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復讐の果ての終焉と始動  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1-2章 交差する絆 ――コスーム大陸――
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第11話 拷問

 【グリードシティ 軍事総本部】


 太陽が傾き、雲で覆われた空は不気味な紅に染まる。そんな空模様の下、私はサレファトを連れて自分の家に向かう。彼は俯きながら重い足取りで歩く。

 捕まえた財閥連合幹部。7年前、私を実験体にした連中の仲間。ソイツを捕まえた。情報を聞き出してやる。実験の事、連合軍の事、財閥連合の事……全部コイツから引きずり出してやる。もし彼が言わなかったら、その時は……!

 黒々とした感情、得体の知れない憎悪、私の中で暴れようとする復讐騎。自分でも怖くなるほどのどす黒く、またドロッとした心が蠢いていた。


「姉さん、助けてッ……」


 震えながら歩くサレファトが呟くように言った。私は一瞬、剣に手がいく。黙らせることを名目に彼を傷つけようとした。

 何年も抑え込んできた黒い感情が噴き出そうとしているのが自分でも分かった。私は尋問を名目に彼に復讐するつもりだ。憎悪の槍を向けるつもりだ。

 心のどこかで分かっていた。サレファトは7年前の財閥連合とは関係ない。彼に復讐しても何も解決はしない。それどころか、彼の心を歪め、また新たなる悲劇を呼び寄せるだけだ。


「姉さん……」

「黙れ」


 分かっていた。理性では分かっていたが、感情がついて行かない。長年溜め込んだ憎悪は自分でも抑えきれない強大な怨念へと成長していた。

 悲劇の連鎖。財閥連合から私へ。私からサレファトへ。サレファトは……。誰かが断ち切らないと永遠に続く。悲劇は悲劇しか呼ばない。

 分かっている。分かってるが、私には止められなかった。自分で自分を止められなかった……。


「入れ」


 とうとう自分の家についてしまった。サレファトは泣きそうな顔で後ずさる。その足取りはフラフラとしたものだった。私は彼の腕を掴むと、引きずるようにして家に入れる。

 彼を家に引きずるり込むと、ロックシステムを作動させる。これでもう出られない。私かパトラーがロックシステムを解除しない限り。

 ……そういえばパトラーはどこへ行ったんだ? 連合軍の事で揉めて、それから見ていない。私は仲間を失ってしまった……? クソッ、こうなったのも全部財閥連合と連合軍のせいだッ!


「来い!」


 心の中で、自分とパトラーの間で起きた事を全部連合軍のせいにした私はサレファトの手首を握り、自分の部屋へ向かう。黒い感情が姿を見せていた……。

 半ば彼を無理やり自分の部屋に押し込めると強く扉を閉める。そして鍵を閉めた。部屋の出入り口はここだけ。防音対策もあるこの部屋。彼がどんなに大きな声で叫ぼうとも誰にも聞かれない。


「さて……」


 私は彼の方を向く。彼は部屋の端っこの方で震えていた。その顔からはハッキリとした恐怖が伝わってくる。

 ……7年前の私もそうだった。連中の実験体にされ、凄く怖かった。でも、彼らは許してくれなかった。アイツらは私を実験体にしたんだッ! そして、コイツはアイツらの仲間だ……。


「私が得た情報だと連合軍という組織が存在し、戦争を起こそうと企んでいるようだがそれは確かか?」


 連合軍。財閥連合の後ろに鎮座する謎の組織。陰で財閥連合やその他の組織を操る組織だ。


「れ、連合軍……? あ、あの、分からない……です」


 サレファトはオドオドと答える。その答えが私の心に潜む黒い感情という魔物を疼かせる。心の門から黒い感情が噴き出そうとする。

 私は部屋の隅っこにいるサレファトの方に歩み寄り、右手で胸倉を掴む。左手に魔力を溜めていく。顔を近づけ、私は言った。


「財閥連合幹部なら聞いた事ぐらいはあるだろう?」

「そ、そんなッ! 僕はまだ財閥連合に入ったばかりで……!」


 私は彼の言葉が終わらぬ内に左手に溜まった魔力を白い衝撃弾に変え、彼に向けて撃つ。破裂音と共に白い煙が上がり、彼の体は転げまわる。

 彼は部屋の真ん中辺りで倒れ込む。彼から僅かにすすり泣くような声が上がる。私はそんな彼を冷ややかな目で見ていた。残酷な復讐騎の瞳……。


「出身は?」

「シ、シリオードッ!」


 座り込んだまま、彼は叫ぶようにして言った。その瞳からは涙が溢れていた。そして、座ったまま、私から遠ざかろうとする。


「連合軍のリーダーは誰だ?」

「わ、分かりませんッ! ごめんなさいッ!!」


 私はサレファトの顔を横から蹴る。彼はまた倒れ込む。赤い血がピンク色のじゅうたんが敷かれた床に飛び散る。私は追い撃ちをかけるかのように彼の背中に足を乗せる。


「痛いっ…… 助けて、もう許して下さい!」

「私も7年前、そう言ったよ……! でもお前らは許しはしなかった! 私を実験体にした!!」


 胸倉を掴んで立たせると握りしめた拳で彼の頬を力いっぱい殴りつける。血をまき散らしながらまた倒れる。その体を蹴り飛ばす。壁に背中を打ち付ける。それだけに留まらず、今度は剣を鞘から引き抜き、彼の右腕を刺した!


「痛い、痛い、痛い! 助けてッ!!」

「あの日、お前らは!」


 ――殺せ! ソイツも財閥連合の人間。私の敵の1人! 復讐を果たすんだ!!


「助けて……! 姉さんッ」


 彼の腕から剣を引き抜く。血が流れ出る。私はそれを見て、信じられないような残酷な感情を覚えていた。大きな満足感と至福を得ている――……。


「助けて、助けて……もう痛い事、しないでください……」


 力のない声で許しを請う。サレファトは泣いていた。彼の泣き声と震える小さな体が私の心を急速に冷やしていく。――私、人を傷つけて、喜んでいる……?


「もう、許して、下さい……。何でも、しますから……」


 復讐の矛先を何も抵抗できない彼に向け、傷つけ、そして自分自身の壊れた心を満たしている……?

 私は血が滴り落ち、小刻みに震える剣を鞘に収める。そして、逃げられないように彼を縛り上げると、私は部屋から出た。廊下に出て、フラフラとパトラーの部屋に向かう。


 自分自身に恐怖を感じていた。感情がコントロールできなくなっている……? パトラーの時も、今回の事も自分の感情が抑えられなかった。

 心に潜む闇の感情。それが私を暴走させる。暴走させ、復讐騎としての私を確実に成長させる。もし、このまま復讐騎としての私が成長を続ければどうなってしまうのだろうか……?


 私はパトラーの部屋に入ると、彼女のベッドに力尽きたように倒れる。

 財閥連合と連合軍への復讐。彼らを力の限り叩き潰す。この7年間、心の奥底で願い続けた。自らを復讐騎と称したのもそれがあったから。

 でも、復讐を果たして何になる? 財閥連合と連合軍を潰し、殺戮の限りを尽くし……。それで何が生まれるんだ? 復讐によって起きた悲劇から生まれるのはまた悲劇。終わらない悲劇の連鎖……。


 パトラー、お前だったらどうする――?

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