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決着


 ルパート王子に連れてこられたのは、先日閉じ込められた部屋だった。あの時は何も考えずに入ったが、閉じ込められてしまうと中に入ることを拒絶した。立ち止まってしまった私にルパート王子は不思議そうな顔をした。中に入るように促されても足が動かない。


「この部屋は何? この間、庭に出るまでとても時間がかかったわ」


 ルパート王子の柔らかな視線が居心地が悪くて、先日のことを聞いてみた。まだ婚約者でしかない自分に知らされていないことも多いと思うが、何も知らずに再び閉じ込められるのは嫌だ。

 ルパート王子はわたしの警戒した様子に困った顔になる。


「この部屋は隠し部屋なんだ」

「……私を連れてきてもよかったの?」

「今は使われていないからね。ここを休憩所にしているのは僕くらいだ」

「ふうん」


 納得できるようなできないような?


 今までわたしにも隠していたぐらいだから、教えるつもりはなかったのだろうけど。

 ルパート王子は腰を抱く手に力を入れて、わたしを部屋の中に連れて行った。わたしは仕方がなく部屋に入る。


「できればここで待っていてほしかった」


 ぽつりと呟かれたけど、わたしは聞かなかったことにした。

 あれほど待っていたのにさらに待っていろとは。

 しかも密会の後にわたしに会おうとしたということでしょう?

 恐ろしく不誠実だと思うのだ。別に心惹かれてしまうのは本当に仕方がないと思う。やはり二人同時にというのは気持ちが辛い。


「そろそろ来るかな」


 ルパート王子は小さく呟くと、わたしをぎゅっと抱きしめた。驚いて離れようともがく。


「暴れないで。エレイン、愛しているよ」


 愛していると言われてぴたりと動きを止めた。信じられない思いで彼の顔を見上げれば、目が合った。その目には前と変わらない愛しい思いが溢れている。


 どういうこと?

 あの令嬢に心を奪われたのではないの?


 わからなくなってしまう。


「ルパート殿下」

「殿下は付けないでほしい」

「でも」


 問答していると、扉を開けるような音がした。驚いて顔をそちらに向けようとしたが、ルパート王子にキスされて動けなくなる。

 いつものような軽く触れあうようなキスではなくて、食われてしまいそうなほど深いキス。

 体はきつく抱きしめられ、うなじを抑え込まれているから顔も動かせない。抗議の声を上げようとしたけど、声も上げることができなかった。


 本当に食べられてしまいそう。


 吐息すらも漏らすことができずに体を震わせた。


「どうして……!」


 ルパート王子の存在しか感じていなかったのに、第三者の声がして我に返る。驚いて目を開ければ、ルパート王子からのキスも終わっていた。だけど、強く抱きしめているのは変わらない。逃げられないようになのか、顔を彼の胸に押し付けられている。


「君こそ何故ここに?」


 ヒヤリとした声音だった。不安に思って顔を上げれば、無表情な彼がいる。思わず息を飲んだ。こんなにも冷ややかな表情をするなんて知らなかった。いつだってルパート王子は暖かな表情しかわたしには見せない。

 今側にいるのは支配する者の顔だった。


「え、だってルパート様、わたしを誘っていたじゃない」

「誘った覚えはないけど? 婚約者との逢瀬を邪魔するなんて無粋だな」

「婚約者……? 解消してくれたんじゃなかったの?」


 今の状況がよく呑み込めなくて、そろりと彼女の方へと視線を向けた。今度はルパート王子に止められなかった。

 不安が少しづつもたげてくる。もしかしたらわたしが夜会に参加したのがいけなかったのかと自信がなくなってきた。だけど、彼女の訳の分からなそうな表情とルパート王子の無表情さに次第に気持ちが落ち着いてきた。二人が心惹かれあっているなど、誰が見ても思わないだろう。


 でも、それならなぜ?


 彼女はわたしも知らなかったこの場所を知っているのか。疑問が沢山湧いてくる。


「ここは隠された場所だ。どうやってここがわかった?」

「それは」


 ルパート王子の怒りを押し殺したような低い声にようやく雲行きが怪しいと気がついたのか、彼女は口ごもる。


「それにこの場所は許された者しか入れない場所だ。前にも警告したはずだ。二度目はないと」

「ルパート様はわたしを好きになってくれたんじゃないの?」


 縋るような声にルパート王子が嗤った。


「僕が君に? そんなこと思ってもいないよ。どちらかというと、他国の間諜だと考えている」

「間、諜?」


 茫然とした様子で彼女は呟いた。


「そうだ。今までも沢山の婚約者のいる男にすり寄って金を巻き上げてきたじゃないか。そんな女が王太子である僕にすり寄り、王族しか知らない道を知っている。疑うなという方があり得ない」

「ちがう……! 今までだって相手が好意で勝手に……」


 狼狽えながら言い訳をしているが、ルパート王子はこれ以上は聞くつもりはなかったようだ。逃げられないように入り口を塞いでいる騎士たちに連れて行くようにと指示をした。


「やめて! 放して! お願い、話を聞いて」


 彼女がもがきながら叫ぶが、ルパート王子は指示を変更しなかった。ひきずられるようにして彼女が部屋から出て行った。

 その様子をただただ見ていたわたしは何がなんだかよくわからなくなった。 


 わかったことは。

 ルパート王子はわたしに彼女がなんであるのかを知らせるためだけに、ここにいさせたという事だった。




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