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復讐の果ての終焉と始動  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1-2章 交差する絆 ――コスーム大陸――
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第9話 拘束されるサレファト

 私は飛び去る飛空艇を見送ると、まだ意識のあるサレファトに近づく。彼もすぐに立ち上がり、再び黄色く光る電気の剣を取り出す。いや、作った、の方がいいか?


「まだやるのか?」

「…………」


 サレファトの持つ剣が僅かに震えていた。寒さからか、それとも私に対する恐怖からかは分からない。どちらにしても私は彼を許さない。7年前も許してはくれなかった。無理やり、アイツらは……!


「やるのは勝手だが、腕の1本失う事は覚悟しろッ!」


 恨みと憎悪を吐き出すように私は剣を振り上げ、サレファトに向かっていく。彼も剣を振り上げ、迎撃する。雪の降る中、金属の一回り大きな高い音が鳴り響く。

 黄色の剣はヘリポートの地面に叩き落される。彼の細い腕では私の剣を支える事が出来なかった。たった一度の攻撃で彼は剣を落とした。


「クッ……! “サンダー・ランス”!」


 素早く後ろに下がった彼は右手に電気の槍を作り出すと、それを私に向かって投げる。彼にトドメを刺そうと正面から走り込んできていた私は胸にその槍をモロに喰らう。

 刺さった瞬間、彼はしまった、というような表情を浮かべ、震えながら後ずさる。私を殺してしまったと思っているのか……?


「……こんな攻撃で、私が倒れるかと思ったか?」


 私は自分の胸に刺さった槍を引き抜く。血が薄らと白く染まった地面に滴り落ちる。傷が浅いのか、ほとんど出血はなかった。いや、私が“異常な生き物”だからか?

 槍を握りしめ、自分に回復魔法をかけていく。傷は蒼の光に包まれ、消えていく。それとほぼ同時にサレファトは走り出し、逃げ出す。向かう先は建物の内部だった。


「逃がすか!」


 槍を捨てると、私もまた走り出す。サレファトと私では脚の速さが違った。私は建物内部に逃げ込まれる前に彼を後ろから押し倒す。


「観念しろ!」

「……イヤだ! “スパーク”!!」


 彼の体が緑色に光ると、辺り一帯に緑色に光る電気を放出する。放電攻撃かっ……! 全身に回る痺れを感じながらそんな事を思った。

 普通なら私が倒れてサレファトの逆転勝利となるのだろうが、そうはならない。私は放電攻撃を受けながら自身に魔法シールドと回復魔法をかけていく。2つ同時に。


「ハァ、ハァ、ハァ…… やってくれる」

「そ、そんなっ……!」

「散々抵抗されたが、お前は私と来て貰う。知りたいことが山ほどあるんでな」


 クロント支部、その支部から来た飛空艇がどこへ行ったのか、財閥連合の計画、連合軍の動き。知りたい事は山ほどあった。

 私はサレファトに手錠をかけると、無理やり、そして乱暴に立たせる。特に意識はしなかったが、どす黒い感情がそうさせたのかも知れない。


「ぼ、僕、逮捕されるんですか!?」

「当たり前だ。尋問は私がやってやる。覚悟しておけ」

「そんな……イ、イヤだッ! 助けて、助けてッ! 許してッ!!」


 泣き喚くサレファトを無理やり引きずるようにして私は自分の飛空艇へと向かう。途中で出会う者はなかった。


「乗れ!」

「助けてっ……! 僕は最近財閥連合に入ったばかりだから何も知らないですよっ……」

「そうか、なら思い出させてやる」


 ただの一般兵ってワケじゃないだろう。恐らくは幹部。ケイレイトやメタルメカには劣るかも知れないが幹部であることには間違いない。

 私は自分の飛空艇に彼を放り込むと、自分自身も乗り込む。そして飛空艇を浮上させる。絶えず雪の降る夜空。私の飛空艇はその中を進み始める。サレファトという情報端末を乗せて……



◆◇◆



 【政府首都グリードシティ 軍事総本部 情報室】


 私はフィルドさんの過去を調べていた。興味本位で知りたいんじゃない。フィルドさんの力になりたいから、フィルドさんを“殺戮騎”なんかにしたくないから知ろうと思った。過去が分かれば原因も完全に分かるし、止められるかも知れない。


[コチラは政府専用ネットワークです。知りたい情報のキーワードを入力して下さい]


 私はパネルに表示された枠にキーワードを入力していく。このグリード・ネットワークは政府関係者だけが使用出来るシステムだった。世界中のあらゆる情報を見る事が出来る。それこそ個人レベルで。

 キーワード欄に「フィルド=ネスト」、「政府軍人」、「過去」、「復讐騎」と入力し、パネルをタッチしてデータを送信する。


[送信されたキーワードから情報を発見しました]


 私は出力されたデータを見る。

 自称・復讐騎。23歳女性。特殊軍の将軍。出身はグリードシティ。グリード軍事学校に初等部から大学まで通い、成績は比較的優秀。特に高等部2年からは文武共に急速に成長。

 16歳で推薦なしに実力のみで特殊軍准将の地位に。18歳で特殊軍少将。19歳で特殊軍中将。21歳で特殊軍将軍。将軍の地位に就くなりパトラー=オイジュスを弟子とする――。


「私が弟子になったばかりの頃って、フィルドさんも将軍になったばかりだったんだ」


 これは知らなかった。あまりフィルドさんは自分の事、話さないからな……。

 でも、これを除けば全て知っている事だった。私は更に細かく調べる事にした。確かフィルドさんが復讐騎と言われ始めたのは7年前……。つまり、16歳の時だ。私は16歳と表示されている部分をタッチする。

 16歳。6月下旬、誘拐されるも7月上旬に自宅に戻される。その間の記憶はなく、またどうやって自宅に戻されたのかも不明。……これってマスターが言っていた事だよね。


「でも、なんでフィルドさんが狙われたんだろ?」


 優秀な政府軍人なら他にもいたハズ。もしかして若かったから? それともまだ一般兵で攫いやすかったからかな? 私は更に読み進めていく。……アレ? これなんだろ……?

 5月下旬から6月にかけ、“テトラル事件”について虚偽の情報を流す。一時期は精神病にかかったのでは、と疑われる。


「虚偽……? つまりウソの情報を流した?」


 フィルドさんがそんなことするとは思えない。いや、絶対にありえない。私はその部分について更に詳しく検索をかけ、読み進めていく。


 コスーム大陸中西部の地方都市テトラルシティ。その地で魔物が爆発的に発生し、街そのものをリセット・ミサイルで消す事となった。

 しかし、フィルドは街に魔物は発生してないと主張。その上で街は財閥連合の軍に占拠され、国際政府はリセット・ミサイルで街を消した。また、財閥連合は軍縮と引き換えに罪に問われない、という内容の密約を結んでいる、と主張した。


 財閥連合……! いくら世界最大の民間企業とはいえど財閥連合は一企業。それが街を占拠するとは思えない。でも、これが本当なら……。


「財閥連合が街を占拠したのは本当だ」

「……え?」

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