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推しのアイドルが実は男で陰陽師でした 〜陰陽道二大宗家の末裔たちが、復活した妖を呪術(物理)でシバくまで〜  作者: KUMANO


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1/6

全て現実ですよ


 2022年己酉(つちのととり)

 

 眠ることを忘れた渋谷は、夜になっても人工的な灯りによって、煌びやかに輝いている。

 人々は忙しなく歩き、スクランブル交差点を行き交う。

 交差点を彩っている電光掲示板には、誰かが誰かを襲撃しただの、芸能人のスキャンダルだのと、聞いているだけで鬱屈(うっくつ)としてくる内容ばかりが流れてくる。


 俺は、そんな陰陽が交わるこの渋谷で、とある推しアイドルのライブにやって来ていた。

 平日は冴えない高校教員として、日々忙しく学校を駆け回っている俺にとっての、唯一の癒しの時間。


 ……だった、はずなのに……。


勘解由小路在保(かでのこうじあきやす)

「は、はいっ……」


 地を這うように低く、ドスの効いた声に名前を呼ばれ、俺は思わず萎縮(いしゅく)して丸まっていた背筋を伸ばした。

 今、俺は、推しのライブが行われていた会場の、裏側のこぢんまりとした一室に連行されて、なぜか正座をさせられている。


「何か、申し開きすることはあるか」


 俺の目の前には、さっきまで愛らしくステージを舞っていた推しが、少しばかり汚れてしまっている、朱色のふりふり衣装もそのままに、無機質なパイプ椅子にどっかりと腰掛けている。


「あ、あの、その……」


 おかしい。

 声が出ない。

 さっきまで、推しのために声を張り上げていたからかな。


「……このスーパーアイドル『HARUHI』様の、完璧なセトリをぶち壊しておいて……」


 それとも……。

 ステージ上では、女神のように透き通るような声で歌っていた推しの口から、思わず咳き込んでしまいそうな煙草の煙と共に、男のような低い声が出ているから……。かな?


「……ふぅー……」

 

 推しが持っていた煙草を、灰皿にザリザリと押し付ける。手の甲には、どこかで見たことのある特徴的な星型と、格子柄(こうしがら)の刺繍が施されている手袋が、ところどころ破れて、白く滑らかな肌が見え隠れしていた。

 

 これはきっと夢だ。

 だって俺の推しは、『ぶち壊す』なんて乱暴な言葉は絶対使わないし煙草なんて吸わない。

 宝石のように煌めき、今にもこぼれ落ちてしまいそうなほど大きな瞳で、俺たちを魅了してくれるんだ。


「何も言わずに帰るなんざ、随分と礼儀がなってねぇなぁ」


 だから決してゴミを見るような、死んだ目で人を見下(みくだ)すようなことは絶対にしない。

 

 そう。だから、これは、全て、夢なんだ。

 

「残念ながら、全て、現実ですよ」


 そんな俺の望みを打ち砕くように、俺をここまで連行してきた、グレーのスーツをピッシリと着込んだ長身のイケメンが、笑顔のまま俺の喉元に冷たい何かを当てがう。


 あぁ、神様。


 まだここから入れる保険はありますか。



新連載、始めました。

性懲りも無く陰陽師ものです。

どうかお付き合いくださると嬉しいです。



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