16話 還る
「あぁ……なんで? なんで?!」 目の前には、心臓の辺りからぽっかりと穴が開いたスレイムの身体。
それは、言葉にしなくても“死”を意味していた。
「スレイム……スレイムさん!!」
――なんで? どうして?
僕が……彼女を殺したのか?
反逆者は? どこへ行った?
決着はついたのか?
頭の中がぐちゃぐちゃになって、何もわからない。
この焦燥、胸の奥が痛い――そうか、これは“心の痛み”だ。
「ななし……私は……だいじょうぶ、だ……うぅ……」
彼女の胸から溢れる血が、僕の心をさらにかき乱す。
どうしたらいい? この人を助けられないのか?
こんな痛みがあるなら、いっそ身体が痛い方がいい!!
わからない。
ただ、視界の端に――自分の身体から“何か”が溢れているのが見えた。
――これは……?
「001、聞こえるか」
(……ああ、聞こえる)
僕はここまでの道のりで、ある確信に辿り着いていた。
「この人に、僕の血を――。
それに、この空間は今、僕の魔力で満たされている」
「僕は……きっと人間じゃない。
僕にある特性は、たぶん《喰らう》ことだ。」
(……)
彼は何も言わない。
けれど、その沈黙がすべてを語っていた。
(……できるのか?)
「やらないと、たぶん彼女は還ってこない」
息を整える。
001が暴れたおかげで、身体は冴え渡っている。
満ちた魔力を一滴残さず吸収し、彼女の魂の残滓を探る。
同時に、胸の穴へ血と魔力を注ぎ込み――縫い合わせていく。
視界が歪み、意識が沈む。
――色のないはずの空間が、いくつもの色で満ちていた。
過去と記憶、願いと痛み……たくさんの“経験”がこの部屋を形づくっている。
その奥へ進むと、赤い髪が光を放っていた。
「スレイムさん……帰りましょう」
「なんで……そこまでして助けに来た!」
「僕は……あなたが消えたら、悲しい。
だから――あなたを、救いたい」
震える手を、強く握った。
その瞬間、色の世界がほどけていく。
そして――。
目を開けると、スレイムの胸の穴は消えていた。
彼女はゆっくりと息をし、瞳を開く。
「……ただいま」
「――おかえりなさい」
静かな微笑みが交わされる。
しかし次の瞬間、彼女は自分の胸元を見下ろした。
……布が裂け、素肌がのぞいていた。
沈黙。
目が合う。
「見たか……?」
「い、いや……っ」
――ドゴォッ!
気づいたら僕は吹き飛ばされていた。
(なぜ…こちらまで痛い?あの女……魔力の濃度が高まっている……?)
ここまで読み進んで頂いた方へ、感謝を申し上げますここから放穴編が終わるまでの話を書かせて頂こうと思っています。
お楽しみに




