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弟子の仕事と紋章学2

基本的な紋章構成は、中心に1つ、主となる紋章パーツが描かれ、その周囲に複数の違う紋章パーツが描かれるか、その逆に中心に複数のパーツが描かれ、周囲に同一のパーツが描かれるかの2バターンがあるようだ。さらに、装飾化された文字は主に古代語を記すのに用いられている。古代語はサルヴ語がほとんどで、文法などは入塔1年目の教養で習っている(言語はティケはあまり得意ではなかったが)。

基礎本の4分の3ほどを終えた頃には、ティケは紋章学に対する興味が沸いていた。

曲線をモチーフにした物や、直線をモチーフにした物、それらを混合した物。数多くの紋様が彩る紋章は一見、なんの規則性もないようにも見えるが、よくよく分解して見てみると、とても高度な様式美の中に成立していることが見てとれる。

ただ漫然と眺めるだけでも紋章には美が宿っている。そんな気がした。解析することで、さらに紋章の深奥を覗けるような気がした。

もっと多くの紋章を見てみたい。

そう思ったティケは、ギムル師に頼んで他の書籍を手に取る許可をもらった。

「紋章の解読法は教えていないはずだが、何が気に入ったんだい?」とギムル師。

「意味は判らないですけど、規則性があって、それが美しさにつながっている気がします」

ティケは思うままに述べた。

すると、ギムル師はしてやったり、という感じに、にんまりと笑みを浮かべた。

しかし、それもすぐに消えて、不意に真面目な表情ーーと言ってもフードを被っているので顔の下半分しか見えないがーーをして念を押すように付け加えた。

「ただし、見るだけだ。書き加えたり、書き写したりしてはいかん」

「判りました」

紋章を学び始めたばかりの自分にはまだ早いのだろう。ティケは、そんな風に師の注意を理解した。

基礎本の学習を進める傍ら、紋章図版本と呼ばれる書籍に片っ端から目を通していく。図版本には、基礎本に記載されているものとは比べものにならないほどに緻密で複雑な紋章が収められていた。紋様の意味が理解できていないので、ただ眺めるだけなのだが、それだけでも十分に興趣をそそられる。

そうしてティケは紋章学の虜になっていった。

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