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「──つまり、同じ耐性スキルでも精神攻撃耐性スキルと睡眠耐性スキルなら睡眠系スキルに対しては後者の方が分があるのです。精神攻撃耐性は単一耐性には劣るものの精神系スキル全般への耐性があるので重宝されますが、短命な人族の間では基礎レベルが最低でも15以上必要かつスキルレベルが上がりにくく覚えにくいこともあり、死にスキル──失礼、器用貧乏スキルと揶揄されているようです」



突然始まったヒューさんの耐性講座。

お母さんが目覚めるまでの時間潰しにとのことですが、明らかに怪しまれてます。

皆さんの目が、目力がすごい。

針の莚まではいきませんが、若干居心地が悪いです。


これってあれですよね?

基礎レベルが15以上必要なのに何故レベル2──いえ、召喚されたばかりのお前が精神攻撃耐性スキルを持ってるんだって訝しまれているんですよね?

あり得ないスキルを持つ怪しさ満点の異世界人。

吸血鬼さんが別室でお話ししましょうって言ったのも納得です。

……。

どうしましょう。

実は精神攻撃耐性ではなく精神攻撃無効スキルなんですとは言えない空気です。



「ええと、魔法攻撃耐性や物理攻撃耐性などのスキルも器用貧乏スキルってことなんですか?」



「いいえ。使いこなせない、使い勝手が悪いスキルを人族がそう呼んでいるだけですよ。私達からすれば万能スキルですな。とはいえ職業・加護・称号の如何で属性の相性が相殺、なんてことも起こりうるので一概にどうとは言えません」



「つまり、いくら強いスキルが揃っていても結局加護や称号なんかでひっくり返せるってことですか?」



「はい、極論で言えばそうなりますな。流石に常闇神や大精霊クラスの加護でないと難しいでしょうが」



暗黒神さまは?

暗黒神さまはどのクラスなんでしょう?

聞きたい──けれどこれ以上悪目立ちするのはちょっと不味い気がします。

ここはとりあえず情報収集を優先しましょう。



「無効スキルはどんな感じなんですか?やはり単一スキルよりも劣るのでしょうか?」



「難しい質問ですな。物理攻撃無効スキルは単一無効スキルよりも幅広く対応できますので優劣で言えば間違いなく前者になります。しかしながら、例えどの無効スキルを持っていようと通常攻撃─刺突・斬撃・打撃等─に腐食効果などが付与されていた場合、それに対応する耐性を持っていなければ腐食させられる可能性がありますし、勇者の固有スキルの一つである貫通は相手の無効系スキルをそのスキルレベルに応じて無効化できるスキルなので、相手よりもスキルレベルが上回っていれば物理攻撃無効を持っていようが通常攻撃が通りますし、魔法攻撃無効を持っていようが下位魔法が効くと言ったように、万能ですが慢心していると痛い目を見ることがあるのです」



なるほど、流石勇者の固有スキルって感じですが、私のスキル、レベルが書かれていないんですよね。

そういう場合どうなるんでしょう?

貫通スキルを無効化できるんですかね?

状態異常無効があるので腐食などの付与攻撃には対応出来そうですが、物理攻撃耐性ってどのくらいの耐久性があるんでしょう?

常闇神さまのところに居た黒い靄のせいでHPが半分切ったことを考えるとそこまでの耐性は無さそう?



「貫通スキルは精神攻撃無効スキルにも効果が?」



「いいえ、流石にそこまで万能ではないようです。あくまで物理攻撃や魔法攻撃に限ってと言われています」



「と言うことは、加護や称号の効果も無効化出来ないのですか?」



「はい、その通りです。そのため例え無効化されようが基礎レベルに差があるので受けるダメージもたかが知れています」



「貫通スキルを覚えるのは職業が勇者だけなのですか?称号が勇者でも覚えられるのでしょうか?」



「今のところ固有スキルは職業が勇者だけと言われています。聖女も同様ですな」



「では聖女の祈りにも加護や称号の効果はあるのですか?」



「残念ながらわかりません。二面性を持つ効果があるとは分かったものの、それを防ぐ手立てはまだ見つかっていないのです。そういった意味では勇者よりも聖女の方が厄介ですな」



「なるほど。……ところで、ヒューさん。ずっと疑問だったのですが、皆さんは加護や称号、スキルの効果などをどうやって知るんですか?ステータスを見てもわかりませんよね?」



羽山さんを例にあげると、光魔法など字面で何となくわかるスキルはともかく、加護の女神の守りがスキル効果をアップするものだなんて一目でわかります?

精々が女神さまの加護があるんだ~くらいじゃないですか?

ゲームなんてやったことの無さそうな羽山さんが何故説明できたんでしょう?

不思議ですよね?

異世界言語系スキルには注釈機能が付いている、とか?



「……そうですな、今は代々の口伝や文献等を参考にしているとしか」



あ、そうでした。

私怪しまれているんでした。



「いえ、すみません、大丈夫です。怪しい異世界人にほいほい情報渡すのは危険ですし、わかります。それなのに色々教えてくださってありがとうございました」



口伝等を参考にしているということはヒューさん達には注釈機能がない感じですね。

あるとすれば異世界人特有の機能なんでしょうか?

それとも羽山さんがステータスを報告するとき吸血鬼さんが効果を教えただけ?

うーん。

謎ですね。


謎と言えばこちらに来た人選も謎なんですよね。

私の隣に居た友人が来ていないのに遠くに居た委員長が来ていたり、何となく作為的なものを感じるような?

ゲームをやったことのある人を選んだとかですかね?

だってステータスを教えてくれるかな?なんて言われてもゲームをしない人にとったらステータス?何それ?って感じじゃないですか。

いくら吸血鬼さんの魅了魔法が優秀でも知らないことが分かるようにはならないと思うんですよね。

うーん。

やはりちゃんと説明を聞いておくべきでした。

おためごかしのスピーチでも役立つ情報をくれていたかもしれないのに。



「ところでサヤ、私も一つ疑問があるのです。あなたは先程の闖入者が撃った風魔法をどうやって防いだのですか?私は母の変質化を治すため人族の国に滞在して勇者や聖女の情報を集めたり、実際この目でその実力を見たこともありますが、あれほど鮮やかに魔法を打ち消す様は今まで見たことがありません。


しかもあの闖入者ちんにゅうしゃが最後に撃ったのは風の大精霊の御力が込められた最上位の風魔法です。あの瞬間、あなた以外の全員が死を覚悟した。あれには離れを吹き飛ばせるほどの威力があったのですよ。それをあなたは初期魔法の如くいとも簡単に防いだ。分かりますか?それがどれだけ異常なことか。


サヤ、本来は秘匿すべきステータスですが、状況が状況なのであえて問わせていただきます。あなたが風魔法を防げた理由は何ですか?職業ですか?加護ですか?称号ですか?是非とも教えていただきたい」



え?

最上位魔法?

あの風の刃が?

うーん?



「……あの、ヒューさん?一応確認したいのですが、あのお姉さんが撃ったのは風の最上位魔法、つまり風魔法の中で一番強力な魔法だったってことですよね?」



「はい」



「ええと、ちなみにヒューさんは先程のもの以外で最上位魔法を見たことがありますか?」



「……ありません」



あ、ちょっとばつが悪そう。

そうですよね、最上位魔法がそうほいほい撃てる世界とかどんな世紀末ですかって感じですもんね。

大体あのお姉さん、髪の毛の長さはともかくそんなにすごい人に見えませんでしたし、ヒューさんの勘違いってこともあり得るのでは?



「見たこともないのに最上位魔法と思った理由はなんですか?風の大精霊が顕現したとかならわかるのですが、見た目はそれほど変わりませんでしたよね?」



「それは……」



ちらりとサリムさんを見やり逡巡するヒューさん。

何でしょう?

何となく嫌な予感がします。

サリムさんの目がどこにあるかはわかりませんが、ヒューさんに注視しているのがわかります。



「……まだ情報を得て間もないため陛下に言上しておりませんが、あの闖入者の風貌はミヤビと呼ばれる職業が勇者の迷い人だと思われます」



《ホントウカ?》



「はい。引きずるほどの長い髪を持つ女などそうはいませんのでまず間違いないかと」



……なるほど。

突然の耐性講座はここに繋がってたんですね。

最上位魔法を防いだことではなく、勇者の貫通スキルを防いだことが問題と。

精神攻撃系の耐性だけで防げるはずがない、召喚されたばかりでスキルレベルが高いはずもない、ならば職業由来の固有スキル、もしくは加護や称号のおかげで防げたに違いない──まあこんな感じでしょうか。



「…………」



流石罠のスペシャリスト。

罠のはめ方がエグい。

アカン。

どうしよ。

切り抜け方が──あ、起きた。



「皆!下がれ!」



一際感じた強い視線の先。

未だベッドに横たわったままなのに、顔を傾けこちらを見る目に正気の色は見えません。

ヒューさんの背中で遮られてもなお感じる視線。

重苦しい歯ぎしり音。



シネ



脳に直接叩き込まれる悪意。



シネシネシネシネシネ



単調に繰り返される言葉は、会話というより一方的に悪口を言われてる感じです。

これって多分精神攻撃の類いですよね?

煩いと思ったらいい感じにボリュームが下がりましたから。


衣擦れの音。

どうやらお母さんが起き上がったようですが誰も動きません。

もしかして皆さん固まってます?

動きを止める系の魔法なんですかね?


何だ彼んだ言っても庇ってくれるヒューさん越しにお母さんの様子を窺おうとこっそり顔を出すと、視界いっぱいに広がる目をかっぴらいたお母さんの顔。

その距離約三センチ。






…………。

アカン。

これ絶対夢出るわ。




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― 新着の感想 ―
[一言] すごく面白いです! 是非続きを書いてです!
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