プロローグ
全11話、0時更新です。
この世界には、精霊がいる。
炎を揺らす火の精霊。
雨を恵む水の精霊。
木々を育む土の精霊。
空を駆ける風の精霊。
そして、闇を払い、人々の足元を照らす光の精霊。
人は彼らと契約を結び、その力を借りて魔法を使う。
魔法は暮らしを豊かにし、旅を支え、人々の生活に欠かせない存在となっていた。
もっとも、人々が知る精霊は、そのほんの一部に過ぎない。
世界には、まだ名も知られていない精霊が数多く存在すると考えられている。
精霊研究者たちは日々新たな精霊を探し求め、古い文献を読み漁り、ときには伝承の残る辺境へ足を運ぶ。
だが、その成果の多くは真偽の分からない伝承や、おとぎ話として片づけられてしまう。
それでも、誰一人として思いもしなかった。
人の手で作られた”物”にも、心が芽生えることなど。
人は古くなった道具を修理し、使い続けることもあれば、新しい物へ買い替えることもある。
便利な魔道具が次々と生み出されるこの時代では、役目を終えた品は静かに人々の暮らしから姿を消していく。
それが、ごく当たり前だった。
……もっとも。
中には、そんな当たり前とは少し違う人もいる。
光の魔道具が普及する今もなお、古びたランタンを旅のお供に連れ回す、一風変わった冒険者。
曾祖父の代から受け継がれ、祖父が使い、母が使い、そして今は娘へと受け継がれてきたそのランタンを、彼女は旅するたびに煤を拭き、油を足し、傷がつけば修理を重ねた。
何度も”新しいもの”を勧められた。
それでも彼女の答えは、いつも同じ。
「まだ使えるんだから。」
そう笑って、今日も大切そうにランタンを磨く。
それが、彼女にとっては当たり前のことだった。
これは、そんな少し変わり者の冒険者――クララと、長い長い時を経て、心を宿した一つの古いランタンのお話。
今回も妄想全開です。
お付き合いください。




