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12話 お迎えと幼女

【6日目】


 今日の朝も一緒に起きて、以下略。

 朝食を二人で囲んでお喋りタイム。


「ヤヨイちゃんが沢山作れって言うから、朝食をいっぱい作ったんですよ」


「うん、だからそれをダリアちゃんが食べるの」


「えええ~。

 こんなに食べれませんよー」


「ダメ、ダリアちゃんはいっぱいいっぱい食べて食べて食べて食べて食べて!

 ぶくぶく太るんだよ」


「太りたくないよ!」


「今のダリアちゃんは細すぎるの、栄養が全然足りてない!

 女の子は少し丸みがあるほうがいいの!!」


「…ヤヨイちゃん、時々変な事言うので怖いです」


 あ、ヤバい。

 オッサンの部分が出てたか!?


 俺はいつのまにか立ち上がり、こぶしを固めて力説していた。

 ……これじゃあ確かに気持ち悪いな。


「地下倉庫のいっぱいの塩漬け肉は私のため?」


「あ、うん、そうそう」


 イスに座り直す。


「ヤヨイちゃんは丸い女の子の友達がいいの?」


「丸いとかじゃなくて、もう少し肉を付けて健康になろうって話」


 ダリアちゃんが食事のスピードを上げて肉が大盛りの皿を片付けていく。

 そんなに急に食べると胃に悪いよー。


「ヤヨイひゃん……」


 あーあ、口の中に詰め込み過ぎだって。


「夜眠れないの?

 ずっとゴソゴソしてるよね」


 ギクゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!!!


「あーあーその、

 枕が変わると寝つきが悪くなるんだー、あははは」


「ふーん、修行の旅なのに大変だね」


「も、もうそろそろ今の枕に慣れるかなー、あははははは」


 うん、いくらダリアちゃんの寝顔が可愛くてもゴソゴソは良くないな、ゴソゴソは。

 なんて俺は変態だー、変態ですよ何か?


 ダリアちゃんはやっぱり料理上手。

 オルトスの肉の野菜炒めを堪能していると。


 ドンドンッと玄関の扉が荒々しくノックされる。


 また村長かな、今度は何が出たんだろう。


 村長が現れる事はなく、傲慢に叩かれるノックが続く。

 考えてみれば赦しもなく他人の家に入ってくる方が非常識だ。

 ダリアちゃんを手で制して俺が玄関へ向かう。


「はーい」


 表には長身で身体の線が細い灰色のカイゼル髭の紳士が立っていた。


「庶民のクセに貴族を待たせるとは何たる失礼!

 とく早く出て参れ!

 大体ですな……」


 すごい怒られている。


「爺、おだまりなさい!

 下がっていなさいっ!」


 少女の声の命令に紳士が身を引いたので外の様子が見えるようになった。

 いつの間にか家の前には白地に金の装飾の入った豪奢な馬車が横付けされてた。


 馬車の扉が開くと。

 黄色と白色と所々にダイヤが光る豪勢なドレスの、ピンク髪の少女が降りてきた。


「キャシーさん、おはようございます。

 ダリアちゃんに用なの?」


 ご領主の娘さん、キャシー=フライシャー。

 初日に会って以来だ。


「誰ですの?

 村長に聞けばヤヨイがここに居るって聞きましたから!

 それより、どうして別荘に訪ねていらしゃらないの?」


 右手の扇子が左手の上でせわしなく動いてる。

 またツンツンとご立腹のようだ。


「訪問のお約束をしましたっけ?」


「なんですって!?

 あのお約束を忘れるなんて失礼にもほどがありますわ!!」


 うーん、何だろう。


「パーティの時、キャシーさんは途中で帰ったよね」


「ええ、庶民共が野蛮な料理を勧めてくるんですもの、

 食べ疲れて帰りましたわ」


「あ、けっこう楽しまれたんですね。

 帰られるまでに約束とかしました?」


「おはようございます、キャシー様」


 ダリアちゃんが挨拶をしてもキャシーちゃんは気が付かず、

 絹のハンカチを加えて、キーッと言って憤慨している。


「ヤヨイちゃん、たぶんだけどアレですよ!

 ピンチになれば真っ先にお助けしますって」


 ダリアちゃんが耳元で囁く。

 可愛い声と息でくすぐられて、耳が癒される。


「ああ、アレかー!

 何か困った事でも起きたの?」


「起きてませんけどっ!

 それでも側に仕えるのが私のナイトでしょうっ」


「私はキャシーさんに従うつもりは無いですよ?」


「なっ、なんですってー!!」


 朝からよくそんなに怒れるなあ、と感心する。

 キンキンと高い声が耳に響くので落ち着いて欲しい。


「友達になってくれたら、いくらでも助けるよ」


「友達……ですの?」


「うん」


「そ、そういう事でしたら友達になってあげてもよろしいかしら。

 どうしてもと頼まれるのであればですけど」


 頬を染めて視線をそらして髪をいじくるキャシーちゃん。

 デレるのがチョロい。


「じゃあ友達になってくださーい」

「ヤヨイがそこまで言うならなってあげますわ」


「いけませんお嬢様!

 仮にも領主の娘が庶民と仲良くなるなど……」


「爺は黙っていて!

 馬車に戻ってなさいっ」


 紳士は背筋を伸ばして美しい姿勢のまま馬車に戻る。


「お友達になったのですから、ヤヨイ。

 貴女をわが家の別荘にご案内しますわ」


「別荘?」


「キャシー様は夏だけご家族でここの別荘に来られるのですが。

 今は魔王軍から遠ざかるために、お一人で滞在されているそうです」


 再び後ろからダリアちゃんが囁く。

 声が可愛いすぎて耳が溶けそう!


「せっかくだから行こうか」


「え!?」


 ダリアちゃんの手を掴むと目を見開いて驚かれた。


「さっきからなんですの、その後ろの子。

 ヤヨイのメイドですの?」


「この子はお友達のダリア=ソイネちゃん。

 ダリアちゃんとも友達になって欲しいから一緒に行くね!」


「ええええええ!!??」


「なんですってー!?」


 プルプル震えてイヤがるダリアちゃんを無理やり馬車に乗せて出発する。


 端で小さくなってるダリアちゃん。

 ダリアちゃんの事を話す俺。

 俺が話すほど不機嫌になるキャシーさん。

 同じく不機嫌なカイゼル髭の爺。


 そんな面々を乗せて馬車は進む。


 鉄製の高い柵と大きな門をくぐって暫く進むと馬車は止まった。


「おおっ!!

 これが別荘!?」

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