30話 エピローグ? ~先輩と後輩~
「ダルマッ!
桝 茂樹の魂魄を緊急回収!」
「その名前で呼ばないでください、先輩!
ちゃんとアウロラって名前があるんですから……。
今やってるところです」
幼女姿の女神メルの隣に座る後輩女神アウロラが、真面目な表情のままフチ無しメガネをクイッと上げる。
それから自分の白いノートPCのキーボードを叩き始めた。
その側には獅子ナビの人形が置かれていた。
女神メルは白のヘッドセットを装着するとマウスを操作する。
「1課 強化勇者派遣科のー、あっ課長?
お疲れ様です、4課 44分室のメルです。
至急ノキロールに勇者の派遣をお願いします。
…………いや、尻拭いと言われてもこちらも仕事でして……。
……はい……はい、お願いします。
あ、今度飲みにいきません?
いいお店見つけたんですよ……はい、では失礼します」
チッと舌打ちをしてメルはインカムを外す。
「また対応が遅いと怒られましたか」
「いいのよ、別に。
こっちとあっちじゃ目的が違うから。
あっちは優秀な人材を一杯抱えてるんだから、
面倒を押し付けてもすぐ処理するでしょ」
「いえ、ウチも目的は同じはずですけど」
アウロラはチラリとメルに視線だけを向ける。
この後輩は仕事は出来るけれど不愛想で扱いづらい。
しかも成人女性の姿でスタイルが良いのがまたメルの気に障る。
「いいったらいいの!
ロリコンは魂の病気なんだから、それを治すのが44分室の使命!
魔王討伐は1課に任せればいいのよ」
「しかし今回はむしろ病気を悪化させた気がします」
パソコンのディスプレイに向かったままアウロラは会話する。
「むむむ、魔王や他の魔族まで子供の姿だったのは予想外だったわ。
茂樹も私の予想を超えたアホだった。
いくら容姿が好みでも、普通魔族と仲良くなるか?」
「だから魂の病気なんでしょう」
「この姿に生まれた私に神様は仰られた。
その姿に生まれた事に意味がありその先に真理がある、と。
私は私の姿を卑猥な目で見る全てのロリコンを憎む!
だから矯正してこの世から全てのロリコンな魂を根絶やしにするのよっ!!
これこそ我が神様のご意思、そして心理っっ」
イスの上に乗り片足を机に乗せてメルは熱く語る。
慣れた光景なのか、アウロラは表情も崩さず黙々と自分の作業を続ける。
一度だけ先輩女神のスカートの中に視線を走らせたが。
「さーて、じゃあ茂樹をもっと酷い世界に転生させてやるか。
候補のリストアップをお願い、アウロラ」
イスから降りながら指示するメル。
「はぁ、でも次の凶悪ロリコンの魂のデータが来てますよ」
「むぅ、じゃあ茂樹は私がやるわ。
貴女は次のを担当して」
「わかりました」
イスに座ると驚異の速さで仕事をこなすメル。
「ウフフフフ!
足掻き泣き叫べ茂樹。
ロリコンの魂に罰を、もっと地獄を与えん!」
天界の庁舎の白い廊下に、
『魔王対策部』
の案内板が掛けられたその先には長い廊下が続く。
その左右に無数の白い扉があり、そのずっと奥の扉のプレートには、
『4課 44分室 ロリコン処理科』
と書かれていた。
扉の上の『勇者派遣中』のランプが消える。
「お昼行こうよ、アウロラ」
「お弁当を持ってきてますので」
「あ、そう……」
「ダリア=ソイネさんの料理を真似て作ったんですけど。
作りすぎたので先輩も食べませんか」
「いやー、今日はイタリアンって気分だから外に行くー」
「……そうですか、行ってらっしゃい……」
<終わり>
もう少しだけ続きます。
次回、「トゥルーエンド編」開始です。
最後でストレスマッハになった方、申し訳ありません。
全ては女神様の手のひらの上だったんです。




