光の降臨2
「フレシェン卿、そなたの言う私の裏切りとは、ダールバイの何に対する裏切りだというのだ?」
ケレスティヌスが質問で返す。フレシェンと呼ばれた枢機卿は多少、嘲りの混じった表情を見せて、
「ダールバイそのものに対する裏切りだ。猊下はクヴァルティスの馬共と結託して、800年続いたこのダールバイを滅ぼそうとしているのだ」
「ダールバイは滅びぬ」
ケレスティヌスは、声を大きくして告げる。
「確かに国としては滅びるだろう。だが、我々の本分は国にあるのではない。教義にこそある。フレシェン卿はそこをはき違えてはいないか?」
「詭弁だ。教皇が国主であってこそダールバイなのだ。それを蔑ろにする猊下は教皇に相応しくない!」
また、賛同の声が数人から上がる。それに乗じるようにフレシェン卿は饒舌に持論を展開した。
「ちょうどこの場は『神威現出の間』であり、選出権を有する枢機卿も全員が揃っている。教皇の新たな選出には都合がよいのではないか?」
枢機卿達も口を開き、フレシェン卿の発議を話し始め、広間は一気に騒然となった。
ニヤリと下卑た笑みを口元に浮かべるフレシェン。
「この状況でそれを言うのか」
ディバイニスが呆れたように小さく呟いた。
「成り行きを見守るしかないだろう」とマルティンは小声で答える。フレシェン卿は、この場が、ケレスティヌスを弾劾し教皇の座から下ろすチャンスと考えたらしい。そして、おそらくは、次期教皇の座をフレシェン自身が狙っているのではないか。
その言動が真に愛国心や信心から来ているのなら、それはそれで素晴らしいのだが、マルティンの目にはそうは映らない。
戦勝国であるクヴァルティス人が同席している中で、臆面も無く私欲にまみれた言動をするというのは、自分の立場が理解できていないと判断せざるを得ない。
ケレスティヌスがまた手を振り上げ、会話を制する。そして、
「奇遇だな、フレシェン卿。私もそなたは枢機卿に相応しくないと思っていたところだ」
一段低い声でそう告げると、ケレスティヌスも笑みを浮かべた。
「何を?」
フレシェンが訝しみの表情を浮かべるのとほぼ同時に、ケレスティヌスがが口を開く。
「教皇の権限において告げる。フレシェン枢機卿。並びにグレルオール枢機卿、タシニアン枢機卿、ナトゥール枢機卿。以上4名を枢機卿から罷免する」
「ふ、ふざけるな! そんなことが許されるとでも……⁈」
フレシェンの怒りの台詞は、最後まで繋がらなかった。
それよりも先に、不可思議な事象が起こったのだ。
突如、広間がまばゆいばかりの光に包まれたのである。




