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友人

そこには、キャフツァと同じ様な姿形の宇宙人が沢山いた。

キドラとジニアは色が違うから、見た目ですぐ分かるけど、ルグジャ人は違いが全然解らない。

ルグジャ星の人は樹上生活を送っているらしい。

観光客と思われる異星人もちらほら見かける。

木は更に上に伸びていて、上で広がっていた。

それは下から見上げた時に似ていたが、高さはさっきより低く、ホテルのロビーくらいだろうか。

あちこちに、植物で出来た大きなかまくらのようなものがあり、出入り口らしき穴が開いている。

所々にこの星の言語らしきものがあるが、今は読めない。


「ちょっと待ってくれ。」


ジニアは目の前の店で翻訳機を購入しているようだ。そのままキャフツァに乗り、その様子を見守る。


「ほら、これが本物の翻訳機だ。」


オレはジニアからそれを受け取ると、今付けている簡易版の上に本物を付け、簡易版を外した。

身体が軽くなって、少しほっとする。


ジニアは自分の翻訳機に通信機を近付けてから、キャフツァの首に付いている通信機に近づけた。

おそらく今ので日本語の言語データを送信したのだろう。


「ミノル、もう降りていいぞ。」


オレは恐る恐る葉っぱの上に降り立つ。思ったより頑丈でびくともしない。この植物は下からの衝撃には弱いが、上からの衝撃には強いらしい。


「背中に乗ったまま僕の家まで来るんじゃないかって思ってたよ。」


今キャフツァの声は、優しそうな柔らかい声に聞こえる。

さっきまで読めなかったこの星の言語も今は読めるようになっている。


「乗せてくれてありがとうございます。地球人のミノルです。」


「僕、ルグジャ人のキャフツァ、キャフツァでいいよ。よろしくね、ミノルさん。」


やっぱり気の良さそうな人だ。


「こっちもミノルでいいよ。キャフツァ、ありがとう。」


「いいってミノル、ジニアの為だもん。」


キャフツァはニコニコしている。ジニアには何か恩があるのだろうか。


「キドラはこのまま食料の買い出しに行ってくれ。宇宙船前で落ち合おう。」


「うん。」


キドラはそのまま徒歩で別の店に向かった。


「翻訳機の他にも買いたい部品がある。ミノルすまないが、持つの手伝ってくれ。」


「解った。」


ジニアは再びキャフツァの店に入る。

店頭には見たことのない機械が沢山並べられていたが、翻訳機だけは解る。


「ジニアの為に良さそうなものを取っておいたよ。」


「いつもすまない。」


ジニアはキャフツァの誘導でどんどん店の奥に入っていったのでオレもそれに続いていく。

そこには機械の部品と思われるものが植物で作られた籠に沢山入れられていた。

ジニアはそのままそこを漁りだす。


「ねぇ、ジニア。お金ってどうしてるの?」


「あぁ、この翻訳機に地球で言う電子マネーみたいなものが搭載されてる。それで買ってるんだ。」


ジニアは使えそうな部品を選定しながら、答えた。


「よし、こんなもんでいいだろう。ミノル、そこにある籠取ってくれ。」


ジニアは両手いっぱいに部品を抱えながらそう言った。


オレが籠を取りジニアの下に置くと、ジニアはその中に部品を入れる。


「これで終わり?」


「いや、もう一山ほど買う。すまんがこっちは持っててくれ。」


「うん。」


キャフツァはそんなオレ達をニコニコしながら見守っている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ジニアと買い物が終わり、籠のまま部品を持ち出す。どうやらこの星の買い物袋のようなものらしい。


「キャフツァ、すまんが、キドラのほうを手伝ってくれ。こっちは二人で大丈夫だ。」


「うん、解った。」


キャフツァはそのままキドラが向かった方角に向かった。


「所でどうやって降りるの?」


二人とも両手は塞がってるし、キャフツァはいなくなった。


「ミノル、ここだ。」


ジニアは降り口はこちら、と書かれた植物のそばに行く。


「これに乗るの?」


大きく長い笹のような植物が、くるくると、丸まっている。

どうやって動くんだろう。動力みたいなものは見当たらない。


「そうだ。」


ジニアはそんなオレの心配も意に介さず丸まった部分の手前に乗ったので、オレも続く。

すると、それに乗りこんだ瞬間に徐々に丸まった部分が、下に広がっていく。


「うわっびっくりした!」


オレが乗ったのを合図とするかのように、その植物は動き出した。

そのまま、滑るようにして斜め下の地面に向かって降りていく。

前方の丸まった部分がガードになっているので、ただ滑るよりは動きはゆっくりだ。


「これ、どうなってるの?」


「地球にもオジギソウっていう刺激を受けて動く植物があるだろう?。

要はあれのルグジャ版だ。観光客向けにルグジャ人が作った。」


ルグジャ人の植物の品種改良技術は凄い。

ものの3分ほどで地面につき、オレが降りると自動的に葉っぱが丸まり、元へと戻って行った。


「これは降りる専用なんだ。地球の滑り台と同じだな。さ、宇宙船に戻ろう。」


ジニアは宇宙船の方向に早歩きで向かった。


「上に行きたいときはどうするんだい?」


「地球で言うタクシーのような仕事をしているルグジャ人がいるんだ。

観光客はそいつに乗って上に行く。」


今日もキャフツァはオレ達3人を軽々と上まで運んでいた。

ルグジャ人は力持ちなんだろう。


「ルグジャ人より大きい人は?」


そんなルグジャ人でも限界はあるはずだ。


「特別料金で、複数人のルグジャ人がお手製の籠に乗せて運んでくれるんだ。」


「へー。」


複数人の息をぴったりと合わせないと安定した飛行は出来ないはずだ。

ルグジャ人は以心伝心みたいなものに秀でているんだろう。


「中には木を上ってくやつも居るぞ。」


倹約家かクライマーか、ただの変人だろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


宇宙船に戻ると、キャフツァとキドラはすでに待っていた。


「キャフツァ、ここまでありがとう。お礼は次あった時にする。

今から宇宙船をちょっと手直しする。キドラとミノルは手伝ってくれ。」


「僕も手伝うよ!ジニアの星が大変って聞いたら黙ってられないからね。」


キャフツァはキドラからおおよその事情を聞いたらしい。


「そうか。助かる。」


ジニアが宇宙船の改造を開始する。

キャフツァが部品を背中に乗せて、宇宙船の周りを移動。

キドラがジニアと同じ様に宇宙船にしがみついて、ジニアに部品を渡す。

オレが部品をキャフツァの背中に乗せる。


ジニアが宇宙船を改造している間、キャフツァは見知らぬ星から来たオレと雑談を開始した。


「地球ってどんな星?」


「うーん…。」


どんな、って言われてもなんて答えればいいんだろう。


「円周約4万キロ。表面は陸地が約3割で残りは海だ。

ミノルのような人間がたくさん居て、異星人は居ないとされている。

重力はルグジャ星より少し小さいくらいで過ごしやすいだろう。

この星ほどじゃないが、植物の種類も多く、研究者も居る。

恒星の日当たりも良好だ。」


返答に困っているとジニアがすかさず補足する。


「地球の植物?見てみたいなぁ。案内してくれない?ミノル。」


植物、と聞いただけでキャフツァはとても嬉しそうな顔になった。ルグジャ人は見た目通り、植物が好きなんだろう。


「異星人は居ない、って言っただろ。地球は異星間交流に適しているとはいえない。」


「そっか、残念だな。」


キャフツァは少しだけ寂しそうな顔をした。


「逆にルグジャ星はどんな星?」


オレはキャフツァにルグジャの事を聞き返す。


「僕が言うのもなんだけど、みんな好奇心旺盛で、人が良いよ。

ジニアのおかげで最近は新しいことをどんどん知れるようになったしね。

ジニアには感謝してる。」


ジニアって想像以上に凄い奴だ。


「ジニアとはどんな関係なの?」


「この星とツウラ星が交流を開始し始めた頃からの付き合いだよ。

ちょっと耳貸して。」


キャフツァはオレの耳の近くに口を近付けた。


「え?」


オレも頭をキャフツァの口に近づける。


「この話すると、ジニア怒るんだ。

ジニアはね、なんだかんだでとっても友達思いだし、義理堅い。

この宇宙船もキドラと2人で乗り込むにしては、大きいし、

きっと君に合わせて大きくしたんじゃないかい?

彼は案外お節介な性格なんだ。」


そのままキャフツァは小声で話しだす。


「キャ・フ・ツァ。」


しかし、ジニアにはしっかり聞こえていたようだ。


「はいはーい。ごめんごめん。」


キャフツァはあんまり悪びれる事なく、軽くそう答える。ジニアとは長い付き合いなのだろう。


「でも僕は君のそう言うところが好きなんだ。

宇宙一の科学者としての君よりもね。」


宇宙一の科学者、か。なんとなしに首に付けている翻訳機を触る。


「その表現は適切とは言えない。

宇宙中の科学者を集めて、あらゆる面で公正に評価しないと宇宙一、とは言えない。

そもそも何をもって公正とするのか、客観的な判断基準が…。」


ジニアはいつになく饒舌だ。照れ隠しだろうか。


「そういう所とか!」


ジニアは、何いってんだか、とでも言うような顔になったが、

少し表情が明るくなった。

キャフツァなりに暗い雰囲気を和ませようとしたのだろう。


「よし、これで改造は完了だ。」


「残りは?」


キャフツァの店で買ったパーツはまだ籠の半分ほど余ってる。


「宇宙船の中で使う。ちょっと作りたいものがあるんだ。」


ジニアはそのまま部品を抱えて、宇宙船に乗り込む。


「ここまですまない、助かったよキャフツァ。」


「いいっていいって。いつでも呼んでよ。じゃ、またね。」


「キャフツァ、ばいばーい。」


キドラは大きく手を振り、

キャフツァは元の森の方へ飛んで行った。

オレとキドラはジニアに続いて宇宙船に入る。


「お腹空いたー!」


もう昼近い。そういえば、朝ご飯食べてなかった。


「よし、燃料の補給場所に向かいつつ食事にしよう。」


ジニアはパソコンをカタカタと操作した。


窓の外の景色が少しずつ下へ遠ざかる。


「あれ、衝撃が消えたね?」


「さっき改良した。」


「ごはーん!」


キドラは待ってましたと言わんばかりにオレ達に朝ご飯を配った。


…。


朝ご飯だ。と言われなければ、植物の固まりにしか見えない。

分解すると、三段になっていて、真ん中の段だけカラフルで、両側は緑色だ。

形は丸い。

おそらくルグジャ星のハンバーガーかサンドイッチのようなものだろう。


ジニアが躊躇なく食べだしたので、オレも一口かじる。


まず感じたのは、エグミと苦味。

次に植物園にでもいるかのような青臭い臭い。

真ん中のカラフルな部分は西瓜の白い部分でもそのまま齧っているかのような味で外側よりまだましだが、とても食べ物とは思えない。

唯一の救いは水分が豊富で口の中が潤い、味がすぐぼやける事。

しかし、青臭みは残る。


「まずーい…。」


キドラは嫌そうな顔をしながら食べる。


「身体にはいいんだぞ。」


よく涼しい顔して食べられるもんだ。改めてジニアを尊敬する。


キドラがなんとか朝ご飯を押し込んだ頃に、ルグジャ星の燃料の補給場所に付いた。


「よし、補給してくる。中で待っててくれ。」


窓から外を見ると、水分で大きく膨らんだおおきな瓜のような植物があった。直径はこの宇宙船の高さくらいで完全に球形だ。

表面は半透明になっていて、棒で付けば割れそうだ。てっぺんからは蔓が何本も生えている。


ジニアはその蔓の中から一本を取ると、爪で先端をポキッと折った。先端だけ色が違うことから考えて、そこだけ折れ易くなってるんだろう。


そして、それをそのまま宇宙船に入れると、少しづつ球形の植物が萎んでいった。


この星ではこうして燃料を補給するらしい。


しばらくした所で、ジニアは蔓を宇宙船から抜き、先程折った先端をそのままピッタリくっ付けた。

切断面にかなりの粘り気があるのだろう。

恐らくあのまま放置すると、くっつくのだろう。


「おまたせ、さぁ急ごう。」


オレ達はツウラ星へ急いだ。

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