第44話 不可視の斬撃
「ルイーゼ、少しいい?」
裕斗の呼び止めると、ルイーゼは足を止めてこちらを見た。
「なんだ?」
「もし、なんだけどさ。また“ランスロット”が暴走したら、迷わず僕ごと核を打ち抜いてほしい」
「……!お前、それは」
「お願い。また都合よく暴走が収まるとは限らないんだ。可能性の低いことに賭けるより、安全な策を取った方がいい」
「…………」
ルイーゼは眉間にしわを寄せ、沈黙した後、しぶしぶといった感じで返事を返す。
「…………分かった」
「ありがとう」
これで心おきなく戦える。
裕斗はルイーゼと分かれ、“ランスロット”に乗り込んだ。
「魔力接続開始」
“ランスロット”と接続するが、特にいつもと変わらない。左手も思った通りあまり戦闘に支障はなさそうだった。
『あの、ユウトさん。武器はどうするんですか?』
通信魔導具からシーラがそう聞いてきた。
そうだった。
元々持っていた“アロンダイト”は破壊され、今は丸腰となっている。
まずいな、と裕斗は思ったが、格納庫の隅にある刀の存在に気づいた。
この刀は侍型の魔導騎士から頂いたもの、戦利品と持って帰ってきたものだが、まさかこんな所で役に立つとは思わなかった。
「とりあえずこれを使います」
裕斗は刀を手に取り、再び戦場へと躍り出た。
***
裕斗が出撃すると、ルイーゼの“トリスタン”、戦闘機が船から飛び出る。そこまではいつもと同じなのだが、もう一機、魔導騎士が船から飛び出た。
パープル色の鎧、馬を思わせる四つ足。左腕が無く、ところどころ装甲がひび割れているが、それは須藤麻衣が乗っていた魔導騎士だった。
敵か!?と思ったが、その魔導騎士は持っていたランスから放った雷で暴走魔導騎士を薙ぎ払う。
「ふふん。驚いた?」
ホロモニターにヴァネッサの顔が映る。
「ま、まさかヴァネッサが乗ってるの!?」
「ええ。所有者はもういなんだから、有効活用させてもらうわ」
つまり、敵からパクったと。
やり合った機体と肩を並べて戦うのは複雑だが、この緊急時、有難く使わせてもらうとしよう。
「分かった。それじゃ、後方から敵機の足止めをお願い。核の破壊は僕とルイーゼがやる」
「了解!任せたわよ!」
こちらに迫る魔導騎士を雷で貫き、動きを止める。
それを“ランスロット”の刀で、“トリスタン”の矢で仕留め、手際よく敵機の数を減らしていく。
——いける!
裕斗が勝利を確信した時、それは訪れた。
『右前方に特別機の反応ありです!』
「ッ!?」
シーラの言った場所を見ると、そこには黄色の鎧に身を包んだ魔導騎士が立っていた。
胸には核がない。
つまり、英二たちの仲間であることはすぐに理解できた。
「その白い鎧、お前が榊原裕斗か」
ホロモニターに、搭乗者らしき男が映る。
映し出されたのはサングラスをかけた、チャラそうな男だった。
「……そうですが、何か?英二たちの敵討ちですか?」
「ん~まあそうだな。ぶっちゃけると、あいつらがやられたことなんてどうでもいいんだが、舐められるのは勘弁何でな。死んでくれや」
そう言うと同時に、魔導騎士は無造作に手を振る。
「……!」
何かやばいと思い横に大きく飛ぶと、地面が爪痕のような抉れ方をする。
「な……!?」
不可視の攻撃!?いや、違う。
よく見ると彼の魔導騎士の指先からにキラキラと光る細長い何かが伸びていた。
「これは……糸か!」
「ほお、よく“バアル”の特殊兵装が分かったな。……だが、分かったところでどうするよ!?」
“バアル”は再び手を振るった。
「くっ!」
裕斗はそれを避けるが、糸が細長く、魔力でできているからか半透明で見えにくいせいでほぼ勘だ。
耳をつんざく音とともにすぐ近くにあった地面が抉れる。
後少し回避が遅れていたらどうなっていたかと思うと、心臓が縮みそうだった。
「止めろ!」
ルイーゼは矢を放って止めようとするが、左手の糸が矢を切り裂いた。
「邪魔しないでくれるかなあ。お前たちは後で料理してやるからよ」
“バアル”は両手の糸を裕斗に放った。
不可視、広範囲の攻撃。
「ッ!」
裕斗は避けるべく大きくジャンプしたが、完全に避けることは叶わず、鎧の端が切断された。
まずい。
さっきの攻撃は避けられたが、次の攻撃は避けられない。
——どうすれば。……いや、もしかしたらこの糸。
「ルイーゼ!魔眼で糸を見れないか!?」
「魔眼で?……なるほどそういうことか!」
ルイーゼは裕斗の意図をすぐに理解し、右眼を覆う眼帯を外した。
糸が魔力でできたものならルイーゼの魔眼で見えるはずだ。
「はん!他人が分かったところで、お前に分かるかよ!」
「右上方向に大きく避けろ!」
指示通り避ける。
先ほどと違い、糸はかすりもしなかった。
「なにぃ!?」
男は慌てて糸を放つが、ルイーゼの指示に従いそれらを避けた。
そしてついには“バアル”のいる場所まで肉薄した。
「しまっ……」
「はああああああ!」
裕斗が止めを刺そうとしたその時、
「カ……」
再び何かが裕斗の意識を飲み込んだ。
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