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29話 ヤヨイ、運命の時 2

 魔王は倒したし。

 さて帰るか。

 早く帰ってダリアちゃんの顔が見たい。


 むっ、空から魔族反応!


 次々に異形の姿の魔族が降りて来る。


 やれやれ、魔王軍の雑魚を片付けないと帰れないか。


「ぺっぺっ!

 我を泥まみれにしおって、やるではないかヤヨイ!」


 荒れた土の中から魔王と四天王が這い出てきた。


「見ろ、マントの先が焦げてしまったわ!


 大儀であったテルメ」


「ははっありがたき幸せ。

 ただ今日中に体力完全回復は無理かと」


「かまわぬ」


 緑の肌の幼女と会話する魔王。


 HPを確認すると四天王は体力が1/3に、魔王は半分まで削られていた。

 しかも少しずつ数値は上がり回復している。


「くそっ!」


 再び光魔法<神光降射>の他に最強の火炎魔法や氷結魔法を繰り出す。

 雑魚魔族は巻き添えを喰らって半数に減り、生き残った奴は後退する。


 しかし結果は同じ。

 HPをある程度までは削れるがそれ以上は無理だった。


「ダルマ、ダルマッ!!」


「呼ばれて飛びでてジャンガリアン」


 ポンッと音とともに黄金色の獅子ナビ、ダルマが後方に現れる。


「どういう事だ、敵に攻撃が効かないぞ!?」


「灰魔術は魔族の回復と強化を行う魔法です。

 人間で言うと白魔法ですかね。

 勇者様と魔王が話してる時も灰魔術師はせっせと仕事をしてました」


「ザービ、状況を報告しろ」


 魔王は紫肌の幼女に声をかけた。


「はっ、命中率は低いですが幾つか魔法が効力を発揮してます!」


「黒魔術は敵の能力を減じます。

 デバフって言うんでしたか」


 慌てて自分の能力を確認する。

 MPが1/3まで減少していた。

 最強とはいえ攻撃に使った魔法の消費量は1/3にも満たない。

 残り1/3以上が消されている!


 攻撃力や魔力、防御力も少しずつ減っていっている!


『状態異常:攻撃・防御・速度ダウン、回復妨害』


 が、追加表示されている。


「勇者よ、もしかしてお前はアホなのか?

 魔力の高い攻撃魔法だけで我を殺れると思うたか?」


 魔王が呆れた顔を向ける。


「魔法は重ね掛けが基本とチュートリアルで教えましたよね?」


「うるさい、うるさいっ!」


 えーーーっと、状態回復の魔法はどこだっけ?

 デバフ魔法防御の魔法もどこかにあったはず。


「バカが! 魔法を使わせるかっ」


「うおっ!?」


 気が付くとアメクがすぐ側で蛮刀を振り上げていた。

 慌てて避けたが肩を斬られる。


「くっ!」


「戦いの最中によそ見なんてしてるからだ!」


 咄嗟に<鉄鎖捕縛>の魔法をかける。

 この魔法だけは目をつぶっていても出せるほど身体が覚えた。

 アメクを初め四天王と魔王の身体に鎖を巻き付ける。


「なんだ、こんな児戯の魔法なぞ」


 魔王はおろか、四天王もオーラで簡単に鎖を砕く。


「だから魔法は重ね掛けが――」


「――だからうるさいって!」


「アイツは誰と話しておるのじゃ?」


「……どうやらヤツの後ろに女神の使いがいるようです。

 ボンヤリとしか見えませんが」


 魔王の問いに、眼を薄目にした灰魔術師のテルメが答える。


「存在がバレたので退散します。

 しかしいくら能力がカンストしているとはいえ、

 サポート仲間を一人も連れないなんて無茶しましたね」


「お前、教えてくれてないじゃないか!」


「ソロプレイとパーティ組んでの戦いが違う事、ゲーム好きならご存じでしょう。

 それも日々戦っていれば自ずと解る事。

 毎日ソロで戦い続けていれば、自分で補助魔法を使いながら攻撃できる術も身につけれたでしょうが」


「んむむ……」


「女神様が最後に贈られた言葉を覚えてますか?」


「パンツ見せてあげる?」


「『ゆめゆめ鍛錬を怠らぬよう』――」


 ダルマの姿が消えると、その場所にテルメの攻撃魔法が撃ち込まれた。


「すみません、逃げられました」


「まあよい」


 <英雄驚嘆>の剣を出し、<俊足舞踏>と<遅延可視>の魔法を自分にかける。

 あとは、あとは……剣にかける魔法ってどれだ?


 ダルマを再び呼んで聞くヒマは無い。

 アメクが蛮刀を振り回しながら迫り。

 シューターの弓矢も迫ってくる!


 私は大きくジャンプして魔王に斬りかかる!

 コイツさえ倒せば!!


 魔王は黒い大鎌を出すと。

 綺麗に攻撃を受け流し、くるりと回ると私の背中を斬った。


 痛い、ものすごく痛い!

 アーマーとドレスワンピの防御力で軽症で済んだが、白のワンピが赤く染まる。


 <英雄驚嘆>の衝撃波は地面を大きくえぐっただけだった。


「なんじゃ、コイツ?

 力だけで剣の腕は素人そのものではないか!?」


 私は今まで剣道すらまともにやった事が無いし、剣術なんてもってのほか。

 この剣で戦ったのは弱い獣とゴーレムを一撫でしただけ。

 百戦錬磨の魔王と剣では渡り合えない!


「魔王様が相手になる必要はありません。

 私で十分ですよ。

 勇者よ、私の事を無視するとはいい度胸だな!」


 魔族最強の騎士が近づいてくる。

 二人の魔族の魔術師は忙しく指を動かし、彼我のステータスの差が縮まっていく。


 探せ、探すんだ!

 この状況を覆せる魔法を!!

 なんでもいいから、なんでもいいからっ!!!!!





 全てが手遅れだった。

 なす術も無く赤い幼女に散々斬られて。

 アルミの矢に何十本と射抜かれて。

 雑魚の魔族に囲まれて殴られ蹴られ。

 HPが高い分、即死も出来ない。


 アーマーも砕けて服も千切れて血まみれで地に倒れる。

 HPがやっとゼロになり「死へのカウントダウン」が始まる。


 倒れた拍子に本を落とす。

 読み込まれてボロボロになった本。

 あの子が大切にしていた、宝物の本。


「ごめん、ダリアちゃん。

 もう会えなくなるよ」


 魔王が近づいてブーツで踏みつける。


 幼女のブーツ。

 これは最後のご褒美だ。


 それより、女神様のパンツは何色だったのだろう。


「名ばかりの勇者よ、とっとと逝ね」


 黒い大鎌が心臓を刺し貫いた。

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