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第25話 あのイケメン皇子を丸裸にしてやりますわ!

「ちょっと、セドリック!」

「な、なんですか、姫。俺、何もしてないですよね?」


 アルフォンス皇子から解放されたジュスティーヌ、は会場で必死にセドリックを探した。セドリックは会場の端の方で学友たちと食事をしながら談笑していた。


 そこにいきなり今日のパーティの主役ともいえるジュスティーヌがやってきたものだから、一緒にいた同級生たちは密かに大混乱に陥った。近くで見ると、今日のジュスティーヌもとびきりかわいい。そしてドレス姿の姫は、制服姿の姫よりもちょっぴり、いやだいぶセクシーだ。


 こんな姿をいつも間近に見られるセドリックは幸せ者である。そして、彼女を堂々と口説いていたアルフォンス皇子もだ。


「何もしていないのが問題」

「……と言われましても。では、何をすれば?」

「教えなさい!」

「……と言われましても。何を教えれば?」


 ジュスティーヌはセドリックにより一層近づくと、内緒話をするみたいに「あの男のことについてよ」と言った。


「……と言われましても。誰のことでしょうか?」

「……いや、さすがにふざけているでしょ、セディ」

「ははっ、すみません。アルフォンス殿下のことですかね?」


 セドリックが頭を掻きながら、ジュスティーヌをなだめた。


「お二人は婚約されているのでは?」


 セドリックの学友Aが聞いてきた。


「まさか! あの人に会うのは今日で二回目だし!」

「えっ、二回目? それであんなに親密なのですか?」


 セドリックの学友Bが驚く。


 あつ! これって、もしかして、学園の人気者だった男性を虜にした悪女と思われている系?


「そうなのですか? 姫とアルフォンス殿下は以前からの知り合いなんだと思っていました」


 セドリック自身も驚く。


「はあ? なんでそうなるわけ? セディはよく知っているでしょ、わたしに友達が少ないってこと!」

「あ、いえ、去年、殿下に姫のことをいろいろ聞かれたので、てっきり昔からの知り合いかと」

「あの男が? わたしの何を聞いてきたの?」

「あ、いえ、大したことではないですが、元気にしているかとか、相変わらず剣や魔法の修練に励んでいるのかとか」

「ちょっとまって、どうしてあの人がそれを知っているの?」

「さあ? 王太子殿下に聞かれたのでは? お二人は随分と親しそうでしたから」

「お兄様と?」


 ジュスティーヌには4つ年の離れた兄が一人いた。彼もまたこの学園の卒業生で、先々代の生徒会長を務めていた。小さい頃は兄ともよく一緒に遊んだ気がするが、ある時期からあまり顔を合わせなくなった。なんせ兄はこの国唯一の王子だったから、とても大切に育てられていたのだ。もしかすると、仲良し家族ごっこをさせられたときに、あのアルフォンス皇子とも会っているのかもしれない。


 だとしてもそれって随分と大昔のことだけど、そんな昔のことを彼が覚えていて、わたしを気にかけてくれているってこと?


 ちょっと考えにくいけれども、そうだとしか思えなかった。兄とは疎遠で、もう何年もまともに話をしていないから、明日直接アルフォンス本人に聞いてみるしかないなと思う。


 相変わらずアルフォンス皇子は人気者で多くの男女に囲まれていた。時折目が合うとこちらに目配せをしては微笑んでくる。


 ジュスティーヌは気が付かないふりをしてみた。人気者の男を袖にするなんて、まさに悪女そのものではないか。しばらくこの皇子に付き合ってみてもいいのかもしれないと思う。意地悪で変態なのが玉に瑕だけど。


  ◇  ◇  ◇


 怒涛のパーティから一夜明け、ジュスティーヌは調査も兼ねてジャーナリズムクラブに顔をだした。当然のことながら先輩たち、特に親しいオリビア先輩にめちゃくちゃ突っ込まれる。


「ちょっとちょっとちょっとちょっっと! ジュスティーヌ姫さまあ!! 昨日のアレはどういうこと!? これはウルトラ級の特ダネよ! 私にインタビューさせて!」

「誰のですか?」

「お二人のに決まっているじゃないの、もうもうもう!」


 オリビア先輩がノリノリだ。


「これでにっくきソフィーに勝てる!」

「どうでしょう? 彼女はフレデリク殿下の恋人だから、そもそもアルフォンス殿下には興味がないのでは?」

「まさか、あれは負け惜しみよ!」


 あれ、とは先日、ソフィーに「アルフォンス皇子は皇位継承権が低い」と言われた件のことだ。オリビアによると、ソフィーはアルフォンス皇子にもあのノリ――レッツゴーエンジョイな感じで近づいたものの全く相手にされなかったのだ。


 そもそも学園ではアルフォンス皇子は、戦うことにしか興味のない男だともっぱらの評判だったらしい。だから昨夜はあんなに注目を集めたようなのだ。


「ということは殿下は相当お強いのでしょうか?」

「相当なんてもんじゃないわよ! めちゃくちゃ強くてあの容姿でしょ? それに気さくなお人柄で。だから女子生徒からは大人気なのよ! あ、男子生徒からも超人気ね」

「姫様も気を付けられたほうがいいと思いますよ。なんせ殿下には熱烈なファンがたくさんいるので、逆恨みしてくる奴もいるかもしれん。ソフィーも生徒会の殿下たちに大切にされているから、女子たちの恨みを買っちまっていじめられているしな」


 会長のハッサンが忠告してくれる。


「あれは、恨みを買って当然だし、そもそもいじめられてなんかないから。むしろあっちがいじめている側だし」


 オリビアの言葉に女子部員たちがうんうんと頷く。


「女はみんなそういうよな。かわいそうなソフィー!」

「あー、はいはい」


 ソフィーに同情的なハッサンに対してオリビアは適当な返答をした。


 ジュスティーヌは「気を付けますわ」とだけ答えておいた。


 ふんっ、来るならいつでもご自由にどうぞっ! すべて返り討ちにして、悪女の名をほしいままにしてやるわ!


 闘志に燃えるジュスティーヌであった。

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