第33話 ハスの蕾
陽キャ(ヒロイン)合流
マハースターマプラープタはさすがに長いなと
「お互い怪我をしないように。では、はじめ!」
秋田さんの掛け声で模擬戦を始める。
確か、ミコトはXitterでキックボクシングをやっていると投稿していたことがある。キックが届く範囲は彼女の間合いだろう。
だが、俺も今回は棍を使わず無手で戦う。さすがに武器ありだと怪我させちゃうし。
正直、負ける要素はない。彼女は操鬼闘法を使えないし、プラーナもまだそこまで検知できていないように思う。
どうしようかなと迷っていると、彼女は迷いなく間合いを詰めて、蹴りを放ってくる。
自分の攻撃に自信があるがある動きだ。
さすがに格闘技をやっている人は攻撃が鋭いが、俺もここまで死線を潜り抜けてきた。プラーナの量も彼女とは比較にならない。
今まで気づかなかったが、動体視力も向上していたようで、ミコトの攻撃が良く見える。
ミコトの攻撃はすべて余裕をもって躱すことができる。
彼女は蹴る、蹴る、蹴る、間合いを詰めてパンチ、パンチ、下がって蹴る。
流れるように攻撃を繰り出す姿はとても美しかった。
攻撃が全く当たらないことにミコトは焦り始め、攻め続けることで息も切れてくる。
そろそろかなと思った俺は、軽く足を払ってミコトが体制を崩したところに寸止めの突きを放った。
ミコトのさらりとした前髪が風圧で揺れた。
「終わりで、いい?」
彼女は何も言わずにコクリと頷いただけだった。
はー、何でこんなことに。俺は少し落ち込んだ気持ちで病院に戻った。
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
翌朝、出発の準備を整え、病院を出ようとしたところ、秋田さんとミコトがエントランスに立っていた。
「わたしも行く。よろしくね!」
俺は何を言っているのか分からず、呆然と立ち尽くし、秋田さんの方を助けを求めるように見た。
秋田さんは苦笑いをしながら説明してくれる。
「すまない、高屋君。私では彼女の覚悟を変えることはできませんでした。植物工場までの道が出来るまででいいから彼女を鍛えてやってもらえないですか?」
「えぇぇ、だって昨日は俺が勝ちましたよね…」
俺が納得いかずにいると、ふくらはぎをコッチーがポムポム叩いてくる。
男は四の五の言わずに女性を守りなさいとでも言いたげだ。
「アンタの負けよ、ホオリ。ミコトの目を見ればわかるでしょ。ああなったら女は引かないわ。ビビってないで甲斐性を見せなさい。」
えーー、なんでアナタ達はミコトの味方なの?憧れの女の子と一緒とか嬉しい以上に緊張するし絶対疲れるよ。
全員が俺を無言で見つめてくる。
「もう分りました、分かりましたよ。でも最優先は植物工場と道をつなぐことですからね。俺はそのためにここまで来たんだし。そこは譲りませんよ。」
はぁーと大きくため息をつき承諾を伝える。
「もちろんよ!足を引っ張るつもりはないから安心して!ありがと、ホオリくん!」
あー笑顔がまぶしい。そんな顔向けられたら断れる男はいないでしょ。女はずるい。
気を取り直して、4人で高尾駅に向かって歩き出す。
この先は未開の地。見たことがないアクマだって出てくるかもしれない。気を引き締めていこう。
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
病院を離れ、しばらくすると多摩川を越えたあたりで遭遇した、しっぽの先が炎になっている小さいドラゴンのアイトワラスや一本足の2mくらい背丈がある人型の一本だたらが現れ始めた。
俺達には慣れた相手だが、ミコトには初めて戦うアクマらしく、アイトワラスの火の玉攻撃や一本だたらの棍での攻撃は間合い的に戦いづらいようで、バレット中心の戦い方になっていた。
ミコトはキックボクシングの経験を生かしたインファイターで、バレットこそ使えるものの、接近戦の方が得意らしい。
ならばと言うことで、俺やコッチーが敵の体制を崩して、ミコトにスイッチするという戦い方をすると、動きにキレが出てきた。
あと、インファイターだが重武装の防御重視ではなく、攻撃は避けるスタイルなので、被弾が怖い。
防御力が上がる操鬼闘法は必須だと思ったので、プラーナを纏う方法を教え、攻撃に集中しすぎず、プラーナの鎧を維持することを優先してもらった。
ヒュギエイア様のお守りのおかげで、エンカウント率自体はそこまで高くないので、ミコトも無理をせずに操鬼闘法の修練をしながら移動できている。
西八王子駅を過ぎて右手に川が見えてきたあたりで、俺も出会ったことがないアクマが現れ始める。
160cmくらいあり、割けた腹から内臓のようなものが見えるクマのぬいぐるみ(アクマ・デバイスによればバグス)や犬の幽霊みたいなやつ(アクマ・デバイスによればイヌガミ)だ。
醜悪なクマのぬいぐるみはパワーはあるがテクニックは無いインファイター。距離を取ると眠気を誘う吐息のようなものを吐き出す。
この吐息は出す前に溜め動作があるので、ミコトの接近戦の相手にピッタリ。
一応、ぬいぐるみらしく火に弱いがよほど数が多い時以外はフレイムバレットは使わない。
犬の幽霊が炎を完全に無効化するので、ぬいぐるみと一緒に現れたときは炎からぬいぐるみを守るような動きをするためだ。
犬の幽霊は炎のブレスを吐くことがあるため、コッチーとレベッカが攻撃を集中させて、できる限り攻撃させずに倒す方法で進んでいく。
ミコトは俺たちに比べてどうしても戦闘経験が浅いが、それでもストイックに自分を鍛えるファイターなので、操鬼闘法の習得も早そうだ。
4人の連携も少しはサマになってきたころ、高尾駅が見えてきた。
高尾駅の近くには学校や大型のショッピングモールもあるが、避難所になっているところはなかった。
高尾駅自体も特に神の気配や避難民は無し。植物工場に向かうため高尾街道に入ろうとした時、レベッカが何かを感じた。
「んー、このまま真っすぐ行った方から呼ばれている感じね。」
Glugleマップによると、この先には金南寺というお寺があるようだ。
「この先にお寺があるみたいだよ。阿弥陀如来っていう偉い仏さまが祀られているって。」
「あっ、それなら神様がいるかもしれないね!期待できるんじゃない?ね、ホオリくん!」
ちょっと、近いって…陽キャって距離が近いから困るんだよなぁ。
ほら、コッチーだって怒ってる。
コッチーの方を見ると、やれやれと言わんばかりの表情で、スイっと先に進み始めた。
それってどういう反応なの?ミコトというより俺に対して呆れてない?
何とも言えない気持ちを抱えつつ、お寺への階段を上っていく。結構高い場所にありそうだ。
階段を上り広場に出ると明らかに空気が違った。これはアタリだね。
本殿の前まで進むと、柔らかい光が辺りを包み、目の前で美しい蓮の蕾が花開いた。
そしてそこには合掌した仏さまが立っていた。
『よくぞここまで来られた。勇まし人の子らよ。私はマハースターマプラープタ。アミターバが右脇侍なり。この国では勢至菩薩と呼ばれることの方が多いか。』
「初めまして、勢至菩薩様。俺は高屋 穂織です。」
「わたしは玉乃井 美琴です。仏さまにお会いできるなんて…。」
『ふふ、ハリティーもまたシッダールタの導きで私たちと道を共にするものなのですよ。』
「あっそうだったんですね。ハリティー様ってこう、すごくお母さんみたいな感じだったので…。」
そんな話をしながら、四人とも挨拶を終え、マハースターマプラープタ様…うーん長いな、勢至菩薩様で…に道をつなぐ相談をする。
勢至菩薩様からは嬉しい話がいくつも聞けた。
エンカウント:Lv17 アイトワラス / Lv17 イッポンダタラ / Lv24 バグス / Lv24 イヌガミ / Lv?? 菩薩 マハースターマプラープタ
ぜひとも★評価・いいね・感想をお願いします!励みになりますm(_ _)m




