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ある鍛冶屋の悲劇~元公爵令嬢と生意気ネクロマンサー シーズン2~  作者: そら・そらら


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47.真相を知ったジャンのこれから

「そんな。親父が……」


 少し後、ジャンはルイーザから来た手紙を読まされて、リリアの素性を信用してもらうと共に、父の死の真相を知ることになった。


 ちなみに手紙には、リリアは声が大きい以外は信頼できるから安心してくださいと書かれていた。まったく。ルイーザ様は気にしすぎです。


 なるほど、ジャンは怒ったような顔をした男だ。ちょっと怖い。手紙を読んで表情が険しくなれば、特にそう思える。

 もちろん悪人ではないけれど。


「ジャンさん。ジャニドさんがギルド長の奥さん……ユレーヌさんから毒を盛られる機会はありますか?」

「ある。鍛冶屋の会合はしょっちゅう開かれている。ギルド長の家でな。そういえば鎧の仕事に取り掛かる前も会合があった」

「そういうことです! 奥さんが甲斐甲斐しく、お茶を淹れてくれることもあるでしょう!」

「だが、まさかユレーヌが……」

「お母さん。なんてひどいことを……あの、リリアさん! こういう時ってどうすればいいんでしょうか!? 兵隊さんに相談して、お母さんを捕まえてもらうとか!」

「いえ! それは難しいです! 証拠がないので!」

「そうですか……でも! なにか方法があるはずです! お母さんに毒を渡した人がいるんですよね!? その人が白状すれば」

「しないと思います! その人たちは今頃、口の聞けない状態になっているはずです!」

「……なんで?」

「詳しくは秘密です!」


 手紙にも、レオンの能力や仕事について詳しくは書かれていない。

 リリアが文面をジャンたちに見せることを見越してやったのだな。さすがルイーザ様。こういう所は頭が回る。


「ルイーザ様たちの事情がありますので!」

「そっか……うん、そうですよね! ルイーザさんたちも、なにか抱えてるんだよね! うん、わたしたちを気にかけてくれてるの嬉しいし、そこの気持ちは考えないとね!」


 元気に振る舞おうとするアニエスを見て、リリアは胸が痛んだ。


 辛いのだろうな。自分の母が、恋人の父を殺したなんて。それも自分のせいで。


「うん、そうだよね! それに、ギルドの家と揉めたらジャンも困るよね! ねえジャン?」

「そ、そうだな……」


 そんな風に話を振られてもジャンは困るだろう。けど、ジャンは強い男だった。不安を隠しきれない恋人の肩を抱き寄せて、リリアを見つめる。


「リリアさん。あんたは、この件がどうなるかわかっているのか?」

「はい! お任せください! レオンさんたちが、きっと解決してくださいます! 鉱山開発で死人が出た件も、世間ではあまり騒がれない形で解決されているはずです! ……信じてください」

「そうか。わかった」


 恋人の母が関わっている、父の死。ジャンも内心穏やかではないだろう。


 謎の多すぎる少年が事態を解決する。それも、世間的にはおおっぴらに出来ない形で。


 信じろと言われても無理な話だ。証拠がなく、ギルドと揉めたくないから官吏には話せないという一点以外で、レオンに託す理由はない。

 それでも、ふたりはレオンとルイーザを信じてくれた。


 肩を寄せ合い、親のことはともかく互いを信頼していて、この困難を乗り越えようとしている。

 いい夫婦になるだろうな。出来れば、アニエスには親のしがらみを全て断ち切った上で結婚してほしい。


「今の俺の仕事は、あの鎧を完成させることだ。今日、男爵家の息子が来る。ひとりでな」

「ヘクトルさんですね!」

「詳しいな」

「はい! お仕事頑張ってください!」


 男爵家の家族を調べてルイーザたちに伝えたのがリリアだとは、彼らは知らない。知る必要もないだろうし。


「息子自身に、どうしたいかを決めさせる。そして親に、それで納得するように説得する。あるいは息子にさせる」


 レオンの提案だ。今日は学校が休みの日。だからヘクトルが来る。


 彼がどれだけ、ジャンの考えを知った上で訪問するかはわからない。気弱な青年ということだけど、両親を説得するなんて使命を与えられるとは思ってないかも。

 ジャンのためにも、頑張ってもらわないとな。


「俺はその準備をしないといけない。リリアさん。あんたを家に置くのは構わない。家のことはアニエスに聞いてくれ」

「はい! ありがとうございます! アニエスさんもよろしくお願いします!」

「え。あ。はい! よろしくですリリアさん! ええっと、キッチンから案内するべきでしょうか。これから、お料理はリリアさんが作る……んですか?」

「はい! 確実に毒の入っていない食材を買ってきて、私が作ります!」

「あー。なるほど。わたしも手伝ってもいいですか?」

「もちろんです! 買い出しに行くとかは駄目ですけど、家事は是非ともやってください!」

「外に出るのは駄目なんだ。家に帰るのも?」

「そうですね! ご家族が心配されますか?」

「ううん。ジャンの家にいることは知ってるから、行方不明になったとは思われないはずです。わたし、ちゃんと伝えてますから! えっへん……」


 こういう、調子が軽いのがアニエスの元来の性格。けど、今は元気がなさそうだった。


「お母さんが毒を盛ったって、本当ですか?」

「はい。レオンさんたちの推測なら、間違いないでしょうね」


 手紙は断定口調で書かれていた。おそらく、ジャニドの霊の返事もあってのことだろう。だから間違いない。


 証明する方法がないだけだ。

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