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第21話 久々の変態皇子の登場ですわ……。

 振り返るとそこにはあのアルフォンス皇子が立っているではないか。しかも、白い歯を見せて、輝くばかりの笑顔でこちらを見つめている。


 クッ……このわたしが完全に背後をとられるとは! この男、足さばきもさることながらここまで気配も消せるとは。ただ者じゃない!


「ジュスティーヌ姫、どちらへ? ああ、(ようや)くあなたと再会することができました」

「これはこれはアルフォンス殿下、ご機嫌麗しゅうございます。わたくしのことなどとっくの昔にお忘れかと思っていましたわ」

「まさか! どうして愛するあなたのことが忘れられましょうか。片時たりとも忘れたことなどありません」


 その台詞を聞いてアカネたちが露骨に驚く。アカネたちだけではなく、その場に偶然居合わせたジュスティーヌと面識のない人たちもあっけにとられていた。


「殿下、いくらなんでも悪ふざけが過ぎるのでは? 手をお放しください」


 その辺の男に普通に手をつかまれても、ジュスティーヌには振り払うぐらいなんてことはない。ただ、この男、掴む場所や掴み方も簡単には振りほどけないところを狙ってきているのだ。しかも力任せにつかんでいるわけではないのがさらに厄介だ。これでは相手の力を利用して振りほどくこともできない。


 それでいてこの麗しい容貌でニコニコ微笑んでいるのだ。悪質極まりない変態である。この男が繁華街にいるようなナンパ男にでもなろうものならば、世界の平和が脅かされるのは間違いない。


「悪ふざけだなんてとんでもない! 私はいつも本気ですよ。ジュスティーヌ姫」


 じゃあ、なんで今までわたしのことを放っておいたの!?


 と言いたいところだが、それではまるでこの男からの便りを心待ちにしていたみたいではないか。もっとも、ダンスでリベンジしたいとは思っていたが。


「この前の続きで、一曲踊っていただけませんか? あなたとこうしてもう一度踊れることを楽しみにしていたのですから」


 確かに、前回負け惜しみで「もう一曲」と先に言ったのはこちらである。来るべき復讐のときに備えて日々特訓に明け暮れても来た。だが、今日、改めて相手との実力差を見せられ、とてもじゃないがこの男の足を踏むことは自分の力では相当難しいと悟った。


 その事実を踏まえて、このままこの男の申し出を受けるべきか、否か、それが問題だ。などと、悠長に戯曲風に考えている場合ではない!


 待って。もしかして、この人、わたしが足を踏もうとするのに踏めないことに優越感を感じている? そして、わたしを揶揄(からか)って楽しんでいる?


 ってことは、フツーに踊ればいいじゃない! やってやろうじゃないの、極々普通のダンスを! もう足を踏もうとなんてしてやらないんだからね~!


 最初こそ青ざめた顔をしていたジュスティーヌだったが、名案を思い付いてパッと明るい表情になり、最後には悪巧みをしている顔つきになった。


 当然、アルフォンスは彼女の表情をじっと見て、彼女が何かを企んでいることを見抜く。愛しい姫は、今度はどう楽しませてくれるのだろうかと期待に胸を膨らませる。ただ、ポーカーフェイスな彼は、どこかのお姫様とは異なり、それを表には一切出さない。


「ま、まあ、そうですわね、一曲ならばよろしくってよ」


 すました顔でそう返すとジュスティーヌはエスコートしてもらうべく左手を差し出した。アルフォンス皇子は掴んでいた腕を離すと、その手をとって場の中央に進んだ。


 超ビッグカップルの誕生にその場は騒然となった。


 歩きながら軽く周りを見渡すと、彼の弟であるフレデリク皇子はソフィーをパートナーにしている。


 あの皇子、婚約者がいないのだろうけれども、ファーストダンスを彼女と踊るとは、やっぱりソフィーにメロメロなのね。


 一方、副会長のエルドリックは婚約者のヴィクトリア公女と踊るようである。エスコートをしていなかったので、どうなるかと思ったが、よかった、よかったとほっと胸をなでおろす。


 カイト王子もこの前ジュスティーヌに絡んできた令嬢の中の一人をパートナーにしているようだ。あとは、隣のクラスにいるエルドリック王子の弟の姿も見える。


 ちなみに、魔法技術科は3クラスあって、それぞれに違う国の王子が一名ずついる。できるだけ違う国の生徒と交流できるようにという配慮で、同じ国の出身者は違うクラスに配属されるのだ。


 一方、別のクラスや上級生の王子、公子の中にはパートナーを選んでいないものもいる。ファーストダンスのパートナーを選んでいないということは、この場に婚約者がいないということだ。


 この場にいないだけだったらいいが、そもそも婚約者自体いなかったら、ジュスティーヌが彼らの婚約者候補にされる可能性がある。しっかりと確認して、彼らにガッツリ嫌われる対策を練る必要がある。


 などと考えながらキョロキョロしていたら、アルフォンス皇子に、


「今、他の男のことを考えていたりしませんか? あなたには私のことだけを見てもらいたいな」


 と言われる。


 ええ、考えていましたとも! 大事ですから、他の王子・公子たちの婚約状況を把握することは! そのためにここにいると言っても過言ではないので!


「わたくしは浮気性で男癖の悪い女なので、見目麗しい殿方がいるとついつい目がいってしまうのですわ、ごめん遊ばせっ」


 どうだ、悪役令嬢っぽい答えだろう?


 ジュスティーヌは言ってやったと言わんばかりの得意げな顔で皇子を見上げる。


 すると、アルフォンス皇子は不快な顔をするどころか美しい顔に笑みすら浮かべて、


「そうですか、ではよそ見ができないようにして差し上げましょう」


 と返してきた。


 やっぱり、この皇子、正真正銘の変態だわ……!

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