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遭遇ーー白い少女4

「そうか。バルバラ達は死んだのか」

と言うレーイの表情は相変わらず変化が乏しかったが、声音には明らかに感傷的なものが混じっていた。

バルバラは『カヴァリエリの徒』の中で、数人のグループのリーダー役をしていた少女で、イエッタとは仲が良かった。つまり、ノルンの手にかかったのはバルバラ派のカヴァリエリの徒だったということになる。

カヴァリエリの徒として数えられていたノルンという少女が魔族だったという情報は、エライアスには少なからぬ衝撃を与えていた。

「つまり、千年紀戦争には魔族も参加できるということか。魔族が世界の管理者になるというのは確かに危険に思える。イエッタさん、あなたの行動はその可能性をできる限り排除しようとした結果だった訳ですね」

「ええ、そうです」

イエッタは澄まして頷く。

だが、エライアスは彼女の壮大な勘違いにため息が出る思いだった。

確かに、早とちりも甚だしいな。

と頭の中では考えてしまうが、そんなことは表面にはおくびにも出さないエライアス。

「それで、現場から立ち去ったあとは、特に何もしていないと?」

「ええ」

イエッタは恥ずかしそうに頷く。

こんな、人の寄りつかない遺跡で独りぼっちで過ごしていたというのだから、なんの行動も起こしていないのは当然だ。いや、起こせずにいたという彼女の心情にも同情の余地はある。

しかし、それでは不味い。エライアスはそう結論付けていた。

エライアスが気にしているのは、タクラス市に蔓延していた不穏な雰囲気。あれは何か火種を投入すれば、引火して爆発する類の危険性を孕んでいる。具体的には、ダールバイ人の不満が爆発し、その矛先が現政治体制に向き、反乱に発展する恐れがある。その規模と危険度は判断しようもないが、軽度で済むとは思えない。

それだけ『四聖徒』という存在はダールバイ人にとって尊崇の対象だったということでもある。

そして、その火種となり得るのが、このイエッタという少女。何しろ、ダールバイ人が敬う『四聖徒』を殺してしまっているのだから。

彼女の扱い如何で、今後のダールバイの行く先が変わるようにエライアスには思えた。

だが、イエッタが集まったダールバイ人達の面前で『四聖徒』殺害について謝罪したとしても、鎮静効果は望めない。それどころか、一部のダールバイ人が暴徒化してイエッタに襲いかかり、逆に返り討ちに遭い、さらに恨みが増す可能性すらある。

ならばいっそ、現政権のところに彼女を送り込んでみてはどうだろうか。

レーイが出会って話したというマルティン・アル・クヴァルティス王子とその配下の参謀は、なかなかのやり手のようだ。イエッタをうまく扱ってダールバイ人の不満を逸らすことくらいのことは、やってのけるのではないか。

そう結論を出したエライアスは、イエッタにマルティン・アル・クヴァルティスと会うよう勧めることにした。


ちなみにだが、このような思考は一介の年代記作家の考察範囲を逸脱している。まっとうな年代記作家であれば、既に起こった出来事の真相に関する考察と希望的観測を行いはするが、これから起こる出来事への干渉は極力避けようとするだろう。それは年代記作家が第三者的で客観的であらねばならないという矜持に依るところが大きい。

このことは、客観性の意識が薄いエライアスが、ただの年代記作家ではないことを示している訳だが、それを明らかにするのはまだ先のことである。

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