1 裏通りにて
「どうしたもんかな……」
自分のメモ帳をめくりながら逸見ヒロトシは考え込む。
書き込まれた様々な情報。
小さな小さな出来事の羅列。
それらから様々な可能性を見つけていく。
メモ帳に書かれてるのは、ここ最近の出来事だ。
今日はいつものあいつがいなかった。
昨日は見かけない人間が出入りしていた。
見かけたあいつが少し羽振りがよかった。
連絡がとれなくなった奴がいる。
こんな些細な出来事が。
いつもの日常といえる事が並んでいる。
一つ一つはが大した事がない。
だが、いくつも集まると、ぼんやりとした違和感が浮かんでくる。
今までいたものが消えている。
いなかったものが現れている。
それはなぜ?
考えても答えは出ない。
だが、何かがありそうだとは思う。
「…………これかなあ」
別のメモ帳をポケットから取り出す。
そこにはこれまでの経験と体験から得られた教訓が並べられている。
巨大都市の底辺をはいずるなかで得た、生き残るためのやり方。
それらと出てきた可能性を照らし合わせる。
もしかしたら何もないかもしれない。
だが、何かが起ころうとしてるなら準備が必要になる。
警戒してしすぎる事はない。
ヒロトシはこうして生きてきた。
だから今も死なずに済んでいる。
何かがあやしい。
だから対策をしていく。
今回も同じようにやっていく。
全てはいつも通りに。
メモ帳をポケットに戻して裏道へ。
ゴミと塵と人間と死体が転がる狭い路。
ビルの間を、襲撃を警戒しながら進んでいく。
「今なら大丈夫なはず……」
絶対ではない。
だから、これまで集めた情報と、ここで過ごした経験を信じる。
駄目だったら諦める。
割り切っていないと、ここでは何も出来ない。
途中、寝転がってる者達に告げていく。
「しばらくこのあたりは危なくなるぞ」
返事はまたない。
一方的に伝えるだけ。
だが、それを聞いた者達のうち何人かは動き出す。
それを確かめることなく、ヒロトシは進んでいく。
警告はする。
だが、聞き入れるかは相手次第。
ヒロトシにそれ以上は出来ない。
だが、繰り返してきた行動は変化をもたらしていく。
以前は誰も聞き入れなかった声。
それに反応するものがあらわれてるのだから。
それが町の裏側でヒロトシが手に入れたものの一つ。
それ以外のものにもこれから出向いていく。
今後のために。




