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白峰 結

その女子高生は白峰 結と名乗った。

彼女は同じ市内にある高校の生徒だった。

彼女の存在は神原を悩ませた。

もしこの世界が自分の人生を責めるために造られた世界なら、彼女の存在もそのためなのか…

今までやってきたことも、造られた設定なのかもしれない。

神原の家庭も、父親も母親も、学校も、クラスメイト達も、先生も、全てがただの設定なのかもしれない。

この神原という人物そのものも。

そのことは、常に頭にあった。

それでも、彼は精一杯やってきた。

今度は後悔しないために。

それと、もう一人の人生、もし他人の人生を生きているなら恥ずかしくない生き方をしなければいけないとも。

白峰 結という存在もただの設定なのかもしれない。

それでも、彼は今までやってきたように精一杯やりたいと思った。


二人は連絡先を交換もしたが、時々会っていた。

それはどちらかといえば、彼女からそうしたがっていたからだった。

前の世界に二人の子供を残して別の人生を演じなければならない。

その負荷が彼女を苦しめていた。


「紬も陽も私がいなくなって…」


彼女の心配は当然だった。

しかし、神原は別のことを考えていた。

もし、彼女が自分を責める存在として設定されているなら、前の世界の彼女は存在しているだろう。

そして、自分を責めるためなら…

妻と同じことになっているのかもしれない…

本人は還るつもりでいるが…

このことは彼女には話せるわけもなかった。


会ってるのはほとんどが彼女の話すことを聞くためだった。

連絡先も交換しているのに。

誰でも誰かに話しを聞いてもらいたいものだ。

そんなことは神原には十分わかっていた。

前の世界でもそうだ。

いつも聞き役だった。

それも彼に相談してくるのはなぜか女性…

時には恋愛相談も。


俺は信用されてるけど、圏外なんだなあ(笑)…


その都度ちゃんと話しを聞いて、それなりに考えて答えた。

そうするとなぜか、女性は幸せをつかむのだ!

だから、そういう女性は、彼のことを教祖様などと冗談半分に呼んでいた。


今回も、そんなことになればいいのにとはおもってはいたが。


そのうち、クラスでは神原が他校の女子高生と付き合っているのでは…という噂が流れた。

無理もない。

会っていれば目撃もされる。


「神原、彼女できたんだってー(笑)」

瑞樹達に冷やかされもした。


「まあね〜(笑)」


その都度、適当に合わせていた。


しかし、その割には、彼の様子が少し変わったことに気づいていたのは雨宮だった。


なんかおかしい…彼女ができたのに全然楽しそうには見えない…


目撃情報には少しおかしな情報もあった。

彼女が泣いていたという。


彼女ができたのに、その彼女が泣いてるなんてどういうこと?

神原君はクズ?

ゲス野郎?


白峰 結は自分が転生したから、以前のように明るくあっけらかんとしていた白峰 結にはなかなかなれなかった。

その変わりようは彼女の両親を心配させていた。

それを彼女はわかっていた。

自分も親だから子供を心配する気持ちは痛いほどわかっていた。

それなのに、子供を心配する自分を別の親が心配する。

この状況がまた彼女を苦しめていた。

だから、誰かに会って直接吐き出さずにはいられなかった。

その相手が神原だった。

彼もその彼女の気持が十分すぎるくらいわかった。

人はそんなもんだ…

俺も誰かこうやって話せる相手がいたら…

白峰 結はそんなときによく泣いた。

人前もはばからずに。


「少しは落ち着いたか?」


彼女が話してる途中で泣き始めると、神原はいつも黙ってそのままにしていた。

声もかけなかった。

きっとそんな二人は男が別れ話でも持ち出して彼女を泣かせているという風に見られていたかもしれない。

神原にはたとえそうだとして、自分がそう見られたとしても、そんなことはどうでもよかった。

自分には彼女にこんなことしかできない。

そう思っていた。

自分だって還る方法はわからない。

当然彼女を還してあげたくてもわからない。

もし、自分を責めるための設定彼女なら、還っても妻と同じかもしれない。

そう考えてることは絶対彼女には言えなかった。

希望を奪うことになるからだ。


あ…結局俺は彼女を助けられない…

妻を助けられなかったように…

こうやってこの世界はこんな残酷なことをしてまで俺を責め続けるのか…


そう思うようになってますます彼は虚ろな表情をすることが多くなった。


そんな神原をみていた雨宮は神原に声をかけた。


「神原君…あまり楽しそうじゃないね…」


何のことかは言わなかった。


「あ…そう?ちょっと愁いがあるのもいいでしょ(笑)」


そうやって適当に誤魔化してみた。


「神原君はほんと謎が多いよね〜あの時ことはっきりと覚えてる…」


あ…保健室のこと…


「お墓のこととか…」


神原は雨宮がそんな話をしてくるのが不思議だった。

でも、なぜかそれが彼をある方向に向かわせた。


「なあ…雨宮…もし、君が母親で子供を残してどこかへ連れて行かれたとしたら…」


「いや…ちょっと待って…それ、もしかして小説?前も言ってた…だとしても…だとしても…ちょっとおかしいよ…なんか小説の設定がどうのの話には思えない…」


雨宮のその反応は神原をますますある方向に向かわせた。


「だったら…もし…小説の話じゃなかったらだけど…」


「どういうこと?」


「いや…ただ、そうだとして…聞いてほしいんだ…話を…」


神原は自分が誰かに頼りたくて、今目の前にいて、かなり突っ込んで話をしている雨宮についつい何もかも打ち明けそうになっていた。


「神原…どうして…」


雨宮の顔は困惑していた。

神原の目にはうっすら涙が浮かんできた。


もしかして彼女なら…

そう思い始めたら歯止めが効かなくなってきていた。


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