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最強の悪女の仕立て方。~不幸な結婚をしたくないので、悪役令嬢を目指しているのに、なぜかイケメン皇子その他大勢に愛され、困惑しつつも学園生活を満喫していますわ!  作者: いか墨ドルチェ
第二章 悪女は日々、戦いにその身をおくのですわ――初めての決闘とできる冒険者への道

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第71話 腹黒皇子は清楚系がお好みのようですわ。

 日当たりのいいダイニングに案内されると、すぐにさきほどの執事とは別の男がお茶とお茶菓子を持って入ってきた。


 それからほどなくして、廊下からガヤガヤ話す女性の声が聞こえてくる。ここのメイドは随分と賑やかな人たちのようだ。


「姫様、お初にお目にかかります。私は殿下の乳母のマチルドと申します。そして、こちらがメイドのミランダとクロエです。姫様がこちらにご滞在の間は、私たちでお世話をさせていただきますね」


 マチルドと名乗った夫人は落ち着いた中年女性だったが、その後ろに控えていた二人のメイドは賑やかというレベルを遥かに凌駕したパワフルおばちゃんだった。


「ミランダです。お姫様って噂のマジョリーヌちゃんでしょ? うちの四男がもうマジョリーヌちゃんの大大大ファンでね。この前もマジョリーヌにタッチされたって家で大はしゃぎでねぇ。あらやだ! あたしったら話しすぎね、あはははっ」


 ミランダのあまりのおばちゃんパワーに気圧されて、「マジョリーヌではなくてマジカールです」と訂正する余裕を失うジュスティーヌ。どうやらミランダの息子の一人は、鬼ごっこ参加者の子どものようだ。


「あらもう、ミランダったら! お姫様をちゃん付けなんて失礼でしょ! ねえ、殿下。嫉妬しちゃいますよね? 『マジョリーヌを名前で呼んでいいのは俺だけだー』って。でもお姫様、噂の100倍、いえ1000倍は美人ちゃんねぇ! うちの嫁にもらいたいぐらいだわ。あはははっ。あ、ちなみに私はクロエです」


 マジョリーヌはわたしの名前ではないですし、そういうあなたも美人ちゃんってちゃん付けしてないですか……?


「あらやだ! あんたの息子の嫁さんだなんて、そのほうがよっぽど失礼よねぇ、マジョリーヌちゃん! あたしらに遠慮は不要ですからね。恋の悩みでも何でも聞きますからね。あらやだ! 幸せいっぱいなんだから、悩みなんてあるわけないか、あはははっ」


「ところで、お姫様は今日お・と・ま・りと聞きましたけど、お着替えはお持ちじゃないですよね? あ、いえいえ、全然いいんですよ! 私らが用意しておきますからね、殿下の好みに合わせたとびっきりのを! あらもう、考えただけで燃えちゃうわ。あはははっ」


 この人たちは、会話に「あらやだ!」とか「あらもう!」とか「あはははっ」が標準装備されている感じかしらと、二人の止まることのないマシンガントークに戸惑うジュスティーヌ。


「えっと、サイズは、ボン・キュ・ボンって感じね! やっぱりマジョリーヌちゃんはかわいい系の下着がいいわよね? あはははっ」


「あらもう! 絶対に殿下は清楚系がお好みだと思いますよ! 清楚でありながらそこはかとなくセクシーなのが! あはははっ」


「いいえ! 絶対にピンクにフリフリリボンがついたのが似合うと思うわ!」


「いえいえ! 白にスケスケのレースが鉄壁よ! これ以外ありえないわ!」


 二人のおばちゃんたちは今夜ジュスティーヌが身に着ける下着の方向性を巡って、譲れない戦いを繰り広げていた。


「あ、あの、寮に連絡をとって、侍女のメリーに着替えを届けるように伝えてもらえないでしょうか……?」


 ジュスティーヌはものすごく遠慮がちにお願いしてみた。


「はい、二人ともそこまでになさい。姫様、寮へは私から連絡を入れておきますね。では、姫様、殿下、ごゆっくり」


 マチルドは穏やかにそう告げると、二人のパワフルおばちゃんメイドを連れてその場を後にした。それと前後してテーブルには昼食が並べられた。


「ごめん。驚いたよね? メイドたちはいつもあんな感じでね。俺は留守をしていることが多いから、マチルドが、自分が淋しくないようにと賑やかな人を雇ったらあんな感じになってしまってね」


 メイドと聞いて、勝手に未婚の若い女性を想像していたが、ここのメイドはさきほどの二人以外も全員既婚・子持ち(しかも原則息子限定)で、近所に住む平民の女性ばかりだそうだ。乳母のマチルドが、アルフォンスに妙な気を起こしそうにもない人を中心に選んだのだろう。なかなかできる乳母である。


 それにしても、怒涛の口撃だった……。ジュスティーヌは同じく平民の女性であるオリビアやアンを思い浮かべた。何となく、彼女たちも20年後、あのおばちゃんたちと同じように「あらやだ! あはははっ」と言ってそうなところが想像できてしまう。


 それにしても、この腹黒皇子は、清楚系が好みなのね! いい情報を聞いたわ。だったら、わたしはこれからキュート系の下着を身に着けるようにするわ。ふっ。あなたの思い通りにはならなくてよ!


 ジュスティーヌはアルフォンスの顔をチラッと見て、胸を張ると勝ち誇ったかのような笑みを浮かべた。


 それを見たアルフォンスは、(また何かかわいらしい悪巧みをしているな、このお姫様は)と思いながらも、目が合ったのでとびきりの皇子さまスマイルを返した。


 だ、だめよ。そんな笑顔を見せたって、絶対に清楚系の下着は身に着けてやらないんだからっ!!


 ジュスティーヌはまだ気が付いていない。彼女の考えたこの腹黒皇子に対するいじわる作戦、下着を見られることが前提になっているということに。

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