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『魔』導士大戦編17

その17


 ラン・シシィーマールの部屋。


「山から降りられないのよね。あなたは」


「なんでも先代の遺言だと。バカバカしいジジィの遺言なんか守れるか。やっと自由になれたのに。姉はわたしよりずっとまえに山から降りてる。ホントならわたしが先に降りるはずだった。姉は逃げたんだ」


 なるほどね、ココでよほどつらい魔法修行をさせられたのね。


「一つ聞いてイイ?」


「ナニ?」


「瞬間移動の魔法を使える?」


「瞬間移動か……」


「ソレが使えれば、山の麓までひとっ飛びで行けるんじゃないの」


「なるほど、たしかに。が、アレは準備に時間がかかる。だけじゃない……。失敗したらとんでもないトコに飛んで二度と戻れなくなる可能性も」


「え、そうなの先代の魔法で仕用人を飛ばして麓の店に買い物へ行かせたと聞いたわよ。そんな危険な魔法とは……。あなたがまだ未熟だからかしら?」


「違うわ。それ、マリーのコト言ってるのね。彼女は自分で飛んでるんだ。しかも、彼女のは魔法ではない」


「魔法ではない?!」



 階段のリフォーナ。


 ノノ、おそいわね。見つかって捕まったのかしら。相手は子供でも二代目ラン・シシィーマールだから。大丈夫かしら、ちょっと言ってみよう。


「あの、まだココに居らっしゃったんですか?」


 あ、マリーさんだ。まずい。


「もう一人の……」


「あ、あの娘はトイレを探しに」


「この上の階のトイレは、ご主人様の部屋にしか有りません。ですから……」


 そこへノノが。

 三階から、今いる階段へ飛び降りてきた。


「リフォーナさん、スゴイコトを聞いた!」


 私の横に着地したノノは。


「あ、マリーさん!」


「上へはご遠慮願いましたよね」


「あ、すみません」

「ノノ、トイレは見つかった?」

「え、あ、あったには有りましたけど……」

「よく見つけたわねラン・シシィーマール様の部屋しかないのに」


 ああ、そうなんだ。そういうコトか。


「トイレを探しに廊下をドタバタと。もう漏れそうで。そしたら、ラン・シシィーマール様の部屋のドアが開いて。ココにあるから使えって」

「そう、良かったわね。他人の家でお漏らしは最低よ。ましてラン・シシィーマール様のお屋敷で」

「助かりました。あの子が良い方で」


「そういう事ですか……。私はご主人様のとこへ。お客様方はお部屋にお戻り下さい。では」


 マリーさんは、あたしたちの横を通り足早に三階へ上がって行った。


「ノノ、上でナニを?」

「リフォーナさん、詳しくは部屋で。戻りましょ」


 部屋に着き。


 リフォーナさんとあたしはベッドに座り。


「ノノ、三階でナニがあったの?」

「あのマリーっていう仕用人のことです」

「あの人が?」

「瞬間移動の魔法はウソでした。本来、簡単に使える魔法でもないし、危険もともなうと」

「危険?!」

「魔法で、飛んだらどこか別の世界へ飛び帰れなくなる恐れがあると。二代目が」

「でも先代は、買い物に使用していたと。そんなあぶない魔法で仕用人を買い物に行かせていたの」

「ですから、魔法で行ったわけではないのです。あの人は」

「あの人ってマリーさんが……」

「はい、二代目が言ってました。あの仕用人が自分の力で瞬間移動してたんです」

「自分の力ってナニ?」

「仕用人のマリーはジャンパーなんです」

「ソレって瞬間移動能力者なの」

「はい、二代目はそう。コレはラン・シシィーマールと彼女しか知らないコトと」

「なるほど、ではラン・シシィーマールの魔法で麓まで買い物に行ってたわけではなかったのね」


「リフォーナさん、あたしは二代目に頼まれ事を」

「何を言われたの?」

「ココから連れ去ってと。たのまれたんです」

「二代目は先代の遺言で成人するまで山から出られないのよね」

「そうなんです。彼女魔法使えば、いくらでも逃げることは可能なんだそうです。でも、そこは子ども。そうして山から降りたはいいが、山の下の世界を全然知らないので不安だそうで。あたしたちと一緒ならと……」

「で、ノノはどうしたの?」

「あたし一人では、決められないからみんなに相談してみると」


「なるほど、私はいいわよ二代目でもラン・シシィーマールを下山させると師匠に」

「じゃあとはブキに」

「彼に聞くまでもないわラン・シシィーマールを連れて帰れば魔法使い免許皆伝なんですもの喜んで協力するわ」


 翌日の朝


「お世話になりました。朝食美味しかったです」

「じゃ姉弟子帰りますか、午前中は天気がいいようです。早く第六休憩地まで行きましょう」


「マリーさん、お弁当ありがとうございます。ラン・シシィーマール様によろしく」


「早朝ですのでお送りできなくてすまないと、ご主人様が」


 まだ、夜が明けたばかり。


 マリーたちに別れをつげ、窪地の上に。


 そしてそこから。


 ブキは杖の上に立ち、リフォーナさんはバナンの青い実を出して魔法で大きくするとあたしたちはまたがり。


「ノノ、こいつで帰りは一気に滑り降りるわよ。この目あてを付けて」


「じゃ姉弟子、お先に」


 ブキは少し雪の上から浮いた杖に立ち乗りし下山した。 


 器用に滑り降りてくみたいに見えるが、あれは飛んでるんだ。


 バナンの実は太くて長いから。飛ばずに雪の上を滑り降りる。


              つづく

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