付録 噂話
「ねぇ、知ってる?男子の中で噂。紅葉中学の魔王の話」
「紅葉中学の魔王?何それ」
「去年卒業した先輩達の代にね、とんでもなくスポーツが出来る化け物がいたんだって!」
「化け物?」
「うん!私が聞いた話ではね、前代未聞の県大会7冠を取ったらしいの!」
「7冠?」
「もおー。それは分かってよ。7つの部活動で、一位を取ったってこと!」
「ええ!そうなの!?」
「うん!でもね、その数は聞く人によって違うくて、6冠だったり、9冠だったりするの!」
「え、どうして?」
「そりゃ、全部の部活動の試合を見ている人なんていないからだよ。なんか、マイナーなやつでも優勝しているらしくって、全部は分からないんだって」
「そうなんだ。一体どんな人がそんなことを」
「あ、今イケメンを想像したでしょ」
「え?違うの?」
「だって考えてみてよ。そんなに凄いのに、女子の先輩の中では噂になってないんだよ」
「ああ。なるほど」
「きっと、身長2メートルのゴリラだよ。ゴリラ。ウホッホ」
「はは。花、酷い顔してるよ」
夕暮れ時、2人の女子中学生がそんな噂話をして歩いていた。
「魔王といえばさ、こっちの魔王の話は知ってる?」
「お。七っちもなんか知ってることあるん?」
「ふっふっふ。こっちの魔王は怖い話だよ」
「え。怖い話?」
「うん。これは、私が小学三年生の頃の話しでさ」
3つ年上の学年に、魔王がいるって噂があったの。
その魔王は、普段は普通にしてて、誰に見られても普通の子どもにしか見えない様に演じていたらしいの。
でも、裏の顔はやばかったらしくてさ。
人心掌握、手練手管で、実は裏から学校を操っていたらしいの。
そう、クラスメイトを1人、何事もなかったように消せちゃうくらいにはね。
聞いていた方の女の子が、ひぃ!と声を上げるが、本気で怖がってはいない。
話し手の彼女も、恐ろしげに話してはいるが、本気で信じてはいないようだった。
おそらくは、家に帰るまでの退屈しのぎだろう。
その横を、気品のある黒い学生制服を着た男が通り過ぎていく。
「じゃあさ、七っちの学校の魔王と、紅葉中学の魔王が戦ったら、どっちが勝つと思う?」




