第2話 学生イベント
この蒸し暑い炎天下に、どうして自転車を漕いでいるのか。俺は不思議に思う。これなら素直に家事をしとけばよかったか?と思うも、草むしりが数時間で終わると思えなかった以上、友達と遊ぶ選択の方がまだましなように思えた。
40分掛けて向かった昔里公園には、既に赤堂さんが付いていた。駐輪場で自分の自転車に腰掛けていた赤堂さんは、到着した俺を見て不機嫌そうな顔をする。
「遅いぞ、尾緒神」
「悪い。俺の家、ちょっと遠いんだ」
「ふぅん。まあいいけど」
言いながら、赤堂さんは自転車に跨がる。
「よし、じゃあ行くか」
「行くかって、この公園で遊ぶんじゃないのか」
赤堂さんは呆気に取られた顔をして。
「あ、そうか。尾緒神にはまだ今日の行き先について話してなかったな」
ポケットからスマホを取り出した彼女は慣れた手つきでネットを調べて、その画面を俺に見せて来た。それは瓦山展望台のHPで。
「おお。ガゲン仮面のヒーローショーが行われるのか」
「そうなんだよ!それでさ、ここ!ここ見てよ!」
そうして赤堂さんがピックアップした画面にはグッズ情報が掲載されていた。なるほど、これが欲しくてお小遣いを親にねだっていたのかと思う。
「この3周年記念グッズが超良くてさ!絶対欲しいんだ。それにこれ、会場限定コラボグッズ!」
化け狸伝承をモチーフとした瓦山展望台のマスコットキャラクターである、たぬにゅんとガゲン仮面のコラボグッズを見せながら、赤堂さんは更にその目を輝かせる。
顔に押し付けるようにスマホを押し付けてくるので、俺は一歩後ろに下がざるを得なかった。赤堂さんはいつの間にか跨いでいた自分の自転車から降りていて、そしていつにも増して熱量が高かった。
「最高じゃないか?地元コラボだぞ!」
「凄いな。よく見つけたな、こんなのあの雑誌には載ってなかったんじゃないか?」
赤堂さんがよく持って来ている『漢のホビー魂』には、俺も目を通していたりするが、こんな情報はなかったと思う。瓦山展望台のHPなんて、普段からチェックしているようなものでもない。
「ああ。それはな!近所のガキンチョ達に聞いたんだ!」
「近所のガキンチョ?」
「ああ。私、偶にこの公園で近所の子ども達とヒーローごっこをして遊んでいる時があってな」
赤堂さん、普段そんなことをしているのか。どうしよう、簡単に想像出来る。
「何でも、市内の幼稚園と小中学校ではこのイベントの宣伝プリントが生徒達に配られたみたいなんだ」
へぇ、そうなのか。それで、その子ども達伝えで知ることになったと。
「しかもな!聞いて驚くなよ?このイベントに、どうやらうちの高校の生徒会が関わっているらしい!」
赤堂さんが携帯をスライドさせて、例の宣伝プリントの写真を見せてくれる。
「河原山高校と、大然高校の両生徒会による合同地域活性イベント。へぇ、そうなのか」
「凄くないか!尾緒神?うちの高校が、あのヒーロー仮面シリーズのイベントを開催しているんだぜ?」
「たしかに。それは凄いかもだ」
言いながら、俺はそのプリントにある参加者特典の欄に目がいった。
18才未満限定。地元コラボ限定ポスターカード、ランダム二種の配布決定。と。
こいつ、このカードを揃える為に俺を呼んだな。
「私、ガゲン仮面が超大好きでさ。あ、これは尾緒神はもう知ってることだったか。でもさ!とにかく好きでさ!特に」
ジト目をする俺だったが、赤堂さんが楽しそうにガゲン仮面を語る様子に、次第に表情が崩れていった。まあ、幸せそうなら何よりである。
俺達が昔里公園を出発したのは、それから大体30分後の話だった。




