『魔』導士大戦編1
その1 砂漠の町
「もうすぐ町が見えてくるわ。がんばるのよ」
思ったより大砂漠を渡ってきたので水が足りなくなった。荷の水袋には、もう一滴も残ってない。
ジローの歩きもよろよろと。
前方で大きな陽炎が揺れている。
町らしき建物が見えない。
「変ねぇ……。この砂漠広すぎ、私もめまいがしてきた。」
あら、ジローが止まった。
クォン
「もう限界かしら。ジロー!」
こんなトコで動けなくなるなんて。
クァア
空で声が、サバクワシかしら。
私たちサバクワシのエサになってしまうの。
そういう死に方は、したくないな。
バサバサと翼の羽ばたき音と人の声がした。
「あんた大丈夫? 目がうつろだよ」
「その大きな鳥で……」
「そうよ、こんなのか。馬車隊で大量に飲料水とか、持たないとこの砂漠を渡るのは無理よ」
「一度渡ったんだけど……」
「そうなんだ、いつ頃? ココの砂漠は年々広がってるんだ。最近は、こんな馬一頭じゃ……。あ、コイツは馬じゃないのね。ナニ? コイツ」
「あ……。人はジローを鎧ネズミと……。はぁお水あるぅ?」
「あ、ゴメンネ。しんどいのに話しして、水飲んで。ゆっくり……」
わあっ助かった。水だわ、しかも冷たい。
「途中のオアシスで入れた水だから、まだ温まってないだろう。しかし、鎧ネズミって。人が乗れるほど大きくなるの? わたしが見たのはウサギくらいのが一番大きかった。コイツは大きいわ。コイツ水飲める?」
「ええ、私よりバテてるわ。飲ませてあげて」
大ワシに乗って現れた女性は別の水袋をリュックから出しジローの砂に埋まった頭を掘り水を。
「ホントだ。コイツ長い舌を使って飲んでるアリクイの舌みたいだ。もしかしたらコイツ鎧アリクイかもね」
「アリクイ? 考えたことなかった。ジローはアリは食べないわ……」
「もう少しでタータンの町へ行けるよ。あと、コレ、マルコの実。二つあげるから、頑張って町へ来てね。わたしは先に」
あっ、行ってしまった。
名前も。お礼もしてない。
少し休んでると日が沈みはじめた。寒くなってきた。まずい、夜になる前に町に着こう。
あの人は、もう少しと。
私は夜になる前にギリギリで町の灯りを見つけた。
町に着いたときは夜に、しかし町は明るかった。
人はまだ寝ずに酒場で騒いでいる様子。
相変わらずにぎやかな町ね。
仕事しがいがあるわ。
町のほぼ中央あたりに井戸を見つけ、水を補給した。
町長の事務所はドコだろ?
町の井戸はタダじゃない。ここは砂漠のそばだからね。
「お嬢さん、無断で水をくんではいかんな。ほら書いてあるだろ町長事務所にて料金を払ってからと」
やはり、町の人間だろう。中年のおじさんが。
「あら、暗いので見落としたわ。そうだろうと今、町長さんの事務所を探してたトコ。何処かしら?」
「そうかい。事務所は、あそこだ」
見た目はまわりの家と変わらないし、看板も出てない。あれじゃわからない。
「まあ、たいした料じゃないからな……。カネはいらんが」
「とおさ〜ん誰? わたしが言った人?」
事務所の隣の家から人が。
聞いた声だ。
「らしいな。珍しいかっこうをした金髪の女性だ! あんた、砂漠を渡ってきたのか?」
「はい、アレはあなたのお嬢さん?」
「いや、年の離れたワシの妻だ」
「あ、ホントだ来たね。鎧ネズミのおねえさん」
「砂漠では、ありがとう。命拾いしたわ」
「こんなトコじゃなんだからウチに来なよ。腹減ってるんじゃないか。たいした物はないけどさ」
やはり砂漠で助けてくれたワシに乗ってた娘だった。
招かれて家に行くと、旦那さんはこの町の町長だという彼女は名をレジーニと言った。
「エエッあんたが吟遊詩人のローラ・レイさんか? まてまて私がローラ・レイを見たのはガキの頃だった。いや、もう少し……。前のカミさんに出会った頃だったが、まだ成人前だ。あんたその頃見た時と変わらんな、いくつなんだ!」
「町長さん、女性に歳を聞くものじゃないわ。わたしもね、知り合った頃。『この毛も生え揃ってない小娘が、いくつだ!』ってね」
「おいおい、何度も言ってるだろ結婚したんだ町長さんはやめなさい!」
「だって町長さんだしぃ。流れの吟遊詩人さんかぁ。ローラ・レイさんって言うのね、聞いたことあるわ。わたしも流れ者家族の人間でココでは、よそ者だったんだ」
「そうなの、でご家族は?」
「亡くなった。砂漠の地トカゲ族の襲撃でこの町の人たちと一緒に戦ったんだ」
「それは……。おきのどくに。地トカゲ族の話は聞いたことあるわ、ココに来る途中に襲われないかと……」
「私等の闘いで奴らは全滅したよ。まあ関係があるのかないのか、あの戦いの後からか年々砂漠が広がってな。夜なんで、わからなかっただろうが町の三分の一は砂で埋まってるんだ」
「そうなのホント、わからなかったわ」
私は親切な年の離れた町長さん夫妻に食事と寝床を。
翌朝、町に出た。
砂で埋まったという町の反対側には畑があった。この村はべつに砂漠の真ん中にあるわけではないので畑の作物でそれなりに栄えている。
その先には山も見える。
コチラ側に来ると砂漠が眼の前に広がっている町の入口とは別の場所だ。元はナニかあったんだろう。砂丘の所々に家の壁のような物が見える。
さて、今夜の仕事場所を探さないと。今夜は宿を探さないとね。
「あんたは?」
畑作業に来たと思われる馬車の老人に声をかけられた。
「昨夜町に着いた旅の者です。昨夜は町長さんの所に」
「そりゃ良かったな。町長の若い女房は器量が良いで」
「ええ、私。砂漠であの人に救われました」
「あんた、一人で砂漠を……。ソレは良かったの。アレ、ワシあんた見たことあるな。ここは初めてじゃなかろう」
「ええ、二度目です」
つづく




