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20/23

準備

「先ほど、スチャンに連絡した。」


ジニアは真っ直ぐとこっちに向かって話す。


「…。」


キドラもそれを神妙な面持ちで聞いていた。


「どうだった?」


「その後、特に敵の動きは無いそうだ。」


「相変わらず、ジニアを待ってるってことだね。」


敵の目的はジニア、やはりひたすら待っているらしい。


「あぁ、向こうでは1週間しか経ってない。」


「…うん。」


キドラの表情はとても冴えない。


「しかし向こうの狙いは俺、なんらかの情報網は張っているだろう。」


「敵の動きが静か過ぎるのも気になるね。」


ジニア達を待っているとしても、何か知っていそうなスチャンを探そうとしていない、というのが気になる。


「一応、俺達の国の端に降り立ち、情報収集をしつつ城に近づこう。」


「うん。」


「でもオレ、ツウラの言葉、解らないよ?」


ジニアは後で消す事を考えているのか、今までも最低限の人にしか日本語データを送っていない。


「それだったら心配いらない。さっき日本語データをパソコンでツウラの翻訳機全部に送っておいた。

ツウラ人と出会う度に日本語データを送るのは面倒だろ。ツウラ人となら問題なく話せる。」


「そっか。助かるよ。」


今までにないほど、静かな着陸だった。

今までの星だったら豊かなリアクションを見せていた、キドラも表情が冴えない。


上空には透明なパイプの中をタイヤの無い車のような乗り物が、

走っている。

中世風の町並みにはなんだかミスマッチに思える。

ここがツウラ星、キドラとジニアの故郷だ。


「ジニア様に、キドラ様…ご無事だったのですね。」


キドラとジニアに気がついたであろう、近くのツウラ人が近づいてきて、そう言った。

ジニアやキドラと身長はほぼ同じだけど、彼の体の色は黄色だ。ジニアはともかく、キドラもこの国の有名人だったらしい。


「あぁ、スチャンから話は聞いている。詳しい状況を話してくれ。」


「1週間ほど前に城から爆発音が聞こえ、城はあっという間に制圧されました。

敵は円盤に乗ってやってきたようです。その後すぐ町に向かって、

王様とお妃様を人質に取ったという声明を出しました。

しばらく村を手下と思われるフードを被った奴らがうろうろとしていましたが、

今は落ち着きました。町や国民には今のところは少しの被害も出ていません。

相手はゾバスと名乗っていました。」


王様とお妃様。敵が人質に取っているのは、キドラのお父さんとお母さんだけじゃなかったのか?


「ゾバス…知らない名前だ。町をうろ付いていた連中はお前らに何て?」


「それが、妙な事に何も聞いてきませんでした。」


匿っていると考え、何か聞いてきそうなもんだけど。


「…そうか、助かったよ。ありがとう。」


ジニアも何かを考える表情になった。


「お気を付けください。まだ手下の目が光っています。」


「ねぇ、パパとママ、大丈夫だよね?」


「王様とお妃様は無事だ。心配無い。」


ん?王様とお妃様…パパとママ…と言う事は。


「キドラってお姫様なの!?」


女の子だ、としか聞いてなかった。そうだとすると、2人の距離感も納得だ。


「うん。言ってなかったっけ?」


キドラはあどけない表情で聞き返した。


「言ってなかったか?」


ジニアもすっかり言っていたつもりになっていたらしい。


「初耳だよ!」


「そうか、すまん。忘れてた。」


ジニアでも忘れる、って事があるんだ。それもそうかジニアだって生物なんだから。


「そんな事より、早くお城に行こうよ!」


「解った。様子を見つつ行こう。」


街角や店の影に隠れながら、少しずつ城に近づいて行く。


「やはり、城に近づく程、見張りも増えるな。」


「どうするの?」


戦うとしたら、戦力には成れそうには無い。

お察しの通りとてもじゃないが、武闘派とは言えない。完全なインドア派だ。


「この通り手ぶらだし、敵の正体も解らない。それに平和な国だ。地球の様な兵器も無い。」


「あっ!機械を作る道具は?」


キドラは前にもした機械を作るジェスチャーをした。


「無いよりましか。近くに商店があったはずだ、行こう。」


ジニアの国はそこまで大きくは無い国だが、手下と思しき奴らに見つからないように移動していると、時間がかかる。


「あっキドラ様にジニア様、ご無事で何よりです。」


商店と思われる場所には、やはり色違いで黄緑色のツウラ人がいた。


「万能工具を3つ貰おう。」


万能工具の形は持ち手に球体が付いていて、片方が無い鉄アレイのようで、とてもじゃないが、工具には見えない。


「どうぞ、お代は結構です。」


「しかし…。」


「こんな時です。店にあるものはどうぞご自由にお持ちください。」


店主は手元の端末を操作した。


「すまない。後で必ず借りは返す。」


「いいえ良いのです。ですが、必ず敵を倒してください。」


店主は強い意志を感じさせる目でそう言った。


「解った。さ、行こう。」


「万能工具はあまり使わないようにするんだ。敵に手を出されたら使うんだぞ。」


ジニアはオレとキドラに一個ずつ万能工具を手渡した。


「うん。」


「解った。」


工具、というと普通はドライバーとか…オレがなんとなしにドライバーの形を思い浮かべたら、球体の部分がうねうねと形を変えて、あっという間にドライバーの形になった。


「うわ!びっくりした!」


「それは、持った奴の想像する工具に形を変えるんだ。工具限定だけど便利だぞ。さ、行こう。」


これもジニアが作ったんだろう。


先程と同じように物陰に隠れながら、中央の大きな城に近づいて行く。


また、手下がいる。

出来るだけ静かに、静かに。

抜き足指し足で。

慣れない歩き方だけど、大丈夫だ。


しかし、キドラが転んだ。

同時に手に持っていた万能工具を落としてしまう。

カラン、という高い音が響き渡る。


次の瞬間、手下が凄い早さで走ってきて、キドラを押さえ付けた。

全身ローブを纏っているが、身長はオレと同じくらいだろうか。


「こいつっ!」


先導していたジニアが走ってきて、敵の足の部分をバールのようなもので攻撃した。

金属と金属がぶつかる甲高い音。

同時に敵はジニアのほうを振り返る。

ジニアは何かを察した表情になり、手元の工具を長いニッパーのようなものに変え、敵のローブを切り裂いた。

ローブがはらりとはだけ、敵の身体が現れた。


「やっぱりそうだったか。」


その身体は全身機械だった。まるで、人間のような形だ。


「ロボット!?」


ジニアは一瞬だけ全身を見渡すと、足の太もも辺りにあったケーブルをニッパーで素早く切断した。

すると、そのロボットは、膝から崩れ落ちた。

ジニアは素早くそのロボットを解体する。


「間違いなく全身機械で、動かす理論はとても良く出来ている。使い手の指示に従い、ある程度自立して行動するようになっているようだ。

しかし、作りはとても雑で、粗製濫造だ。遠隔操作でも動かせるようだが、ボスと連絡を取るような通信装置は無いようだ。」


「ごめん、さっきは…転んじゃって。」


「問題無い。こうして敵の正体も解った。結果オーライだ。」


「ジニア、凄いね。」


武闘派でもあるなんて、今更だけど凄い。


「しかし本当に作りが粗すぎる。この程度で見動きひとつ取れなくなるとは、基礎理論を考えた奴と作った奴が別に思える。ふむ…。」


「どうしたの?」


「忘れ物だ。ちょっと先に行ってて欲しい。」


と言うと、ジニアは今来た道を真っ直ぐ戻りだした。


「え!?」


「すぐ戻る。」


「…解った。気をつけてね。」


ジニアは一度やると言ったら絶対にやり遂げる男だ。

止めても無駄だろう。

しかし、何を取りに戻ったんだろう。


不安そうなキドラと目で合図をする。キドラはしっかりとした顔付きで頷いたので、オレは2人で城に急いだ。


「駄目か…やはり城の前はアリ1匹通れそうもない。」


キドラと一緒になんとか城の前まで来たが、城の周りはぐるりとロボットが囲んでいた。


「待たせた。」


「ジニア、あれ?何その袋?」


ジニアは腰の辺りから袋をぶら下げていた。袋はさっきの店で貰ったんだろうか。


「ちょっとな。役にたつかもしれない。」


「ふぅん…。」


ジニアにはもう先の事が見えているんだろうか。


「所でどうやって入るの?」


「下水道は?」


ゲームではよくそこから入れる。


「気は進まないが定番か。下水はこっちだ。」


「よし、見張りは居ないようだ。行こう。」


下水というか運河のようだ。臭いも全然無い。浄化設備が進んでいるんだろうか。


「このまま行けば城の中の食料庫に付くはずだ。しかし…。」


「しかし?」


「順調に行き過ぎな気がする。敵の罠かもしれない。」


城の周りだけ警備が厳重だったのを考えても、普通は真っ先に警備を付けそうな場所だ。


「ジニアが居れば大丈夫だって!」


「…あぁ。」


「多分この辺りだ。」


ジニアはやけに段の多い階段を登り、最上部にあった鉄格子状の蓋を取った。


「ジニア様!キドラ様!」


「スチャン!」


灰色のツウラ人、この人がスチャンか。やはりキドラやジニアと同じくらいの大きさだ。


「よく、ご無事で…。」


「パパとママは!?」


必死な形相のキドラはスチャンの言葉を遮って我先にと聞いた。


「囚われてからの敵の動きはありません。」


「そうなの…。」


キドラはまた暗い表情に戻った。


「そちらのお方は?」


「地球人のミノルだ。落ちた先で出会って、ここまで戻る手伝いをしてくれた。」


「この度は誠にありがとうございました。」


スチャンは座ったままで深々とお辞儀をする。


「積もる話は後にしよう、スチャン。ゾバスと名乗る敵の詳しい情報を教えて欲しい。」


「畏まりました。手下はほとんど城の中にはおりません。」


下水道も警備は手薄だった。


「妙だな…。」


「町には沢山いたよ!」


キドラも割って入る。


「それにキドラに襲い掛かって来ました。」


オレもそれに補足した。


「そうなんですか…確かに奇妙ですな。」


「続けてくれ。」


「はい、城内は驚く程静かです。ゾバスとやらは、私が最後に見た時は、玉座に座っていました。」


「玉座か。恐らく今もそこだろう。」


「うん。」


キドラのお父さんとお母さんは別の場所に軟禁されているのだろう。


「よし、そうと解ればまず俺の部屋に行こう。」


「ジニアの部屋?」


「使えそうな発明品があるかもしれないから!でしょ?」


キドラはすかさず補足した。


「そうだ。」


「私めも参ります。弾除けくらいにはなるでしょう。」


「解った。でも、無理はするなよ?」


「畏まりました。」


城の中はスチャンの言ったように、

至って静かで、見はり1人居なかった。


ジニアを先頭に、慎重に廊下を進んでいく。


「ふむ…。」


今はジニアの部屋だ。部屋の中央には大きな円環が付いた機械がある。これが転送装置らしい。

とても大きく、部屋に固定されている。電源ケーブルらしきものは見当たらないけど、どうやって動いてるんだろう。


「これ、好き!」


キドラはジニアの部屋にあった大きなボタンが付いている何かのスイッチのような10cmほどの機械を取り上げた。


「それは?」


「対象物に触れずに裏と表をひっくり返す機械だ。キドラのお気に入りなんだ。視界に入ってるものならなんでも使える。洒落で作ったんだよ。」


なんの役にたつんだろうか。まぁ作ってから何に使うか考える、というのは地球でもままあるし、開発者の好奇心ってやつだろう。


「裏の裏は…表!」


何処かで見たことあるポージングだが、前より声に力がない。やはりキドラなりに無理をしているんだろう。


「バトリ、だ。」


キドラに取ってアニメは重要なポジションになったのもあるだろう。


「こんなものでも役に立つかもしれない。袋はあと2つあるし、入れとこう。」


中央に穴が空いた円盤が何枚かついたもの、やけにぎざぎざした長い紐のようなもの、

両端が球体のケーブル、やけに短い円筒状の機械、蓋のような何か、袋に入りそうなものはとにかく色々と詰め込んだ。


「よし、行くぞ。」

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