第32話 ボーイミーツガール
ようやくヒロイン登場
30話もヒロインが登場しないラノベってどうなのか
駐屯地の鬼、というよりヴォーンというクトゥルヒのせいで余計な時間がかかったが、俺が西に向かって探索をしてきたのは、高尾駅の北にある植物工場が目的だった。
ようやく本来の目的に向かって進むことができる。
植物工場へのルートが確立できれば、とりあえずの食料問題には目途が立つ。
生きていくためには食料が必要だし、今はまだスーパーやコンビニ、無人の家屋などから集めてきているが、日持ちしないものは傷んでしまっているし、生産が出来ないといずれ底をつく。
長崎病院から高尾駅までは歩いて2時間ほどかかるが、俺たちの足ならアクマと戦いながら進んでも3時間程度で済むはず。
最初はモールからトラックを持ってきて、そのままトラックで移動する案もあったが、さすがに未開の土地で小回りが利かない車での移動は危険すぎるということで、今まで通り徒歩で探索することにする。
ちなみに奈良さんは、今後の食糧輸送も考え、配送業者の営業所からトラックを5台モールに移動させたそうだ。
あと追加で5台は目星がついているらしく、数日中に探索班が回収してくるらしい。
植物工場が確保出来たらすぐに食料を運べるよう、今回繋いだ道を使って、そのうちの2台が病院まで来てくれるそうだ。
俺たちは朝一に移動を開始して、お昼までには到着予定。そのまま植物工場に向かうか避難所などを探す。
植物工場は廿里町という少し山になっているところにあって、国道を挟んで東側には天皇家の墓所などもあるそうだから、神様が降臨している可能性は十分にあるだろう。
もし、神様がいなくても、ニャミニャミ様・ヒュギエイア様・ハリティー様の三柱の力の結晶を神社やお寺などの神の祠があるところへ納めれば道をつなぐ先が出来るだろうと話していた。
秋田さんの部隊がトラックを持ってくる時にニャミニャミ様とハリティー様の力の結晶は持ってきてくれるので、それを受け取ったら俺たちは出発だ。
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「秋田さん!」
「やぁ高屋君、久しぶりだね。いや数日しか経っていないか。毎日必死に生きていると、ずいぶん長い時間がたっているように感じるね。」
「本当に。でもこうやってまた会えて、俺のやってきたことがちゃんと繋がっているって感じると嬉しくなります。」
秋田さんの部隊がモールからやってきた。モールでは4人を1部隊としていて、秋田さんの他に女性が1人、男性が2人。
それぞれ、福島さんが改良したと思われる防具や盾を持っている。
女性はずいぶん若いように見えるな。見たことがあるような…
まずは、ヒュギエイア様と長崎院長に挨拶ということで、屋上に集合。
流石の秋田さんもヒュギエイア様の美しさには少し引け腰になっているかな?コッチーとレベッカにはあれを見て俺の無罪を感じ取ってほしいものだ。
今後の予定はすでに奈良さんたちと話し合った通りなので、特に打ち合わせは無し。
今日はひとまず休んで明日の朝一から行動開始となる。
病院内で戦える徳島さんと自衛隊の三重さんのチームは病院付近の探索を行って生活圏を広げていくことになる。
多摩川まで範囲を広げて、魚釣りをしたいなんて三重さんが言っていたんだけど、多摩川って魚とれるの?
この後は夕食をとって風呂に入って就寝だが、秋田さんの部隊の皆さんを紹介してくれた。
男性二人は、能代さんと湯沢さんという30代前半の男性で、女性は玉乃井さんで、なんと俺と同い年の高校2年生。
名前を聞いて確信したが、俺は彼女のことを知っている。
3人とも秋田さんが戦い方を教え、一緒にアクマを倒してプラーナの量を増やしてきた弟子みたいなものらしい。
秋田さん自身は師匠のように扱われるのが嫌らしく、本当は部隊長も早く誰かに代わってほしいと言っていた。
能代さんは秋田さんを本当に尊敬しているらしく、40代って言うとオッサンだと思っていたが、秋田さんは落ち着きがあってプラーナの使い方も柔軟で幅広く、指揮能力も高いから代わりなんて到底無理、と強く主張していた。
そして、玉乃井さん。名前は美琴で、玉乃井 美琴。
「はじめまして、高屋 穂織くん。最初にして最強の戦士に会えて光栄です。」
玉乃井さんが挨拶してくる。
「ははっ、なんか凄い称号がついているみたいですね。高屋 穂織です。実は俺、玉乃井さんのこと知ってます。Xitterでフォローしてて、こちらこそ光栄です。」
「あっ、わたしのファン?高屋くんも筋肉の魅力がわかる人?」
そう、彼女は筋肉を追い求めし高校生で、若くしてボディメイクの大会で優勝経験もある。比較的Xitterの投稿頻度も高く、その筋肉美と愛嬌のあるコメントで結構人気がある。フォロワー数も800人を超えていて、1,000人も遠くないと言われている。
とにかくカッコいいので、男女分け隔てなく人気がある。
「なんか嬉しいわ。わたしのやっていることをよく思ってくれる人がこんなところにもいたなんて。同い年だし、敬語は無し、ホオリくんって呼んでいい?」
「あーえーっと、じゃぁ玉乃井さん、えっあっ、うん、そう呼んでくれて大丈夫。」
「もう、ミコトでいいわ。よろしくね!」
うん、いわゆる陽キャというやつだ、グイグイ来る。でもファンとしては照れ臭いけどすっげー嬉しいな!
にゃーんと鳴きながらコッチーが俺の体を登ってくる。レベッカも俺の肩の上に着地した。
あ、紹介ね、スミマセン…
「あー、えと、この猫がコッチー、俺の飼い猫っていうか相棒で、このハイピクシーがレベッカ。」
「コッチーさん、レベッカさん初めまして。玉乃井 美琴です。ミコトって呼んでね!
えへへ、二人のことは奈良さんから聞いてるの。最強の雷使いコッチーとプラーナの伝道師レベッカ様ってね!」
コッチーはにゃあんとまんざらではない鳴き声。
レベッカはわかってるわねーと胸を張っている。
え、なに?ミコトさん、二人の扱い上手くない?陽キャのコミュ力ハンパねー。
挨拶もすんで夕食の場、複数人で食事をとるなんて久しぶりな気がする。
「ねぇ秋田さん、植物工場への探索ですけど、わたしたちも一緒に行きません?」
「おいおい、私たちは高屋君の連絡を待つ間、三重さんたちと一緒にこの辺りの安全圏を広げる手伝いをすることになっているでしょう?」
「そうなんですけど、わたしもホオリくんのこと見ちゃったらちょっと悔しくって…。それにホオリくん一人より他にも戦える人がいた方が早く探索も進むでしょ?」
「まぁそれはそうですけどね。ただ残念ながら、高屋君にとって私たちは足手まといかもしれませんよ。」
「っ!わたしだって強くっ」
「私に勝てない程度では高屋君の足元にも及ばないでしょう。」
秋田さんも容赦ないな。
「だったら、ホオリくんと戦わせてください!わたしが役に立つってわかればホオリくんだって文句はないでしょ!?」
「えぇぇ、俺は…」
秋田さんはふぅっと息を吐いて俺に申し訳なさそうに言う。
「高屋君、一度現実を見せてやってくれ。君と玉乃井さんの実力差なら怪我をさせることなく対処できると思う。」
「あ、あぁうーん、はい。ミコトさん、恨まないでよ?」
「この筋肉にかけて!」
その誓いってどのくらいの重みなの?
と言うことで、食事の後にミコトと模擬戦をする。
コッチーは女性に怪我をさせたら駄目よと言わんばかりの顔で見てくる。
この流れ、俺のせいじゃないよね?コッチーはその顔をやめてくれ。
ネタ元のゲームだとヒロインのパーティ加入は結構遅いイメージです。
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