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最強の悪女の仕立て方。~不幸な結婚をしたくないので、悪役令嬢を目指しているのに、なぜかイケメン皇子その他大勢に愛され、困惑しつつも学園生活を満喫していますわ!  作者: いか墨ドルチェ
第二章 悪女は日々、戦いにその身をおくのですわ――初めての決闘とできる冒険者への道

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第72話 いざ、魔物討伐へ! ですわ。

 昼食を終えた二人は、アルフォンスの馬で目的地を目指した。


 街の外へ出て、小さな川を一つ越えると、その先には見晴らしのいいなだらかな平原がどこまでも続いていた。その先に、今日の目的地となるルキドゥスの小高い丘がある。


 昼下がりの平原を馬で駆けるのは何とも心地が良かった。といっても、ジュスティーヌはアルフォンスの前に乗せてもらっているので、馬はそれほど飛ばしているわけではない。だが、それでもジュスティーヌは「今、わたしは冒険に出ているのだ!」という言いようもない高揚感に包まれていた。


 それは後ろでジュスティーヌを支えながら手綱を握るアルフォンスにも、十分すぎるぐらい伝わっていた。彼女が純粋に小旅行を楽しんでくれていることが、そしてその旅に同行できていることが、彼としても嬉しかった。


 ルキドゥスの丘の麓には小麦畑が広がっていて、小規模な集落がある。二人はそこで馬を預けて、丘に登って行った。


 村で聴いた話によると、今シーズン大爪兎による畑の被害はまだ1カ所だけとのことだった。つまり、その近くに大爪兎の巣穴がある可能性が高い。二人は、まずは、その畑の近くの森林を捜索した。


 森に入るとすぐにジュスティーヌは赤い小ぶりな実をたくさんつけた樹木を見つけた。


「ねえ、あれは何の実? 食べられるの?」

「ああ、あれはドッグローズだよ。酸っぱいからそのままは食べられないけれども、乾燥させるとハーブティーの材料にできるね」

「あっちの木の実は? あれはおいしいんじゃない。鳥が食べているから」

「あれはカシスだね。ジャムにするとおいしいかな」

「ブルーベリーみたいにその場で食べられるおいしい実はないのかなぁ?」

「ジュティ、ここに来た目的覚えている?」

「あっ」


 完全に忘れていた。大爪兎を狩りに来たのだ。


「ごほんっ……もちろん! 大爪兎どこかなー?」


 嘘くさいジュスティーヌの仕草に、アルフォンスは苦笑いを浮かべながらも、彼女は本当にかわいいと思った。


「あっ、なんかいる! ちょっと大きなリスかな!?」

「ジュティ待って! それは大ハリネズミだ。絶対に触っちゃだめだ」


 全く警戒心なく走り寄り、動物に触ろうと手を伸ばすジュスティーヌの腕を、アルフォンスはつかむ。


「えっ、あれがハリネズミ!? 全然とげとげしてないけど?」

「触ろうとすると背中の毛がトゲのようになるんだよ」

「へー、そうなんだ」

「ジュティ、好奇心旺盛なのは実にいいことだけど、慣れない場所でやたらなものに触らないようにしよう。どんな危険があるかわからないから」

「うん、わかった」


 と言った傍から、ジュスティーヌは目の前をヒラヒラと横切って行った、大きな青い蝶を追いかけ回っていた。アルフォンスがすっっごい笑顔でこっちを見ていることに気が付いたジュスティーヌは、その場に立ち止まると両手を振りながら言い訳をする。


「追いかけただけで触ってないから!」

「ジュティ、こうなったら手をつないで歩こう」


 口頭で注意しても、好奇心が勝ってしまい警戒心がなさすぎるジュスティーヌは、ついにアルフォンスに移動の自由を封印された。


 そして、ついに1匹目の大爪兎に遭遇する。ジュスティーヌは、すばやくレイピアを鞘から抜き去ると、地面を蹴って飛び上がり、ためらうことなくそれを大爪兎の喉元に突き立てた。一撃にして、大爪兎を1匹討伐できた。


「お見事」


 これには、アルフォンスも手放しでほめてくれた。


 とらえた大爪兎を魔法の収納袋に収め、2匹目を探し出す。エサのおかげもあってか、割と順調にはぐれ大爪兎のオスを見つけることができて、目標の10体討伐まで残すところあと1体となった。


 少しは信用を得ることができたのか、途中からはアルフォンスもいちいち手をつながなくなった。というのも、獲物を見つけたときに、片手がふさがっているのと両手が空いているのとでは、一瞬とはいえ反応に差が出るからである。


 だが、それは完全にアルフォンスの油断だった。手をつながなくなった途端ジュスティーヌは、またやらかす。


「あ、キノコ! これって食べられる?」

「あっ、それは!」


 アルフォンスが答える前に、好物のキノコをもぎ取るジュスティーヌ。


「えっ、もしかして毒キノコ!?」

「あ、いや、毒ではないのだけど」

「もう、びっくりさせないでよ!」

「惚れ薬の調合薬の一つだよ」

「えっ」


 ジュスティーヌは手の中のキノコを放り投げると、キノコから遠ざかるようにアルフォンスの背中に隠れる。


「このキノコの胞子を調合に使うんだ」


 今度は、ジュスティーヌは慌ててアルフォンスのマントで自分の手を拭く。


「ジュティ、今、俺のマントで手を拭いたよね? もし、それで俺が欲情でもしたらどうするつもり?」

「えっ」


 今度は、ジュスティーヌはアルフォンスのマントをパンパンして、付着したかもしれない胞子を落とそうとする。


「そうすると、余計に胞子が飛び散るかもよ?」


 アルフォンスは顔だけ後ろを振り返ってジュスティーヌを見つめた。


「あああ、ど、ど、どーすれば!?」


 オロオロしているジュスティーヌの片腕をつかむと、くるりと身体を反転させて、反対の腕で近くの木に向かって壁ドンならぬ木ドンをするアルフォンス。真剣なまなざしでジュスティーヌを見つめながら、いつもよりもトーンを落とした声で囁いた。


「男が欲情した時にどうすればいいのかを知りたいの?」

「え、ええ、まあ、そんなところかなぁ?」

「簡単だよ。発散させればいいんだよ。そうだな、例えばキスするとかね」

「えっ、ええー! えええーー!!」


 アルフォンスが顔を近づけてきたので、ジュスティーヌはぎゅっと目をつぶって何かを待った。だけど、アルフォンスの唇が自分の唇に触れることはなく、彼の声が耳元でする。


「言っただろ? ファーストキスはロマンチックなところでするって。媚薬に惑わされて初キスだなんて俺は嫌だな」

「だよねー! うんうん、言われてみるとその通り! よし、じゃあ今はやめておこう!」

「ああ、でも、ダンジョンに行くまで待てそうにもないな。早くジュティとキスがしたい」

「えっ……」

「ジュティとキスがしたい」


 2回も言わないでぇ!!


 と、そのとき、何かが動く気配がした。1匹の大爪兎である。

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