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転生した元天才大魔術師ですが、かつての弟子に「俺を欺いた罪を贖え」と求婚されています【コミカライズ】  作者: 皐月めい


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その後のお話/エピローグ

本日3回目の更新です。

ここまでお読みいただきありがとうございました!



 すべてが明るみになった後、ミラー公爵は当然ながら有罪となり、生涯投獄されることとなった。

 

 公爵家は取り潰しとなり、すべての財産が没収された。没収したその財産はこれまで彼が目的のために犠牲にしてきた遺族に還元されることになったが、カールはそれを辞退。慈善事業に充てられることとなった、


 ウィザード家の取り潰しも免れたものの、マクシミリアンも同じく投獄された。ディアナが考案した鎮静の結界すら解除してしまう能力を危険視され、これからは幼い頃のディアナと同じく、魔力封じの首輪を課せられることとなる。


 それについて、何かを思うことはできない。

 ただこれまで過ごした時間について、一人だった自分を助けてくれた人間の一人として、忘れないとだけ決めた。


 ラスターが張り直した結界は、もう二度と解呪がされないようにラスターの人生をかけて改良し続けていくと宣言した。


 それと同時に、万が一のための防護柵や備えが大陸中に普及されるよう、国王が法律を制定した。


 リディアは精霊士としての力を認められてしまったが、ミラー公爵やマクシミリアンを捕縛した功績に対する報奨として、王宮精霊士への道を辞退させてもらった。


 けれども、これからは大っぴらに人を救っていける。貴族も平民も問わずに治癒を続けるフリー精霊士として、この力を使っていくことに決めた。


 そうして過ごしているうちに、あっという間に日は経って――





「わあ!」


 久しぶりに訪れた、王都の街。以前ラスターと二人で訪れたあの日に約束したお祭りに、リディアとラスターは来ていた。

 街が、紫色の花であふれている。空にきらきらと輝く青色の結界がその花々を柔らかく淡く照らし、町全体が以前見た時よりもずっとずっと活気のある華やかさに満ちていた。


「やっぱり、女の子はみんな格好をしてるのね!」


 年齢を問わず道行く人々が皆、黒いローブを身に着け頭には薄紫色の花を飾っている。あちこちで踊っている人や、歌を紡ぐ吟遊詩人もいた。


「……一体何のお祭りなの?」


(十五年ほど前にできたって言ってたけど)


 ディアナが亡くなってすぐに、何か大きな出来事でもあったのだろうか。書物を読まないリディアは歴史に疎い自信がある。


(いえ、ラスターの身に起きたことならきちんと把握しているけれど。……普通の出来事はねえ。なかなか……)


「……この祭りは、世界で一番美しくて偉大な、大魔術師への感謝を込めて作られたものだ」

「ええ? 私以外に美しくて偉大な大魔術師っていたかしら……あっ、ラスターを讃えてつくられたものということ?」


 確かにラスターは、十四歳で大魔術師になったディアナの記録を塗り替えて十一歳の若さで大魔術師になった。美しくて偉大で、確かに世界中に祝われてもよい逸材ではある。


(いや、でも! それなら私の時もお祭りにしてほしかった気持ちはあるわね)


 とはいえいずれ古龍を屠ってしまうラスターだ。群衆がその才能を見抜いていた可能性がある……と思ったとき、ラスターがリディアの額にこつん、と額を当てる。

 心臓がドキンと高鳴った。


「……お前の美しさも偉大さも、優しさも強さも弱さも、俺だけが知っていればいいと思っていたが」

「えっ……」


 世界で一番近い距離で、水面の瞳が熱を持って揺れている。その熱が移ったかのようにリディアの頬も体も熱くなっていくのを、リディアは困るようなもっと熱がほしいような、不思議な気持ちで感じていた。


「けれど、お前自身が一番お前の価値を知るべきだな」

「ラ、ラスター……」


 戸惑うリディアに満足そうに甘く笑いながら、ラスターが顔を離す。そうして幸せそうな人々があふれる街を見渡したあと、リディアに向かって「ディア」と呼びかけた。


「これは、お前に感謝を捧げる祭りだ。――たった一人で世界を救う結界を生み出した、お前のための祭りだ」

「――……!」


 目を極限まで見開いたリディアの目に、紫色の花々が映る。耳には笑い声が聞こえる。

 道行く人々はとても楽しそうで、頭上にはラスターが紡いだ鎮静の結界が今日もきらきらと輝いている。


 あまりにも眩しくて、リディアの目が潤んだ。


「……」

「……泣き虫だな」


 柔らかく微笑んだラスターが、世界からリディアの涙を隠すように抱きしめた。


「よく思い知るんだな。……お前は、こんなにも世界から尊敬され、愛されている」

「……っ」

「そんなお前を、独り占めにしてもいい権利を俺にくれ」


 先程まで余裕ぶっていたのに、そう懇願する声音には切実な響きが含まれている。

 その響きを向けられてこんなにも嬉しく甘く感じるのは、きっとこの先もずっとラスターにだけなのだろう。


「……私からも、お願いがあるの」


 リディアがそう言うと、ラスターが少し緊張した気配がする。ラスターの顔を見上げ、リディアが世界で一番大好きな水面の瞳をまっすぐに見る。


「世界で一番綺麗で偉大で大切な大魔術師を、この先ずっと私も独り占めにしてもいい?」

「……当たり前だ」


 リディアの言葉に一瞬だけ泣きそうな顔をしたラスターが、仕返しと言わんばかりにリディアをぎゅうぎゅうに抱きしめる。


 ラスターの肩越しに、きらきらと光る青空が見える。

 その青空によく映える紫色の花々が、まるで祝福するみたいに揺れていた。




◆◆◆





 幾百年もの時が流れ、国も人も変わらないものを抱えたまま、移り変わっていく。空に浮かぶ青い結界は今日も空の下の生物を見下ろし、きらきらと変わらぬ光を放っていた。


 黒いローブを着、紫色の花を頭に飾る女の子たちが笑いあう。人々の笑い声や話し声がどこまでも響くこの街で、吟遊詩人が朗々と英雄たちの歌を紡ぐ。


 魔物を鎮める結界を張った大魔術師の歌は、この国の子供たちなら誰でも歌える。けれど根強い人気を誇るのは、その弟子である古龍を屠った大魔術師の恋物語だ。



 古龍を屠った大魔術師は、紫色の瞳を持つ精霊士に恋をする。いつでも一緒にいた二人は生涯離れず、多くの人間を救ったのだと。






ここまでお読みいただきありがとうございました。

完結まで大変お待たせして申し訳ございません。

ようやく物語を最後までお届けでき、本当に嬉しく思います。


タイトルにもありますが、こちらはコミカライズの配信が決まっています。

7/24からピッコマさんにて先行配信となりますので、元気でかわいいリディアを見ていただけると嬉しいです!


あらためまして、二人を最後まで見届けてくださりありがとうございました。

それではまた、次回作でお会いできたら嬉しいです!

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