はチラリと周りの水槽を見る。さっきは手足しか見なかったケド、今度は顔を真っ先に見た。……全部同じだ。同じ顔、同じ髪型、同じ体型……。この水槽群に入ってる子はみんな……!


「わ、わたし、クローン……?」


 後ろの子が私にしがみ付きながら言う。その体は僅かに震えていた。自分が自分の知らない誰かの複製、人工の生命だって知ったらショックだよね……。


「大丈夫、絶対助けて上げるからッ!」

「彼女は16歳のデミ・フィルド。性格や姿かたちも16歳のオリジナル・フィルドをベースに再現した」


 私はデミ・フィルドさんに自分の着ていたコートを羽織らせる。この子がフィルドさんを元に造り出されたなんてまだ信じられないところもあった。でも、信じないと説明がつかないだけじゃなく、彼女を否定することになる。


「クローンは色々問題がある。微調整をしながらどれだけの個体を作ってもなかなかオリジナルと全く同じにはならない。どこかでオリジナルより劣ってしまう」


 ティワードはそう言いながら床に突き刺した剣を引き抜く。私は魔法発生装置をデミ・フィルドさんに渡すと、自分自身はサブマシンガンを手にする。


「人の命を軽んじて……許さない!」

「クローンは量産型の奴隷! デミ・フィルドは連合軍の実験の為に生み出される不幸なる人間! だが、人類の科学を発展させる栄光の英雄でもある!!」


 ティワードの剣が振り上げら、そこから大型の衝撃弾が飛んでくる。それを撃っている隙に私は射撃した。小さくもたくさんの弾が飛び、彼の体に撃ち込まれていく。

 衝撃弾は爆発して私の身体は大きく吹き飛ばされ、水槽に背中を打つ。銃弾は彼の体に撃ち込まれ、白色の床に赤い血を飛散させる。ただ、彼の着ている服の防御力が高いのか、大きなダメージを与えるには至っていなかった。


「だ、大丈夫!?」


 デミ・フィルドさんが魔法発生装置を使い、回復魔法を私にかけてくる。私はゆっくりと立ち上がり、彼女に少しだけ微笑んだ。


「DFT-260203、貴様から片付けようか……」


 そう言うと、ティワードは大きく剣を振りかぶった。さっきの斬撃か!


「やめろッ!」


 私はデミ・フィルドさんの前に立ち、剣を素早く引き抜く。そして、飛んできた彼の斬撃を剣で受け止める。手に走る強い衝撃! それは全身に広がる。手がビリビリと痛む。


「そのデミ・フィルドなど所詮は出来そこない! 長くは生きられないだろう。……楽にしてやる」

「クッ……!」


 私は手で合図してデミ・フィルドさんを後退させる。ここにいると危険だ。コイツが本気で彼女を殺す気なら下がらせた方が安全だろう。

 ティワードの黒き剣から黒色の小さな塊が飛ぶ。魔法弾! それは私の体に当たる。物理ダメージと魔法ダメージ、そして妨害・弱体魔法の効果。私はそれらによって倒れそうになるも、持ちこたえ——


「なにッ!?」


 ――彼の体を大きく斬りつけた! 今度はかなりいった! 右斜めに大きく斬られた彼の体からは赤い血が飛び、それは床や周りの水槽を赤黒く染める。予想外だったのは彼がその場に踏みとどまったことだった。

 ティワードは再び剣を振る。複数の衝撃弾が飛ぶ。それは私の体に直撃し、爆発した。私は大きく飛ばされ、水槽に背中を打ちつける。水槽には大きなひびが入る。


「パトラー=オイジュス。フィルド=ネストの唯一の仲間。我々、連合軍からしたら邪魔な存在――」


 ティワードがまた歩み寄って来る。私は全身の激痛を我慢し、フラフラと、でも手には剣をしっかりと握り、立ち上る。


「――死ね!」


 ティワードが剣を振り上げ、一気に下ろす! それを私は間一髪で受け止める。火花が散り、大きな金属音が鳴り響く! それと同時に手首や腕に衝撃が走る。そろそろ、限界、か……!?


「お前の取るべき最善の行動はデミ・フィルドを囮にし、逃げる事だった!」

「人を、デミ・フィルドさんを生贄にしてまで生きたいとは思わないッ!」


 そう言った瞬間、ティワードは再び剣を振り上げる。そして、今度は私の剣を弾き飛ばした!


「立派だな。だが、終わりは——バッドエンドだ。理想に死ね、パトラー=オイジュス」

「クッ……!」


 彼の剣が私の喉元に当てられる。剣を飛ばされ、喉に剣を突きつけられ、私の敗北は決まったのか……?


「まだ、終わってはないようだが?」

「え?」


 私が絶望に目を閉じようとした時だった。私のよく知るあの強い声が聞こえてきたのは――!

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